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令和6年(2024年)2月20日更新

令和6年第一回都議会定例会 知事施政方針表明

令和6年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を述べさせていただきます。
去る12月31日、名誉都民である中村メイコさんが逝去されました。また、2月6日、同じく名誉都民である赤松良子さん、小澤征爾さんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りいたします。
はじめに、能登半島地震について申し上げます。
新たな一年の始まりを襲った地震は、石川県輪島市や珠洲市をはじめ各地に甚大な被害をもたらしました。亡くなられた方々に深く哀悼の意を表するとともに、被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。都は、発災直後から警視庁、東京消防庁等の各部隊の派遣をはじめ、都営住宅への被災者の受入れや物資の提供等を直ちに行いました。生活に欠かせない上下水道の復旧にも当初から継続して取り組むなど、様々な支援を行っております。今後も、被災者の方々に寄り添い、必要な対応を続けてまいります。

1 はじめに

大地震で幕を開けた2024年。我が国では、少子高齢化、人口減少など、長年先送りにし続けてきた構造的な課題が、いよいよ先鋭化しています。このままでは、さらなる国際競争力の低下は免れません。そこへ追い打ちをかけるように、相次ぐ戦争や深刻さを増す気候変動など、将来を脅かす危機も高まっています。明るい未来への道筋が見えないことに対する、人々が感じる不安。これに目をつぶり、何も手を打たないことは政治の責任放棄と言えましょう。世界の動き、そして時代の行く末をしっかりと見定め、社会のかたちを抜本的に変えていく覚悟が必要であります。
先月に発表した「『未来の東京』戦略 version up 2024」と「シン・トセイ4」には、既存の仕組みや制度に一石を投じる大胆な政策を散りばめました。これまで展開してきた施策もさらにブラッシュアップし、無限の可能性を秘めた東京の強みやポテンシャルで、明るい未来を切り拓いてまいります。

令和6年度予算案と執行体制

こうした想いで編成した令和6年度予算案は、一般会計の規模、8兆4530億円。「『人』が輝く」、「国際競争力の強化」、「安全・安心」という3つの観点で、都市力を磨き抜く数々の政策を盛り込んでいます。一方で、ワイズスペンディングの観点から、無駄をなくす取組を徹底いたしました。都と政策連携団体の取組に着目した新たな事業評価を実施するなど、施策の見直しや事後検証を一層促進しています。その結果、過去最高となる1266億円の財源を確保し、この8年間で生み出した新たな財源は、合わせて約8100億円となります。基金や都債も計画的に活用することで、持続可能な財政運営にも目配りしたメリハリのある予算を練り上げることができました。
また、政策実行を支える執行体制も固めています。例えば、コロナ禍の経験を踏まえた保健所の対応力強化や、スタートアップ支援をより加速するための体制充実など、「『未来の東京』戦略」の重点分野を中心にマンパワーを充実いたしました。
知事就任以来、「セーフ シティ」「ダイバーシティ」「スマート シティ」の3つのシティを掲げ、「成長」と「成熟」が両立した明るい未来の東京の実現に全力を尽くしてまいりました。都市の活力の源泉は「人」であり、だからこそ「人」に着目した「Children」「Choju」「Community」という3つのCで政策を展開してまいりました。問題は、その「人」そのものが減っていくことであります。このドラスティックな変化から目を背けるわけにはいきません。50年先、100年先も「人」が輝く活力溢れる都市であり続けるため、今がラストチャンスとの想いで、覚悟を持って産業・経済・社会の構造転換に挑んでまいります。

2 日本の先頭に立ち、「人」が輝く社会への構造転換に挑む

これより主要な政策について申し述べます。

次世代を育むチルドレンファースト社会を実現する

まずは、次世代を大切に育むチルドレンファースト社会の実現であります。

子供を産み育てやすい社会へ

018サポートや卵子凍結への支援、とうきょうママパパ応援事業など、少子化への危機感から、先手先手で取り組んできた数々の施策には、大変大きな反響をいただきました。望む人が安心して子供を産み育てることができる社会へと変えていかなければなりません。出会いから結婚、妊娠・出産、子育てまで切れ目のない支援をさらに充実させます。例えば、都が運営する婚活アプリは、来年度からいよいよ本格展開し、結婚を身近なものに感じてもらう取組も新たに実施します。想定を超える多くの方からご応募いただきました卵子凍結に関する支援は、枠を一気に10倍に拡大し、「いつかは子供を産みたい」という願いを応援いたします。子育て家庭が孤独や孤立を感じないよう、定期的な訪問による「見守り」や、子育ての悩みを聞き、育児を一緒に行う「伴走支援」などこれまで以上に寄り添ったサポートを行います。018サポートは、子供の育ちを応援する観点から、来年度も継続して実施してまいります。
教育に係る経済的負担を、子供をあきらめる要因にしてはなりません。国の方策が講じられるまでの間、学校給食費の負担軽減に取り組む区市町村を支援するとともに、私立や都立の高校等の授業料を保護者の所得に関わらず実質無償化いたします。
また、かつては8500人を超えた、知事就任時に極めて深刻でありました待機児童。都政における最重要課題と位置づけ重点的に対策を講じました結果、今やほぼ解消させることができました。次は「小1の壁」に挑みます。共働きが当たり前の現代におきまして必須のインフラとも言える学童クラブの充実に向け、新たに都独自の運営基準による認証制度の創設に取り組んでまいります。

未来を担う力を育む

そして、何より、次世代を担う子供たちが、不透明な時代を生き抜く力を身につけ大きく羽ばたけるようにしたいと思います。そのためにも、乳幼児期から「伸びる・育つ」を応援することが大切であります。すくすく育ち、わくわくを大切にしてほしいという想いを込めた「とうきょう すくわくプログラム」を、来年度から都内全域へと展開していきます。
世界の動きを見定めることができる国際感覚をしっかりと養うことも欠かせません。これまで実施してきた都立高校の海外派遣プログラムを再編・強化するとともに、英語を活用している職場でインターンシップが体験できる機会を設けます。実践を通して英語力を磨くことで、人生の選択肢を広げ、世界で活躍する将来像を描くきっかけにもしてもらいたいと思います。
学校生活に馴染めない子供たちが自分らしく成長していけるよう、学びと居場所の選択肢を増やすことも大切です。そこで、いわゆる不登校特例校の校内分教室型となります「チャレンジクラス」を都独自に新設いたします。仮想空間上の居場所・学びの場も、導入自治体を広げていきます。併せて、学校外の子供の学びに対する支援も本格的に乗り出します。具体的には、フリースクール等の利用者の経済的負担を軽減するため、助成制度を立ち上げます。また、子供の活動支援の充実など子供目線に立った取組を進めるフリースクール等を新たに後押ししてまいります。
子供たちの学びを支える教員の負担軽減を急がねばなりません。小学校低学年の担任を補佐するエデュケーション・アシスタントを都内全校に拡大します。さらに、高学年に教員を追加で配置し、教科担任制を推進することで、より質の高い授業を行える環境を整えていきます。

アクティブな長寿社会を実現する

次に、アクティブな長寿社会の実現です。高齢者が自分らしく活躍し、不安なく生活できるよう、「アクティブChojuプロジェクト」を展開します。6月に「プラチナ・キャリアセンター」を虎ノ門に開設し、意欲あるシニア層が、人材不足に悩む中小企業で自らのスキルを活かせるよう支援します。また、都が発祥のシルバー人材センターにつきまして、多様な職種や分野の新規求人先を開拓するなど、時代の変化に合わせて活性化を図っていきます。
単身高齢世帯の急速な増加を念頭に、元気で自立した高齢者が、ニーズに応じて住まいを選択できるようにすることも欠かせません。来年度、民間による孤立の防止や見守りの取組を支援し、その知見を基に、都独自の「高齢者いきいき住宅(仮称)」認定制度の構築を進めます。
2025年には都内高齢者の6人に1人の割合で発症が見込まれるのが認知症であります。来年度から「TOKYO認知症施策推進プロジェクト」と銘打ちまして、当事者が尊厳を持って暮らせる社会づくりを推進いたします。検診の補助対象を拡大するとともに、都内12の医療圏で認知症抗体医薬の投与治療ができる体制の確保を図ります。見守りネットワークの構築など、本人や家族が安心して暮らせる地域づくりも促進して、社会参加を応援してまいります。
そして、2025年、これは団塊世代が全て後期高齢者となる年でもあります。不足する介護・看護人材の確保を急がねばなりません。こうした危機感から、今回の予算案におきましては、東京の事情を踏まえ、介護職員やケアマネジャーの居住支援に大胆に踏み出しました。都内で就職する意思のある看護学生への支援も充実いたします。是非、多くの方に、この分野で力を発揮していただきたいと思います。

「人」を輝かせるコミュニティの活性化

続いて、「人」を輝かせるコミュニティの活性化についてです。

地域コミュニティ

住民同士の関係が希薄化する一方、災害時の助け合いなど地域の繋がりの重要性は高まっています。まちに息づく支え合いの輪を広げていかなければなりません。町会・自治会の皆様のちょっとした困りごとと、スキルを活かして役に立ちたい「腕きき」の方とをオンラインで繋げる「まちの腕きき掲示板」、これを都内全域に拡大いたします。都営住宅の集会所等を地域の交流の場として活用する取組も実施箇所を増やします。共同住宅の住民と町会・自治会との合同防災訓練を促し、こうした機会も通じまして、地域コミュニティの活性化に弾みをつけてまいります。

インクルーシブなコミュニティ

多様性溢れる社会にとって、インクルーシブなコミュニティという観点も重要です。都は全国初となる条例の制定など、困難を抱える方の個性や能力に応じた活躍を引き出すソーシャルファームの拡大を推進してきました。着実に広がりつつある動きを大きなうねりへと繋げるため、障がいのある方などが成果を発揮しやすいデジタル産業や農業を中心に取組の情報発信を強化するなど、ビジネスとしての成長を後押しいたします。
障がい者が住み慣れた地域で自立した暮らしができる環境づくりも重要です。西新宿を舞台に、サポートしてほしいことなどが外出先のお店のスタッフに自動で伝わる仕組みを先行導入いたします。また、地域の受入施設の開拓等に一層力を入れるとともに、施設や病院からの移行が円滑に進むよう、より早い段階から相談対応等を行えるようにしていきます。
日本語を母語としない在住外国人の多くは「正しい情報の入手方法や公的機関への相談先が分からない」といった困りごとに直面しています。様々な生活情報をポータルサイトに一元化するなど、情報発信・相談体制を強化し、地域で安心して暮らせる環境を整えます。
開催を来年に控える世界陸上とデフリンピックを、共生社会への変革の推進力にしたいと思います。先月策定いたしました「ビジョン2025 アクションブック」。共に生きる未来づくりやボランティア文化の継承・発展など、そこに掲げるスポーツを通じた10のアクションを展開することで、大会を成功に導き、全ての人が輝くインクルーシブな街・東京という確かなレガシーを残してまいります。

女性が自己実現を追求できる未来を創る

世界から大きく立ち後れる我が国の女性活躍であります。女性たちが自分らしく輝ける社会にするにはどうしたらよいのか。昨年立ち上げた「東京くらし方会議」で議論を深めてまいりました。単身世帯が都内では半数を超え、共働き家庭が多い今日であります。一人ひとりの生き方や暮らし方、家族のかたちも、時代の変化を反映し、多様化しています。しかし、社会の仕組みや私たちの意識は、その大きな流れから取り残されていないでしょうか。世の中では子育てのために仕事をあきらめたり、いわゆる「年収の壁」を意識して働きたい気持ちを抑えたりする方が多数おられます。社会環境や労働環境が女性の自己実現を阻んでいる現状を打破し、様々な選択肢を持てるようにしなければなりません。働き方を変えることによる生涯収入への影響を可視化できるツールを、来年度、新たに構築するなど、長期的な目線でキャリア形成ができるようにいたします。また、労働相談情報センターの新たな相談窓口「はたらく女性スクエア」を青山に開設し、あらゆる女性をサポートしてまいります。
男性の働き方も変えていかなければなりません。育業を経験した男性職員をリーダーに、取得率の目標設定や実現に向けた具体的な計画を策定した企業を都独自で認定します。さらに、その取組をホームページで紹介するなどして、男性の育児参加を一層促進していきます。

3 安全安心を脅かすあらゆるリスクから都民の命と財産を守り抜く

次に、安全安心についてであります。自然災害はもとより、健康や暮らし向き、治安など、様々なリスクへの不安が高まっています。あらゆる面で強靭な都市を創り上げ、都民の命と財産を守り抜きます。

あらゆる脅威への備えを固める

災害等への備え

能登半島地震を踏まえ、直ちに、モバイル衛星通信機器の配備や非常用トイレの備蓄の拡充等に取り組んでいます。常に危機感を持って、先般アップグレードいたしました「TOKYO強靭化プロジェクト」を推進いたします。
約900万人が暮らすマンション等の共同住宅の防災力強化は喫緊の課題です。安心して在宅避難ができるよう、「東京とどまるマンション」では、エレベーターや給水ポンプの非常用電源の設置を新たに支援するとともに、町会・自治会との連携も促し、共助の強化にも繋げます。
これまでの耐震化や不燃化により、最新の被害想定では、建物被害と死者数共に約3~4割の減少が見込まれておりますが、被害軽減に向けた一層の取組は待ったなしです。建物の液状化対策を強化するとともに、防災都市づくり推進計画の改定に着手し木密地域の不燃化も推進します。
倒れた電柱や電線が避難や救助活動の妨げとなるリスクは、能登半島地震においても現実のものとなっています。知事就任以来、無電柱化を推し進め、センター・コア・エリア内の都道につきましては99%、概ね完了させました。さらなる推進のため、地下埋設物の位置や設計データの3D化を進めるほか、電気・通信など関係事業者と新たにチームを組むことで連携を強化し、整備を加速させます。
激甚化・頻発化する風水害への対策も喫緊の課題であります。浸水被害の低減に大きな効果が期待できる調節池の整備や地下河川の事業化に向けた取組を着実に進めます。避難先となる高台が不足する荒川、江戸川、多摩川の流域では、高規格堤防をまちづくりと一体的に都市計画決定して整備を進める新たな手法を導入し、高台まちづくりを着実に推進します。
ミサイルの脅威から都民の命を守るため、地下鉄や地下駐車場を活用した避難施設整備のモデル事業に着手いたします。まずは都営大江戸線の麻布十番駅に併設する防災倉庫を活用して整備を進めます。

感染症対策

東京モデルをはじめ、新型コロナとの闘いで培った数々の知識や経験。これらを結集し、感染症への備えを次のステージへ進めます。平時から自治体・医療機関等との情報共有や連携を図ることで、流行初期の段階から都が総合調整力を発揮して対応できる体制を整えます。東京iCDCをはじめ専門家のネットワークを活用し、情報の的確な分析・発信を行うほか、病床や発熱外来などの確保も、段階に応じた数値目標を設定することによりまして、より実効性を高めます。対応の核となる保健所では、DXによる業務効率化を進めるとともに、初動対応の円滑化を図ります。こうした取組の内容を、今年度内に改定する感染症予防計画に反映し、命と健康を守り抜いてまいります。

高まる不安や脅威から都民生活を守る

物価高騰対策

長引く物価高騰が賃金上昇を上回り、都民生活を圧迫しています。今年度は、数次にわたり補正予算も組み、総額1500億円を超える対策を講じてまいりました。長期化する影響を踏まえまして、世帯当たり1万円分の商品券等で低所得世帯を支援する取組を行います。来月には、QRコード決済での買い物にポイントを還元するキャンペーンも実施いたします。さらには、来年度、賃上げや賃金制度の整備・見直しに取り組む中小企業も支援するなど、しっかりと都民の暮らしを支えてまいります。

まちの治安を守る

歌舞伎町界隈では、「トー横」キッズの市販薬乱用や性被害に加え、悪質なホストクラブなどの問題も顕在化しています。こうした危険から青少年や若者を守るため、社会福祉士などに気軽に相談できる総合窓口を設置いたします。併せて、被害やトラブルを未然に防ぐため、SNSを活用した効果的な注意喚起を行い、必要なサポートにも繋げます。
若者を特殊詐欺等の犯罪に巻き込むいわゆる闇バイトは、未だ憂慮すべき状況です。犯罪に加担してしまうことがないよう、若者の目に留まりやすいインターネットカフェ等での啓発に力を入れます。
地域のさらなる安全安心のため、防犯カメラの設置を進める区市町村も力強く支援いたします。

児童相談体制の強化

都の児相、児童相談所と、区の子家セン、子供家庭支援センターが連携して支援を行っていた当時4歳の女の子が亡くなり、その両親が先日逮捕されるという事件が発生しました。改めて、亡くなられたお子さんのご冥福を心よりお祈りいたします。今後、警察の捜査状況を注視しながら、都と区のこれまでの対応についてしっかりと検証を行うとともに、このような痛ましい出来事が起こらないよう全力を挙げてまいります。
まさに児童虐待への対策は待ったなしであります。国の設置基準を踏まえて、新たに練馬児童相談所を開設するほか、多摩地域での設置準備も進めます。身近な相談窓口である子供家庭支援センターと児童相談所の連携の強化も重要です。職員の研修派遣や連携の拠点づくりを後押しするとともに、都の児童相談センターの体制も充実するなど、広域化・専門化する問題に的確に対応できるよう取り組んでまいります。

4 気候危機に立ち向かうゼロエミッション都市のモデルを示す

年を追うごとに気候危機の影響は深刻さを増しております。この人類共通の課題解決をリードするのは都市であります。ゼロエミッション東京の実現に向けて描いた大胆な戦略を直ちに実行に移します。

脱炭素化を戦略的に推進し、世界のトップランナーになる

省エネと再エネ実装を加速

一つの鍵を握るのは、所狭しと立ち並ぶビルや住宅のさらなる脱炭素化です。新築住宅を対象とする「東京ゼロエミ住宅」の認証基準を引き上げ、省エネ性能がより高い住宅の整備を強力に推進します。既存住宅では、太陽光で発電した電力を最大限に活用できる蓄電池の導入が補助制度の充実により着実に増加しています。これを踏まえ、来年度は予算規模を大幅に拡充するほか、断熱改修も促進いたします。中小規模事業所においても、熱エネルギーを再利用するヒートポンプの導入を支援するなど、省エネ化を一層推し進めます。
また、東京を「発電する未来都市」にしていくために欠かせないのが、再エネのさらなる活用であります。ペロブスカイト太陽電池をはじめ、ビル風や狭隘なスペースといった東京特有の環境に対応できる次世代の再エネ技術の早期実用化を強力に後押しいたします。加えて、電力系統に直接接続する大規模蓄電池の設置を拡大するほか、家庭やオフィスなど分散した電力を束ねて有効活用するアグリゲーションビジネスの実装・展開を新たに支援し、エネルギー需給の安定化を図ります。

中小企業等の脱炭素化を推進

企業が自らのCO2排出量を削減するだけでなく、供給網全体で取り組むことが欠かせません。グループで一体的に脱炭素化に挑む中小企業に対しまして、排出量を見える化するシステムの導入や省エネ設備への更新等を支援します。さらに、次世代の航空燃料であるSAFを活用した航空貨物輸送の裾野を広げるため、都内企業を対象に、SAFの使用に伴う上乗せコストの負担軽減を図ります。
また、カーボンクレジット取引の活性化も欠かせません。来年度内の運用開始を目指し、企業が手軽に国内外のクレジットを取引できる都独自のプラットフォームを構築するとともに、CO2排出量削減のみならず、除去・吸収に伴うクレジットの創出も支援していきます。

ZEV普及の環境整備

来月、初めて日本で開催される世界最高峰の電気自動車レース「フォーミュラE東京大会」を追い風に、モビリティの脱炭素化を推し進めます。国産のEVトラックやEVバスの普及を図るため、より手厚い支援を行います。また、充電器等とZEVをセットで導入する後押しをするほか、普通充電設備の設置を強力に支援するなど、地球に優しいモビリティを普及させる環境整備を推し進めてまいります。

水素社会の実現で世界を先導する

世界ではエネルギーの転換が急速に進んでいます。例えば、先日出張しましたオーストラリアのニュー・サウス・ウェールズ州では、石炭から水素へと劇的な変化を遂げつつある現場を目の当たりにいたしました。脱炭素化の切り札となる水素の活用を巡り本格化する国際競争。社会を持続可能なものとし、我が国の新たな成長分野とするためにも、世界の潮流を追うのではなく、むしろ先導するのだという本気度が問われています。水素社会の実現に向け、「つくる」「はこぶ」「つかう」取組を戦略的に展開してまいります。大田区京浜島で、都内初となるグリーン水素の大規模な製造拠点の整備に着手します。来年度内に1基の先行稼働を目指すのと併せまして、2基目、3基目の整備の検討も進めていきます。また、利活用に不可欠な運搬・貯蔵の技術開発を中小企業等と共に取り組むほか、海外から受け入れた水素を供給するパイプラインの検討も進めます。トラックなどの商用燃料電池車や区市町村の燃料電池ごみ収集車の実装を推し進めるなど、水素の活用を需要と供給の両面から一層浸透させてまいります。
同時に、世界といかに連携できるかが、黎明期にある水素の普及を左右すると言っても過言ではありません。先ほどのニュー・サウス・ウェールズ州とは、水素の社会実装化を連携して進めることで合意いたしました。また、昨年秋に開催した水素国際会議の参加都市等とアライアンスの締結を推進し、国際的な供給網の構築にも取り組みます。そして、COP28で表明した取引所の設立に向けましては、世界有数の水素普及機関として知られるドイツのH2グローバル財団と連携しながら、国際的な視点で制度設計を進め、国産グリーン水素の取引を試行的に開始いたします。

5 国際社会でひときわ存在感を放つ唯一無二の都市へと進化する

続いて、熾烈を極める国際競争の中で、ひときわ存在感を放つ唯一無二の都市へと東京を進化させる取組についてであります。

持続可能な新たな価値を生み出す東京に進化する

イノベーションの土壌を耕す

産業や経済、社会が転換点を迎える今こそ、イノベーションの担い手となるスタートアップをいかに育てるかが問われています。新しい価値を生み出し、持続可能な未来へ繋げるためのイベント「SusHi Tech Tokyo 2024」まで2か月余りとなりました。世界から都市のリーダーや挑戦者などが集い、議論を交わし、イノベーションに繋げる絶好の機会にいたします。そして、多くの人々に未来の都市も体験していただくことで共感を広げてまいります。
有楽町にあるスタートアップの拠点「Tokyo Innovation Base」、TIBでは、昨年11月のプレオープン以降、起業家の熱意や情熱を刺激するようなイベントが連日のように開催されています。人が集い、何気ない会話から新しいビジネスが生まれる未来が目に浮かんでまいります。こうして出会ったプレイヤーを次々と巻き込みながら5月に本格稼働を迎えるTIB。スタートアップをはじめとするあらゆる挑戦者が全国・世界と繋がる結節点として、その役割を存分に発揮してまいります。

アジアのイノベーション・金融ハブ

イノベーションの創出を持続可能なものにするためには、挑戦と成長を支える資金供給の流れを生み出すことが重要です。海外ベンチャーキャピタルによるグローバルな視点からの投資を促す取組を開始します。また、女性活躍など社会課題の解決に向けた挑戦を応援する新たなファンドも創設をし、国内外のリスクマネーを呼び込んでいきます。
同時に、国際金融都市としてのさらなる活性化が肝要であります。都は先週、資産運用立国の実現に向けて国が進める「金融・資産運用特区」に名乗りを上げました。東京のエコシステムを、より高度なものへと引き上げ、日本全体やアジアの成長の中心的な役割を担うべく、国と連携し様々な取組を展開してまいります。
資産運用業の創業を増やしていくため、将来、独立を目指すファンドマネージャーの育成を新たに進めます。世界標準のビジネス・生活環境に向けましては、企業のIR情報の英文開示を推進するほか、インターナショナルスクールの誘致・拡充に取り組みます。
世界から資金・人材・技術・情報を呼び込み、持続可能な社会を実現する「アジアのイノベーション・金融ハブ」となるべく、取組を加速させてまいります。

都内企業の競争力強化

大きな変化の波は、中小企業にも押し寄せています。その波を次なる成長の契機とするには、競争力の強化が必須であります。そこで、実情に合ったDXの支援を行い、企業変革や生産性向上に繋げます。また、後継者不足も、ますます重い課題となっています。優れたノウハウや技術をしっかりと次の世代に受け継いでいけるよう、さらなる手立てを講じ、持続可能な成長・発展を応援していきます。
カスタマーハラスメントが、都内企業におきましても深刻化しています。昨年から専門家等による検討を行い、東京ならではのルール作りが強く求められています。現場において拠り所を持って対応できますよう、独自に条例化の検討を進めます。

2024年問題を乗り越える

一方で、「2024年問題」と言われるように、物流や建設業界を中心に先鋭化する人手不足が、日本経済の重い足枷となっています。デジタルツールやロボットの活用、長時間労働改善の相談支援などきめ細かな対策を講じることで、業界全体の業務効率化や人材確保を後押しし、成長の土台をしっかりと固めます。また、ドライバー不足のみならず、高齢者の移動の確保という観点でも切り札となるのが自動運転です。新たに技術や安全性に対する社会の理解促進を図るとともに、ガイドラインの作成や補助制度の創設等によりまして、実装に向けた取組を加速させます。

暮らしやすく、人々を魅了し続ける都市づくり

続いて、暮らしやすく、人々を魅了し続ける都市づくりであります。

世界に誇る緑と生きるまち

今や機能性や効率性だけでなく憩いと潤いのあるまちづくりが国際社会から選ばれる都市の一つの条件となっています。東京グリーンビズの下、緑と生きるまちづくりを本格的に進めます。屋敷林をはじめ身近な緑を守る特別緑地保全地区の指定を加速するため、地元自治体が緑地を買い取る際の負担軽減を図るとともに、神代植物公園の敷地を活用しましてツリーバンクの運用も開始いたします。都市開発諸制度の改定等により緑の創出を促していくほか、情報発信や都民参画の基盤となる「東京グリーンビズマップ」を作成するなど、多様な主体と連携・協力して緑を育てます。さらに、利用期を迎えたスギやヒノキの伐採・搬出と花粉の少ない樹木への植え替えなど、東京の豊かな森を持続可能なものにするための森林循環を促進いたします。自然の機能を活かしたグリーンインフラの導入も公共施設で先行的に進めるなど、「まもる」「育てる」「活かす」多彩な取組を展開してまいります。

個性を活かしたまちづくり

長い歴史によって生まれた地域の個性を活かしたまちづくりを推進いたします。神田神保町、渋谷、池袋では、建物のリノベーションといった手法を駆使したまちづくりを進めてまいります。河岸や舟運により江戸の発展を支えた日本橋川周辺は、首都高地下化の機会を捉え、河川の環境改善を図るとともに、水辺の統一的な景観を生み出し、誰もが楽しめる都市空間にしていきます。そして、西新宿エリアでは、都庁周辺を誰もが集い、参加し、思い思いの時間を過ごす新たなシティホールとして、都民の皆様の意見等も踏まえながら、空間再編に取り組んでいきます。
また、都心部と臨海部を結び、沿線一帯の利便性を飛躍的に向上させるのが、都心部・臨海地域地下鉄です。先月、鉄道・運輸機構と東京臨海高速鉄道と共に事業計画の検討を行うことで合意いたしました。早期事業化に向けまして、取組をさらに加速してまいります。

江戸東京の歴史や文化を世界に誇る遺産に

江戸のまちでは、浮世絵が生まれ、相撲や歌舞伎が大衆を虜にし、握り寿司という食の新たなスタイルも広まるなど、多彩な文化が花開きました。石垣や神社仏閣、暮らしを支えた上水道の高い技術力も現代に受け継がれています。これまでも、有識者との懇談会を設置するほか、江戸東京博物館やバーチャル空間を通じまして江戸の英知を発信してきました。約260年もの間、平和と安定を築いてきた貴重な歴史や文化。それらを有形無形の世界に誇る遺産として、魅力を掘り起こし、後世に引き継いでまいります。

芸術文化都市・東京の実現

芸術文化は、国内外の人々を惹きつける都市の個性の一つであります。ベイエリアを舞台に、東京の先鋭的なアートを発信するイベントを開催し、創造性と多様性に満ちた都市の姿を世界に示していきます。また、ファッションのイベントや舞台芸術の裏方など、貴重な体験を通じて子供たちの意欲や関心を養い、芸術文化の未来を支える人材を育みます。さらに、殺風景になりがちな工事現場の仮囲い等にアート作品を描くプロジェクトを展開し、子供から大人まで身近に芸術文化を楽しめる都市空間を創出していきます。

東京の強みで観光を活性化

街中の至るところで外国人旅行者の姿、目にするようになりました。東京を楽しみ尽くし、「また来たい」と思ってもらえるよう、強みを活かした戦略的な取組を進めます。先日、観光産業振興の新たな実行プランを策定いたしました。豊かな「食」やキラーコンテンツであるアニメを強力に発信するなど、東京ならではの際立つ個性で国内外の人を惹きつけてまいります。ナイトタイムは大きな可能性を秘めています。都庁舎をスクリーンとして、世界最大級となる常設のプロジェクションマッピングを今度の日曜日、25日から開始いたします。また、伝統的な花火やデジタル技術等を活用したイベントを実施し、東京の夜を盛り上げます。有識者の意見も聞きながらさらなる取組の方向性を検討し、国際観光都市としての存在感を高めてまいります。

6 多摩・島しょを誰もが憧れる存在へと磨き上げる

続いて、多摩・島しょの取組です。大都市は世界に数あれど、東京を東京たらしめているのは、多摩・島しょ地域であります。こうした想いを予算案に反映いたしました。暮らしやすく、魅力的な、誰もが憧れる存在へと磨き上げます。

多摩を、より暮らしやすく、より魅力的な地域に

先月、コロナ禍やDXなど昨今の社会の変化を踏まえました「多摩のまちづくり戦略」の素案を公表いたしました。豊かな自然や落ち着いた住環境、そして、地域が育んできた歴史・文化を大切に守りながら、ハード・ソフト両面から進化させていきます。多摩都市モノレール延伸によって可能性がグンと広がる沿線部では、各駅の特徴に応じて、新しい暮らし方や働き方のモデルとなるようなまちづくりを地元自治体と連携して進めます。入居から半世紀が経過した多摩ニュータウン地域では、緑豊かで良質な住環境を活かしながら、「住・育・職」、すなわち、住む・育てる・働くをコンセプトに新たなまちづくりに取り組みます。
また、多摩に集積する大学や研究機関に眠る先端技術を掘り起こし、中小企業との共同開発等を通じて事業化を促すなど、社会を変革する新たな価値創出に繋げます。
そして何より、多彩な魅力を全国の人に知ってもらうことで、多摩はもっと輝きます。多摩のブランディングを戦略的かつ大胆に展開し、誰もが「訪れたい」「住みたい」と思う地域を創り上げてまいります。

島しょの際立つ個性で戦略的に「人」を呼び込む

都市部とは生活環境が大きく異なる島しょ地域におきましては、その際立つ個性でいかに「人」を呼び込むか、戦略的な取組が求められます。漁港やホテルなどの施設や敷地を最大限活用して、新たな島の賑わいや雇用創出を目指します。海外で注目が高まるサステナブル・ツーリズムを意識した宿泊施設の整備を促進するほか、高級感のある空港ラウンジの整備に着手しビジネスジェットの受入環境を整えます。非日常とも言える島々の圧倒的な魅力に磨きをかけ、海外の富裕層を中心に、幅広い層からの集客、そしてリピーターの獲得に繋げていきます。また、住民が主体となり、外部の人材・事業者と連携して地域課題を解決していく取組を推進し、島特有の課題の解決や新たな関係人口の創出を図ります。
島しょ地域の防災力も向上させます。地震や津波等の被害を迅速に把握できる遠隔操作可能なドローンの導入に取り組むほか、周期的に噴火を続ける三宅島では、噴石から島民を守れるよう施設の整備を図ります。

7 DXは東京大改革の最大のツールだ

社会を変えるには、都政を変えていかなければなりません。その最大のツールがDXであります。先日の海外出張先では、それぞれデジタルを大いに活用し、利用者目線に立った変革や社会課題の解決に力を入れていました。都政におきましても、「シン・トセイ」を掲げ、紙やはんこが基本のアナログ環境からの脱却等に挑んできました。わずか3年半で都庁の仕事のあり方は劇的に変わっています。この爆速で進めてきたデジタル化を次のフェーズへと進める。DXの「X」、トランスフォーメーションであります。GovTech東京や国、区市町村と緊密に連携しながら、まずは変革の突破口として、「こどもDX」を推進し、便利で快適な子育て支援サービスに向けた基盤の構築を進めます。また、「待たない、書かない、キャッシュレス」を合言葉に、窓口対応を抜本的に変革するほか、契約から請求までデジタルで完結し事業者の負担を軽減するシステムの運用も開始します。都内で様々な事業に活用できるデジタル地域通貨プラットフォームを構築して地域振興にも繋げるなど、都民の皆様が利便性を実感できる取組を強力に推し進めます。

8 おわりに

さて、先日、日本の新たな主力ロケット「H3」が、様々な困難を乗り越え、無事に打ち上げを成し遂げました。まさにその国の技術力が試される宇宙開発であります。とりわけ、先月には、日本の探査機「SLIM」が、約38万キロメートルも離れた月面でのピンポイント着陸という、どの国も成し得ていないミッションを見事成功させました。この世界が称賛したプロジェクトには、都内のものづくり産業も貢献しています。都立大学の宇宙工学や金属工学等の研究をはじめ、宇宙開発とは無縁に思えるおもちゃメーカーや、都が主催するビジネスアワードで受賞した実績を持つ中小企業など東京が誇る技術力が活かされています。これまで磨き続けた知恵や技術が、分野を越えて混ざり合い、歴史的な成功へと繋がったのであります。
人、知識、技術、産業、さらには豊かな自然や江戸の歴史・文化。東京は数え切れないほどの希望の種を持っています。守るべきものは守り、変えるべきものは変える。私たちの前に立ちはだかる「見えざる壁」のような古くなった仕組みやルール。これを突き破り、人々の意識や暮らし方を変えることで、希望の種を大きく花開かせてまいります。新たな発想や、夢への挑戦、そして、これらによって生み出されるイノベーションこそが、時代を切り拓くダイナミズムの源泉となるのであります。
「都民ファースト」、都民が第一、全ては都民のため。覚悟を持って東京大改革に邁進し、持続可能な明るい未来の東京を実現してまいります。都議会の皆様、都民の皆様のご理解、ご協力をお願いいたします。

なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含めまして、予算案36件、条例案93件など、合わせまして148件の議案を提案いたしております。どうぞよろしくご審議をお願いをいたします。

以上をもちまして、私の施政方針表明を終わりとさせていただきます。

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