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令和5年(2023年)9月19日更新
令和5年第三回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を述べさせていただきます。
去る6月18日、鈴木錦治議員が逝去されました。また、8月30日、名誉都民である福原義春さんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。
さて、世界の様相は刻々と変化し、そのスピードは増すばかりであります。総合的な安全保障が問われております。高まる地政学的リスクや、エネルギー・資源を巡る競争の激化、それによる物価の高騰。東京もまた、複雑に絡み合うグローバルな動きの只中にいます。異次元に突入したかのような気候変動や、ますます加速する我が国の少子化。こうした厳しい現実に向き合う時、かつて東京市長を務め、その後、帝都復興院総裁として関東大震災という未曽有の危機を東京発展の転機とした、後藤新平の慧眼を改めて思い出します。今こそ、都民一人ひとりの幸せ、子や孫の幸せを願い、再び「百年の計」で東京が為すべきことを考え、ゲームチェンジを起こさなければなりません。
日本、そして東京を飲み込む大きな変化の渦に翻弄されることなく、広い視野と前例に囚われない新たな発想で、未来への種を蒔き、花開かせてまいります。
安全・安心がしっかりと担保されてこそ、困難を乗り越え、大きな飛躍を遂げることができます。「備えよ常に」を合言葉に、100年先をも見据えた都市の強靭化を推し進めます。
まずは風水害対策です。6月の台風2号による豪雨では、都内の調節池に25メートルプール約3千杯もの雨水を取り込み、被害の軽減に大きな威力を発揮しました。将来の気候変動も考慮いたしますれば、現在の1.1倍の雨量に対応できるようさらなる対策の強化は待ったなしです。先般、今後の河川施設のあり方につきまして中間のまとめを公表いたしました。地下河川化、いわば地下にもう一本の川を作るという壮大な発想など、多角的な視野で取組をレベルアップいたします。また、豪雨対策全般の基本方針の検討を加速いたします。河川等の整備だけではなく、高台まちづくりの推進やグリーンインフラの導入促進なども新たに盛り込み、年内に策定いたします。
東部低地帯の5区のうち特に被害が想定される地域では、命を守る適切な行動を促すため、全国で初めて世帯ごとに水害リスクを記載した診断書を配布しております。公助のみならず、自助・共助が重要な役割を果たすことは、関東大震災での経験が証明しています。震災100年を機に、有識者による基調講演やVRを駆使したリアルな水害体験など、防災意識を高めるイベントを集中的に展開いたしました。リニューアルした「東京くらし防災」と「東京防災」も拠り所にして、自分や大切な方を守るための知識と行動をしっかりと身につけていただきたいと思います。また、東村山市と合同で総合防災訓練を実施し、行政の災害対応力の向上も図っています。自助・共助・公助を三位一体で強化し、都民の命と財産を守るため、出来得る備えを徹底的に講じてまいります。
先月訪れたフィンランドのヘルシンキでは、ミサイル攻撃などの有事に備えた避難施設が随所に設けられていました。平時は、駐車場やスポーツ施設等として普段使いするなど工夫も見られ、冷戦時代から培われた国家として危機管理を徹底する姿勢が伝わってきました。海外の事例も参考に、安全に避難できる施設や、円滑な避難に必要な関係機関等との連携など、ハード・ソフト両面から東京に見合った取組を推進します。
感染症をはじめ健康を脅かす様々なリスクからも都民を守り抜きます。約3年に及びコロナ対策の中枢を担った東京iCDCの取組の軌跡を、分かりやすく取りまとめて公表しました。東京モデルをはじめ、パンデミックの渦中で培った様々な知見や経験、ネットワーク、そして明らかとなった課題。この貴重な英知を活かして、年度内を目途に感染症予防計画を見直し、発生時に迅速かつ円滑に動けるよう備えを固めます。
地球環境と便利で豊かな社会生活の両立。これは人類共通の課題であり、大都市東京に課された使命でもあります。都は先頭に立って行動を起こし、国内外の取組を牽引します。
経済性や効率性が優先された高度経済成長期の都市開発は遠い過去のものです。コンクリートやアスファルトで覆われた街ではなく、人の暮らしや潤いを大切にしたまちづくりに取り組んでいます。近年は、用地を巧みに創出し、自然との調和を図ることで、開発が進む都心部の緑はむしろ増加しているのです。竹芝や麻布台、大手町など、とりわけ最近のまちづくりでは、思わず深呼吸したくなるような森や彩り豊かな草花を、オフィスや住宅に寄り添うようにあしらい、6万平方メートルを超える緑の空間が新たに生まれています。気候危機や新型コロナウイルスとの闘いを契機に、人々の価値観や都市の役割がますます多様化し、自然環境と都市機能のさらなる調和が求められています。「東京グリーンビズ」。100年先を見据えた、緑と生きるまちづくりを進めます。
多摩地域の森林整備を促進するため、都道府県と区市町村それぞれに配分される森林環境譲与税を効果的に活用できるよう、都内の12区市町村と連携協定を締結しました。環境保全や自然体験活動、多摩産材の普及など、連携の輪が一層広がるよう取り組みます。都会のオアシスである緑豊かな都立公園は、年度内に策定予定の新たなマスタープランの下、アップデートを図ることで、時代に求められる役割をしっかりと果たしていきます。植え替えが必要な樹木を公園整備等で再活用する「ツリーバンク」や、自然の機能を社会課題の解決に活かす「グリーンインフラ」など、緑を「まもる」「増やし・つなぐ」、そして「活かす」取組で、自然と調和した都市を実現いたします。
2030年のカーボンハーフを確かなものにするには、都が取組を先導し、官民を巻き込んだムーブメントを起こすことが重要です。
そこで、都営バスでは、営業所内に水素ステーションを設置し、燃料電池バスの導入を推進します。また、充電設備や車両の性能向上、災害時等における動く蓄電池としての活用など大都市におけるEVバスの導入モデル構築にも挑み、脱炭素社会に貢献するモビリティの導入を推し進めます。次世代の航空燃料として注目が集まるSAF、エスエーエフは、原料となる使用済み食用油の回収プロジェクトを開始し、日本初となる国産大規模製造に向けた供給網の構築を後押しいたします。
11月のCOPトゥエンティーエイト、28に先立ち、二つの国際会議を開催します。エネルギーの脱炭素化をテーマに具体の行動を呼びかける会議のほか、水素の国際的なサプライチェーン構築や技術開発の促進に向けて新たな会議を立ち上げ、目標を同じくする海外都市との連携を強化します。国内外に取組の重要性を発信しながら、まさに「TIⅯE TO ACT」で、再エネや水素の早期実装化を先導してまいります。
さらに、CO2排出の抑制と再エネ供給の拡大を目指し、都が先駆的に導入したキャップ&トレード制度を強化します。大規模事業所のCO2削減義務率を大幅に引き上げるほか、再エネ利用を一層促す仕組みに見直します。中小規模事業所につきましても、2030年の達成水準を新たに策定し、事業者に計画的な取組を求めることとしました。本定例会には、こうした制度強化に係る条例改正案を提案しています。東京がこれからの時代にふさわしい環境先進都市へと進化するため、取組のさらなる底上げは不可欠です。よろしくご審議お願いをいたします。
都民・国民の身近な行動も大切です。「デコ活」という言葉をご存知でしょうか。デカーボナイゼーション、すなわち脱炭素と同時に、エコな生活を促すキャッチフレーズであります。この国民運動を推進する環境省と協力し、「HTT」に加え、「デコ活東京」をキーワードに、環境負荷の少ない行動を都民に浸透させます。
脱炭素社会への歩みを下支えし、加速させるのが金融の力であります。来月、持続可能な発展に向けた金融のあり方を議論する国際会議「PRI in Person」が、日本で初開催されます。この機を捉え、「Tokyo Sustainable Finance Week」と題し、各種セミナーや講演会を集中的に開催いたします。「資産運用立国」を目指す国とも緊密に連携して、サステナブルファイナンスの機運を盛り上げ、国際金融都市としてのプレゼンスを大いに高めます。
熾烈な国際競争を勝ち抜くには、東京をもっと元気にしていかなければなりません。多彩な人材や技術、アイデアによってポテンシャルを引き出し、世界を惹きつける活力溢れる都市といたします。
全国から水道関係者が集まる会議が、44年ぶりに東京で開催されます。スタートアップや海外団体との交流の機会を設け、世界に誇る上下水道の技術力を、都市課題の解決やビジネスチャンスの創出に繋げます。
こうした高度なインフラ技術のように、東京の強みであり新たな成長の源泉となるSusHi Tech Tokyo。これをデジタル技術を駆使して、いわば見える化する拠点が、有楽町にオープンした「SusHi Tech Square」であります。アートやデザインの要素を取り入れたコンテンツを展開し、デジタルが持つ可能性を多くの方に体感してほしいと思います。その上のフロアでは、スタートアップの支援拠点「Tokyo Innovation Base」が11月にプレオープンを迎えます。民間の関係者と重ねてきた議論を、いよいよ実践段階へと移します。イベント開催などから運営をスタートさせ、来年春の本格オープンに向けまして企画運営のブラッシュアップを図りながら、機能を充実していきます。施設を一体的に運用して巨大な交流空間とすることで、スタートアップをはじめ多様なプレイヤーが、この「たまり場」に集い、意見をぶつけ合い、夢を語り合う。企業や地域の垣根を越えたフラットな交わりを、社会を変える新たな発想に繋げてほしいと思います。
イノベーションを生み出す重要なプレイヤーが、大学です。先般、ニューヨークを中心に都市課題の解決に貢献するコロンビア大学と、研究や人材交流等を進める覚書を締結いたしました。全国的な学術研究のネットワークを持つ東京大学とも手を結び、国内外の大学と連携の輪を広げます。東京と世界の知を融合させ、スタートアップを次々と生み育てます。
東京大改革の最大のツール、それはDXです。都が牽引役となり、デジタルの力で行政サービスの変革に挑みます。一人ひとりに最適化されたサービスを行政の垣根を越えてタイムリーに届けていく。この変革の推進力となる専門家集団「GovTech東京」が、いよいよ始動いたしました。多くの自治体が頭を悩ます人材の確保だけでなく、システムの共同化などにより、都と区市町村のDXを強力に推し進めます。その先に実現する将来像を「東京デジタル2030ビジョン」として取りまとめをいたしました。都とGovTech東京が両輪となって、デジタル先進都市へと突き進みます。
一方、民間のDXの裾野を広げることも重要です。課題となっている中小企業のデジタル人材育成を後押しいたします。テクノロジーを上手に活用することで、業務の効率性や生産性を飛躍的に向上させ、より良いサービスや製品の創出に繋げます。
こうした取組に欠かせないのが通信基盤であります。いつでも、どこでも、安心して「つながる東京」を実現する新たな方針を策定いたしました。誰もが便利なサービスを利用でき、データを使って様々な課題の解決が容易になるスマートな都市を目指し、官民一体で取組を推し進めます。
街を歩く外国人観光客の姿が、再び日常の光景となりつつあります。この機を捉え、東京の魅力を一層磨き上げます。観る者を圧倒するプロジェクションマッピングをはじめ多彩な音と光の演出が堪能できる「TOKYO LIGHTS 2023」は、今年で3年目を迎えました。今回も多くの人を魅了し、東京の新たな魅力として定着したことを印象づけるものとなりました。加えて、池袋では、アニメコンテンツの拠点「アニメ東京ステーション」の本格開業も控えています。人気作品の展示イベントや、ワークショップ、講演会等の企画を充実させ、日本が世界に誇るキラーコンテンツの魅力を余すことなく発信していきます。11月には、丸の内、銀座、渋谷の3つの街を舞台に、参加型のファッションイベントを同時開催いたします。ロンドンやパリに負けない研ぎ澄まされた感性で生み出される東京発のファッションを武器に、言葉や文化、世代を超えて国内外の人々を魅了し、惹きつけてまいります。
自らの魅力を磨き上げ、東京を活力溢れた都市にするだけでなく、日本全体を元気にしていく。これは首都・東京の大きな役割であります。そこで、1400万都民のいわば消費者力を活かし、福島県とも連携いたしまして風評を払拭し水産業を応援するキャンペーンを開始をいたします。「日本の食」は我が国が誇る魅力の一つであります。この機会に、新鮮でおいしい海の幸を食べることで、事業者や被災地の皆様を力強くサポートするとともに、世界にもアピールしてまいります。
臨海部では、晴海の選手村跡地が、来年、新たな街へと生まれ変わります。まちびらきに先駆け、プロローグイベントを来月開催し、持続可能な都市のモデルとなる街を一足早く都民の皆様に感じていただきます。ベイエリアから都心部へのアクセス向上を目指し、水辺空間を活用した舟旅通勤も開始いたします。日本橋・豊洲間は来月から、晴海・日の出間は、まちびらきに合わせ来年春から運航を始め、水の都・東京を象徴する交通手段として定着させます。
東京へ移管されて130年目を迎える多摩地域。これを記念したイベント「超たまらん博」を開催します。「住んでよし」「働いてよし」「訪れてよし」、三方良しの魅力を多くの方々に届けます。また、南北に走る多摩モノレールから見える映画のワンシーンのような夜景が、このたび「日本夜景遺産」に認定されました。車窓に映る多摩の人々の営み。これを大切に守り、一層発展させていきたいと思っています。多摩振興計画を進化させるべく、市町村や有識者の意見を聞きながら、さらなる活性化策を練り上げてまいります。
島しょ地域では、創意工夫で地元の特性を活かした魅力の創出が進んでいます。電力や水を自給自足できるサステナブルな住宅整備、先端技術を駆使した観光のDX化など、これまでと一線を画すような大胆な発想で、新たな活力と賑わいを呼び込みます。さらに、都内の大学生が一週間程度島に滞在し、特産品のブランド化を狙った企画・提案を行うなど、東京宝島の魅力の発掘も進めます。
世界陸上でやり投げの北口榛花選手が獲得した歴史的な金メダル、また、バスケットボール男子日本代表による48年ぶりの快挙は、都民・国民に感動と勇気を与えてくれました。スポーツのかけがえのない価値を次の世代に胸を張って継承していけるよう、2025年に開催する二つの国際大会を成功に導いてまいります。
先般、デフリンピックの大会ビジョンを公表いたしました。掲げるのは「誰もが個性を活かし力を発揮できる」共生社会の実現であります。聴覚障がいのある学生や次世代を担う中高生の想いがギュッと詰まった大会エンブレムの下、東京2020大会のレガシーも活かしながら、精力的に準備を進めます。世界陸上につきましては、大会運営組織が立ち上がり、本格的な活動がスタートしています。先月、ブダペストで開催された世界陸上の様子を現地で確認をいたしまして、次回開催都市・東京のPRも行ってきました。両大会の成功に向け、運営組織がガバナンスを確立し、大会が公正で信頼されるものとなるよう、都も様々な場面でサポートしてまいります。
深刻さを増す少子化や人口減少によって、一人ひとりが活躍できる社会の実現が、これまで以上に重要となっています。「人」が主役となる都市を目指し、きめ細かな取組を展開していきます。
0歳から18歳まで全ての子供たちに月額5千円を支給する018サポートの申請受付がスタートいたしました。これは、とうきょうママパパ応援事業をはじめ、妊娠・出産から子育てまでシームレスに支える都の姿勢を象徴するものであります。子育てしやすい住環境の整備を促進する「東京こどもすくすく住宅認定制度」は、既に多くの事業者から関心をいただき、着実に認定件数を増やしています。「育児は休みではなく未来を育む仕事である」という育業の理念を広く普及させるため、企業と連携したプロジェクトも展開し、住まいや働き方など、様々な分野で切れ目なく子育てを応援します。さらに、成長と発達をサポートする子育ち応援プログラムは、すくすく育ち、わくわくを大切にしてほしいという想いで「とうきょう すくわくプログラム」と名付けました。幼稚園や保育所などの垣根を越えて都内全域に広げていきます。また、保護者の就労の有無を問わない、保育所等での定期的な預かりも開始し、乳幼児期から様々な人と関わり合う機会を創出いたします。先月には、各界の第一線で活躍する皆様に「こどもスマイルムーブメント」のアンバサダーに就任いただきました。チルドレンファーストの取組で子供たちの笑顔を満開にし、社会全体も元気にしてまいります。
次世代の人材を育てる教育の質も向上を図ります。都立学校では、来年の運用開始を目指し、生徒の出欠状況や成績等の教育データを集約・可視化する「教育ダッシュボード」の構築を進めています。エビデンスに基づく指導で、生徒の力を最大限に引き出します。また、新たに生まれ変わった工科高校。「新ものづくり人材」をコンセプトに、ものづくりに留まらない多彩で質の高い教育が大きな自慢です。その魅力を余すことなく伝える積極的なPRを展開いたします。工科高校での学びを通じて、新たな価値を生み出す人材として力強く羽ばたいてほしいと思います。
同時に、国際社会で問われるのは、英語によるコミュニケーション力です。先の全国学力テストの結果で、中学生の英語を使いこなす力に課題があると指摘される中、スピーキングテストの導入など先駆的な取組を続ける東京はトップの成績を収めています。体験型英語学習施設TGGで実施したサマーキャンプには、大変多くの応募があり、予定数を大幅に上回る生徒たちに英語漬けの時間を過ごしてもらいました。この秋以降、新たに高校生を対象とした英語プレゼンテーションコンテストも実施します。実践の場を増やし、英語力のさらなる向上を図ります。
女性の参画という点で、まだまだ世界の常識から大きく後れを取っているのが日本の現状です。取組を急がねばなりません。特設サイトを立ち上げ、女性の健康課題を技術で解決に導くフェムテックの活用や様々な休暇制度の利用など、積極的に取り組む企業のモデル事例を発信します。オンラインセミナー等も実施し、働き手と職場双方の理解を深めることで、安心して仕事を続けられる職場づくりと、働く女性が心身共に輝ける環境整備の気運を創出します。さらに、10月、11月と続けて、自治体の首長や経営者など第一線の女性たちによる会議を開催いたします。積極的な意見交換や女性からの力強いメッセージの発信を通して、活躍を阻む社会のマインドを払拭していきます。
一方、社会進出がライフプランを狭めるようなことがあってはなりません。女性たちの自分らしく生きたいという願いを応援するため、卵子凍結に係る費用の支援を来月から開始します。都民や企業向けの正しい知識の普及をはじめ安全かつ安心して卵子凍結を行える環境を整え、一人ひとりの選択を後押ししてまいります。
社会参加を通してシニア層がいつまでもいきいきと生活できるようにすることが重要です。豊富な知識や経験を活かし中小企業への再就職を希望するシニアに向け、新しい職場に溶け込むノウハウを学ぶ短期集中の講座を新たに開設いたしました。都が発祥のシルバー人材センターの活性化もしっかりと後押しをして、意欲あるシニア層のセカンドキャリアを応援します。また、希望に応じた活動に参加できる仕組みづくりが大切です。都内の様々な活動情報を一元管理し、広域的なマッチングができるオンラインプラットフォームの構築を着実に進めます。
発達障がいのある方々に多いと言われる、記憶や計算といった分野の類まれな特性。これを社会の中で活かしていくニューロダイバーシティの考え方を広めることで、障がい者の活躍の場を広げます。そこで、今月から企業でのトライアル雇用を開始いたしました。課題や効果を検証するとともに、モデル事例を発信し、意欲ある企業の裾野拡大に繋げます。
高齢者や障がい者の地域生活を支える福祉人材の充実にも力を注がなければなりません。確保・育成・定着といったあらゆる視点で、効果的な施策の検討を深め、戦略的に取り組んでまいります。そして、誰もが力を最大限発揮できる真の共生社会の実現を推進いたします。
居場所を求めて集結する青少年を、犯罪被害等から守る取組も進めます。普段から多くの青少年が集まる新宿歌舞伎町の通称「トー横」を、地元の吉住健一区長と共に視察し、連携して対応していくことを確認いたしました。大人の甘い言葉に乗せられ、苦しむ現状を見過ごすことはできません。安心して相談できる環境の整備など、不安を抱える当事者に寄り添った丁寧な対策を講じていきます。
このたび、名誉都民の候補者として、今井通子さん、中村メイコさん、堀田力さんの三名の方々を選定させていただきました。
今井通子さんは、世界の登山史に残る偉業と長年の医師の経験を活かし、自然の大切さを伝える活動や環境問題の研究に尽力されてきました。
中村メイコさんは、86年もの長きにわたり、テレビ、著作等と多方面で活躍され、その魅力と作品の数々は多くの人に親しまれてきました。
堀田力さんは、「新しいふれあい社会の創造」を旗印に、ボランティア活動の普及啓発に尽力する等、日本の福祉推進に貢献されてきました。
お三方につきまして、都議会の皆様のご同意をいただき、来月、名誉都民として顕彰したいと考えております。よろしくお願いいたします。
さて、最近、国際会議などで訪れた、インドやフィンランド。そこで出会った若者たちの輝く眼差しが忘れられません。将来への希望、世界を牽引していくという情熱。国を大きく成長させるのは、やはり人の力であると改めて確信をいたしました。急速に縮みゆく日本の現状を変えていくのは、東京であります。どのような時代でありましても、一人ひとりが希望を見出し、自らの力を存分に発揮できる社会にする。このことが、東京の発展を持続可能にし、さらには日本全体を元気にする鍵となるのであります。
私たちの行動は、今を生きる私たちのためだけのものではありません。後藤新平が、良き助言者として信頼を置いたアメリカの歴史家チャールズ・A・ビアード博士。かつて博士は、焼け野原と化した帝都の復興に臨む後藤新平に、こう手紙を送ったといいます。「今日を目標として建設することなかれ。希くば、永遠を目標として建設されよ」。まだ見ぬ未来を真剣に考えた先人たちがいたからこそ、今日の繁栄があるのです。東京大改革、すなわち都政の大イノベーションによって、100年先も誰もが輝く、明るい東京の未来を確かなものにしてまいります。
なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、条例案13件、契約案8件など、合わせまして35件の議案を提案いたしております。よろしくご審議をお願いをいたします。
以上をもちまして、私の所信表明を終わります。
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