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平成28年(2016年)12月1日更新

平成28年第四回都議会定例会知事所信表明

平成28年第四回都議会定例会の開会に当たりまして、改めて、都政運営に対する私の所信の一端を述べさせていただきます。

三笠宮崇仁親王殿下におかれましては、10月27日、ご薨去なされました。御快復を願っておりましたが、残念でなりません。ここに、都民を代表いたしまして、謹んで哀悼の意を表したいと存じます。

「東京大改革」という旗を掲げ、知事に就任いたしまして、早4か月となります。東京大改革とは、都政を透明化し、常に情報を公開し、都民と共に進める都政、「都民ファースト」の都政を実現することであります。全ての施策、お金の使い道が、真に都民の利益にかなうものなのか。それを常に念頭に置き、行動をしてまいりました。そのため、就任直後からの100日間は、まず都政の様々な課題を掘り起こすことに邁進をしてまいりました。
連日メディアでも都政が主題に採り上げられ、都議会の様子もかつてないほどに注目を集めました。より多くの都民の皆様に、都政を、都議会を注視していただくことは、非常に重要なことであると考えております。一番身近な政治の場で、何が語られ、何が討議され、何が議論されなかったのか。自分たちの税金が、どのように活かされていくのか。それを一人でも多くの都民の皆様に見て、知っていただきたいとこのように思います。

この100日間の間、最も注目を集めました課題は、言うまでもなく「東京2020オリンピック・パラリンピック」、この経費の問題、そして「築地市場」の移転問題であります。東京2020大会を最高の大会とするために、膨張し続ける大会経費に歯止めをかける必要と責任が、都民の代表であります私にはあります。市場の移転に関しましても、移転ありきの結論の優先ではなく、都民の、そして食を預かる市場関係者の最大の関心事であります安全・安心の確認が重要と考えました。誤った情報や手続きを糺す必要と責任が、私にはありました。

2020年の後も、都民の生活は続きます。
市場は、50年、100年という単位で考えねばなりません。

この間、オリンピック・パラリンピックの経費の見直し、豊洲市場の安全性の確認といった課題とともに、知事給与の半減により身を切る改革の姿勢を示しつつ、待機児童対策のための補正予算126億円の編成、延遼館の復元構想の見直しなど、貴重な財源の有効活用にも取り組んでまいりました。都民ファーストの観点から、地域住民の声も反映し、韓国人学校への都有地貸与の撤回なども行ってまいりました。都政の透明化という点では、情報公開を徹底するため、いわゆる口利きの記録化や黒塗り資料の積極的な公開も進めてきたところでございます。 
今後は、掘り起こした幅広い課題をどう解決していくのか、具体的な答えを出していく段階であります。「2020年に向けた実行プラン(仮称)」の策定、来年度予算案の編成の中で、「新しい東京」に向けた大義ある政策を明らかにして、都民の皆様方の共感を追い風として、それらをスピーディーに実現してまいりたいと考えております。

1 「新しい東京」への確かな道筋を描く

(都民と共に明るい未来へ)

「2020年に向けた実行プラン(仮称)」には、3つのシティ、すなわち、安全・安心・元気な「セーフ シティ」、誰もがいきいきと活躍できる「ダイバーシティ」、環境先進都市、国際金融・経済都市として成長を続ける「スマート シティ」。この実現に向けた、4年間におけます集中的な取組を盛り込んでまいります。東京が抱える課題の解決とより一層の成長創出のため、これまでの長期ビジョンに掲げた取組をさらに進化、加速させて、新たな発想を取り入れた政策にしてまいります。策定に当たりましては、私を含め副知事、教育長及び各局長が一堂と会しまして、議論を重ねてまいりました。これまでの施策計画と今回のプランの大きく異なる点は、各施策について、より具体的で数多くの政策目標を定め、その工程表も明確に作成している点であります。これによりまして、事後的な達成度のチェックや評価を行い、PDCAサイクルを回して、しっかりと施策を実行していくことがこれまで以上に可能となります。パブリックコメントで寄せられました都民の皆様の知恵も活かしながら、オール都庁の英知を結集して、年内に取りまとめてまいりたいと考えております。そして、そのプランの施策は、できるだけ来年度の予算に反映させ、速やかに実行に移してまいります。
加えて、プランでは、2020年の先、「Beyond2020」におけます東京の明るい未来像も大胆に描いていきたいと思います。2020年以降の少子高齢化の急速な進行や人口減少などの不安材料はございますが、そうした困難にしっかりとした準備を行って、将来の夢溢れる東京の姿を、分かりやすく具体的に示していく。そのことが、これまでの延長線を超えた政策の立案、それらの推進力となる都民の皆様方の共感を呼ぶことに繋がっていくことでありましょう。民間の研究機関が発表した今年の世界の都市ランキングでは、東京はパリを抜いて初めて3位となりましたが、ここで常にトップに君臨する、世界中の憧れの都市を目指すというのも、分かりやすい目標でありましょう。都民の皆様の「よし、一緒に東京を良くしていこう」という掛け声をたくさんいただきながら、明るい未来に向けて、力強く歩んでまいります。

(オリンピック・パラリンピックを成功へ導く)

プランにおいて「新しい東京」に向けた具体的な道筋を明らかにする一方で、目前の課題にもしっかりと対応してまいります。何よりもまずは、東京2020大会を成功に導くための取組であります。
大会を成功させ、2020年以降の東京・日本の成長に繋げていくための最も重要な基盤は、都民・国民の皆様方の納得であります。それを得るために、特に整備費用が高騰しております3つの競技会場について、ラストチャンスとなる見直しを、熟慮に熟慮を重ねて進めてまいりました。オリンピック・パラリンピックの持続可能性を謳うIOCの「アジェンダ2020」が東京大会で初めて適用されることを踏まえまして、整備費用はもとより、ライフサイクルコストや大会後の活用見込み等も含めまして、総合的に検討をしてきたところでございます。そして、一昨日、フルオープンで行いましたIOC、組織委員会、国との4者協議におきまして、次のことを確認いたしました。
まず、ボート、カヌー・スプリントにつきましては、事前合宿地として宮城県長沼ボート場を活用することが合意され、会場は、経費縮減を図りつつ海の森に整備することといたしました。水泳会場につきましては、アクアティクスセンターを新たに整備をいたしますが、座席数を2万席から1万5千席へと縮減するなど、整備費用の圧縮を図ることといたしております。バレーボール会場については、横浜での開催におけます課題などを整理する一方で、有明での会場整備については様々な観点からのさらなる精査を行って、クリスマスまでの間に総合的な判断によります最終結論を出したいと考えております。
また、大会の総経費につきましては、2兆円を上限に圧縮を図っていく旨が報告されましたが、今後とも4者が連携をしながら、さらなる経費縮減に向けまして、計画・予算管理・執行の各段階においてガバナンスを強化してまいります。
「復興五輪」の理念の実現に向けましては、一部種目を被災地で実施するほか、事前合宿の誘致を促して、オリンピック・パラリンピックフラッグツアーも、先月訪問いたしました福島に加えて岩手、宮城、熊本で実施をしてまいります。被災地の元気な姿を世界に発信できるよう、引き続き復興を後押しをしてまいります。
「復興五輪」に加えて、「もったいない」「アスリートファースト」の理念に都民・国民の皆様方の共感を呼びながら、全てのアスリートがその力と技を最大限発揮できて、皆様に長く愛されるレガシーを遺すための投資をしっかり行い、大会を成功に導いてまいります。そして、この平和の祭典が未来永劫続いていくためのモデルを示していきたいと考えております。

(市場の移転問題を前へ進める)

もう一つ、前へ進めなければならない課題が、市場の移転問題であります。豊洲市場のいわゆる地下空間問題につきましては、先月、第二次自己検証報告書を公表して、当時の市場担当者の責任を明確にいたしました。その上で、一部盛土を行わないという対応を、必要な手続きを踏まずに進めてきたことなどに対して、職責等に応じた処分を行ったところでございます。私も本件に関する「けじめ」をつける意味で、知事給与のさらなる減額を行いたいと考えております。議会への誤った説明を行ってきたその問題も含めまして厳正な処分を実施したことの一つの区切りといたしまして、引き続き市場のあり方について、都民の食の安全の確保を最優先として、的確かつ冷静な議論と判断を行ってまいります。
移転につきましては、安全性の科学的な検証と環境アセスメントの審議が終了いたしました段階で、新市場の持続可能性なども含みます総合的な観点から判断をいたします。その上で、移転に向けた環境が整う時期は、再アセスメントの必要性の有無にもよりますけれども、早くて1年後の冬と見通しております。市場関係者の皆様におかれましては、豊洲への設備投資など具体的な負担が発生している方も多いわけで、大変ご心配をおかけしていることは、都政の責任者といたしまして真摯に受け止めているところでございます。しかしながら、一連の手続きは、食の安全の確保と、皆様が安心して事業を続けられる環境の実現のため、着実に踏むべきステップであると考えておりまして、何卒ご理解をいただきたいと存じております。
喫緊の課題でございます関係者の皆様への補償につきましては、弁護士等の皆様からなる検討委員会によりまして、今月の下旬から年明けにかけまして客観的かつ公正なスキームを策定をいたします。補償開始までは、利子や保証料を都が全額負担するつなぎ融資を実施するなど、誠心誠意、不安の軽減に努めてまいります。

(改革の先に信頼を取り戻す)

市場の移転問題を解決する。東京2020年大会を成功させる。そして、「新しい東京」への一つひとつの政策を花開かせる。これらは全て、都民の皆様のご理解を得なければ実現できないものばかりでございます。その基盤となる信頼を取り戻すため、都政改革に着実に取り組んでまいります。
改革を進めるための一番のツールは、情報公開の徹底でございます。情報公開は信頼回復への一丁目一番地であることはもとより、これを進めて官民の知恵を結集させていきますと、幅広い課題にスピーディーに取り組むことができ、都政への期待を高めることにも繋がってまいります。来年度予算案の編成におきましては、都議会の皆様、各種団体の皆様などからご意見やご要望をオープンな場で伺うことで、都民の声を最大限反映させ、都政の「見える化」を推し進めることといたします。そして、これまでの政党復活予算の仕組みにつきましては終了とさせていただきます。先月には、業務の適正の保持のため、弁護士を窓口に都民の皆様からも通報を受け付ける、新たな公益通報制度も開始したところであります。
加えまして、各局では、自律的に進める改革の項目をすでに300以上挙げて、若手職員の意見を施策の形成や業務改善に反映させる仕組みなど、前向きな検討を行っております。その状況につきましては順次公表するとともに、今後は、政策や事業の見直しに向けました自主点検など、一段高い取組も進めてまいりたいと思います。職員の意見が直接私に届く職員目安箱にも、職務の改善案等が数多く寄せられております。引き続き、全庁的に改革マインドを醸成しながら、情報公開と自律改革を進めていくことによりまして、一歩ずつ都民の皆様からの信頼を回復し、都民と共に進める都政を実現をしてまいりたいと考えております。

2 東京2020大会は「新しい東京」づくりのチャンス

(大会へ向けて東京の進化を加速)

東京2020大会は、成熟社会の典型である東京を大きく変えるチャンスであります。大会へ向けて「新しい東京」づくりを加速させる取組について、その一端を申し述べさせていただきます。

〈安全・安心のさらなる推進〉

大会の成功、そして、その先の持続可能な東京の大前提となるのは、安全・安心の確保であります。特に、東京が直面する最大の脅威であります首都直下型地震に対しては、万全の対策を講じていかなければなりません。甚大な被害が想定される木造住宅密集地域においては、建物の不燃化に加えて、延焼の遮断や避難・救援活動に大きな役割を果たす特定整備路線の整備を強力に進めてまいります。
また、日本の象徴である桜とほぼ同数、全国に3500万本もあるという電柱。これもまた日本の象徴なのかもしれませんが、私は、東京の電柱をゼロにしたい。そのことを目指そうと思っております。震災時には倒壊して救援・復旧活動を停滞させかねないほか、景観を損ねます。ベビーカーや車椅子の通行にも厄介なものであります。「無電柱こそ、日本の新たな常識へ」。今後、国の動きも踏まえまして、無電柱化を推進する条例案を検討してまいりたいと思っております。
先月、福岡市の地下鉄工事現場におきまして、大規模な道路陥没が発生いたしました。工事に起因する事故とされておりますが、インフラ維持管理の重要性につきましても改めて痛感させられたものであります。道路、水道、下水道、病院、都営住宅等、都が所有する施設の管理につきましては、全庁的に的確に対応していくことが不可欠であります。東京の活力を支える重要な基盤につきまして、引き続き総合的かつ計画的な維持管理を進めて、都市の安全・安心を確実に確保してまいります。
こうしたハードの取組に加えまして、乳児を抱える方々にとって安全・安心の一つの支えとなるのが、災害時にお湯がなくても飲める乳児用の液体ミルクであります。かねてより普及を主張してまいりましたが、ようやく国において、国内での製造販売解禁に向けました検討も進み始めております。都としても、国の検討状況を注視しつつ、普及に向けた課題を整理して、きめ細かな災害対策に繋げていきたいと考えております。

〈優しさ溢れる東京の実現〉

多様性を尊重するオリンピック・パラリンピックのホストシティとして、あらゆる違いを超えて誰もが快適に過ごせる優しさ溢れる都市へと、東京をさらに進化させてまいります。道路のバリアフリー化は、東京
2020大会までに競技会場や主な観光施設の周辺について整備するとともに、2024年度までに駅と生活関連施設を結ぶ一定の都道について進めてまいります。加えて、大会の運営におけます、ハード・ソフト両面のバリアフリー基準「Tokyo2020アクセシビリティ・ガイドライン」、この知見をまちづくりにも活かしまして、高齢者や障がい者に優しいユニバーサルデザイン、隅々まで広げていきたいと考えております。
併せまして、心のバリアフリーも進めてまいります。社会全体で障がいのある方々への理解を深め、差別をなくす取組を一層推進するための条例案につきまして、検討を開始いたします。障がいのある方々の意見を十分にお聞きをしながら、相談、紛争解決の仕組みの整備、意思疎通のための配慮等に取り組みまして、障がい者の社会参加を後押しをしたいと思います。そして、誰もが存分に自らの能力を発揮できる、「希望」ある東京へと導いてまいります。
優しさ溢れる東京の一つのメルクマールとなる動物の殺処分ゼロに向けましては、11月を「動物譲渡促進月間」と位置づけまして、PRのためのイベント開催、映像放映を通じまして、保護した犬や猫の新しい飼い主を探す取組も強化いたしました。引き続き知恵を絞って、2020年までの殺処分ゼロを目指して着実に進んで、歩んでまいりたいと思います。

〈新たなスポーツ推進計画の策定〉

リオデジャネイロオリンピック・パラリンピックにおきまして、私たちは世界中のアスリートからたくさんの感動をいただきました。その躍動する姿に憧れて、「私もスポーツをやりたい」という思いに駆られた方々も多いのではないでしょうか。スポーツは、個人の健康増進のみならず、地域振興、大きな経済効果、異なる価値観を超えた繋がりをもたらすなど、多くの効用を持ちます。2019年ラグビーワールドカップや東京2020大会を控えまして、こうした新しい視点も踏まえた今後のスポーツ振興の方向性を明らかにするため、新たな「スポーツ推進計画」を策定いたします。若者もシニアも、また、障がいのある方もない方も、都民の誰もがスポーツに親しみ、いきいきと生活する。そして、そこから生まれる一人ひとりの活力が、東京をもっと輝かせる。そうしたスポーツ都市の実現に向けまして、アスリートや有識者のご意見も伺いながら、来年度を目途に取りまとめてまいります。

〈東京・日本の文化の魅力向上〉

文化の祭典でもある東京2020大会に向け、伝統芸能から、キラーコンテンツであるアニメ・漫画まで、東京・日本の文化の魅力をさらに高めてまいります。先般、日本橋で、「東京2020文化オリンピアード」のキックオフイベントを開催をいたしました。この地が全国に広がる五街道の起点であるように、まさに東京が世界への文化発信の起点となっていく。そのためにも、民間など様々な主体を巻き込みながら、4年間で多彩な文化プログラムを展開し、世界中に日本のファンを増やしたいと思います。
先月は、このプログラムの一つであり、東北六県の祭りが一堂に集まりました「東北六魂祭パレード」の出発式に出席をしてまいりました。鎮魂・復興への思いと、支援への感謝の気持ちが込められた力強い歩みが、約2万人の観客を魅了をいたしました。文化プログラムを通じまして、オールジャパンの魅力を発信していく中で、被災地の元気な姿や「復興五輪」の理念も世界に届けてまいりたいと存じます。

〈スモークフリーの実現に向けて〉

IOCが提唱するスモークフリーへの取組は、もはや世界的な潮流でもございます。都はこれまで、受動喫煙防止に向けて、喫煙の健康影響に関する普及啓発、外国人旅行者受入れに向けて分煙に取り組む宿泊・飲食施設への支援等を行ってまいりました。国は、飲食店等を原則禁煙とする罰則付きの検討案を公表するなど、法制化を目指した動きを進めているところであります。こうした動きも十分に見極めながら、都としてのさらなる対応を検討してまいりたいと思います。

3 「Beyond2020」においても成長を続ける東京へ

東京は今、大きな転換点に立っております。人口減少社会の到来や、高齢化の益々の進行。特に、高度経済成長を機に日本中から大勢の若者が東京に集まって、若い力に溢れる街となった反面、そうした世代が高齢者の仲間入りをしていく2020年以降、急速なスピードで高齢化が進行することが予測されているわけであります。その中で成長を続けていく都市を創るため、いま何をすべきなのか。そうした視点からの取組を展開をしてまいります。

(東京のソフトパワーを最大限に引き出す)

私は、東京の可能性は都民の皆様、都民の中に眠っていると思います。東京でいきいきと暮らせる。存分に力を発揮できる。夢を実現できる。一人ひとりの「希望」の先に、明るい未来は拓けると私は信じております。

〈女性が輝く社会の実現〉

そのためにも、ダイバーシティ、すなわち、年齢、性別、障がいの有無などにかかわらず、全ての都民がいきいきと活躍できる社会を実現していかなければなりません。とりわけ、女性の活躍を推し進めることは日本全体の喫緊の課題であります。しかしながら、世界各国の男女格差を比較するワールド・エコノミック・フォーラムの今年の調査では、日本は144か国中111位と、昨年よりも順位を落とす結果となっております。女性の参画に向けて、日本は努力をしているものの、それ以上に他の国々が熱心に取り組んでいるということの現れでありまして、このままでは日本が世界から取り残されかねません。東京が、日本の女性活躍を進めるエンジンとなって、強力に取組を進めてまいります。
まずは今月、女性が輝く社会を築くためのアイデアを、私と都民の皆様方が対話をしながら一緒に考えるイベントを開催いたします。そして、来月には、様々な分野におけます先進的な取組を「女性活躍推進大賞」といたしまして表彰して広く発信をするなど、都民一人ひとりの意識改革に繋げてまいりたいと考えております。また、女性活躍に向けて取りまとめた白書や、都の男女平等参画審議会の議論を踏まえまして、今年度中に「女性活躍推進計画」を新たに策定をいたします。行政や事業者が進めるべき取組を明らかにすることで、掛け声だけで終わらせない生きた女性政策を展開してまいります。

〈待機児童ゼロを目指す〉

「待機児童ゼロ」を目指した努力も続けなければなりません。先の定例会で都議会の皆様に可決いただいた補正予算による緊急対策も、早速、効果が現れております。保育施設整備のための都有地貸付につきまして、制度を拡充し、区市町村を介して事業者に貸し付ける方式を追加いたしましたところ、第一号となる案件が台東区で決まりました。今後も、庁内横断的に利用可能な都有地を集め、相談窓口として設置した「とうきょう保育ほうれんそう」による情報提供も進めながら、こうした事例を増やしていきたいと思います。また、先月開催した区市町村との待機児童解消緊急対策会議には、私も出席をいたしまして、保育士の待遇改善策をはじめ対策を進めていくための要望等について、現場の声を直接伺ったところであります。今後も、こうした会議を定期的に続けて、都と区市町村が問題意識や目標を共有し、一体となって待機児童対策に臨むようにしたいと考えております。また、現場の声も踏まえまして、さらなる取組を来年度予算案に反映させ、「もっと良く効く」待機児童対策を展開してまいります。
10月には、待機児童解消や介護など幅広い分野において、国家戦略特区の取組を国と連携して強力に進めるため、都庁内に「東京特区推進共同事務局」を立ち上げました。その具体策として、今後、介護サービスの充実や介護職員の待遇改善にも繋がります「混合介護」の弾力化や、介護離職をなくすために、中小企業の負担軽減にも配慮しつつ、将来を見据えた介護休業・介護休暇のあり方について検討を進めてまいります。待機児童解消につきましても、規制改革の面から新たな取組が進められるよう、この事務局をフルに活用してまいります。

〈「働き方改革」こそ東京の活力を高める鍵〉

東京の活力を高めるため、待機児童ゼロを目指し、女性活躍を推し進める。さらには、満員電車の混雑についても、庁内横断的に取り組むほか、民間事業者等からも知恵を集めて、官民が連携して解決をしていきたいと思います。一方で、こうした現代社会が直面する課題の根っこにあるのは、実は「働き方」そのものにあります。誰もが同じように朝から晩まで長時間オフィスに拘束される働き方は、もはや限界であると感じざるを得ません。短時間勤務や在宅勤務など、多様なワークスタイルが広がって、定着しますと、育児・介護との両立や女性活躍の後押しとなり、究極的には、満員電車も過去の話となる。働き方改革こそ、ダイバーシティ実現の大きな鍵であります。
そうした認識の下、都は率先して、20時完全退庁のルール化によります超勤縮減の取組を開始をいたしました。加えて、新たに設置した「都庁働き方改革推進ミーティング」において、テレワーク、フレックスタイムの導入や、さらなる改革のメニューを検討をしております。一方、民間企業に対しても働き方の見直しに向けた支援を行っておりまして、すでに700社を超える企業が都の支援を活用してそれぞれの取組を進めています。誰もが個々の事情に合わせていきいきと働き、より活力が高まる東京を目指していく。民間企業を巻き込んだムーブメントを先導していきたいと思います。働き方改革も、国の様々な規制を突破しなければ前へ進めることはできません。先ほど申し上げた国との共同事務局を通じまして、国家戦略特区の仕組みを大いに活用してまいります。

〈明るい未来を築くための教育施策〉

続いて、教育施策について申し上げます。全ての子供の可能性を伸ばすことや、時代が求める人材を育成することが、教育の重要な使命であります。先般開催をいたしました総合教育会議では、こうした視点を踏まえました新たな教育施策大綱の骨子をお示しをいたしました。家庭の経済状況等にかかわらず誰もが学べる環境を実現できる都独自の給付型奨学金制度、実践的なコミュニケーション能力を育む外国語教育、ボランティアマインドの醸成、障がいのある子供たちの教育の充実等、教育委員の皆様と自由闊達な意見交換を行ったところでございます。ここでの意見を踏まえまして、さらに議論を深め、来月には新たな大綱を策定してまいります。
また、家庭の貧困やいじめ、不登校・中途退学など、子供を巡る状況が複雑化・多様化する中で、学びを支える「教師力」「学校力」の強化も必要であります。教員の指導力を高めることはもとより、専門人材や地域社会と連携・協働し、教育の質を向上させていきたいと思います。

(国際競争力を高め、東京からTOKYOへ)

さて、来月アメリカでは、トランプ新政権が誕生いたします。イギリスのメイ首相も、トランプ氏も、それぞれ法人税の大幅な軽減を打ち出しておりまして、国際的な都市間競争のさらなる激化が想定されます中、持続的な成長を手にするには、確固たる戦略が必要であります。危機感を持って、東京を、世界の都市間競争を勝ち抜く最先端都市、スマート シティへと生まれ変わらせなければなりません。

〈国際金融都市・TOKYO〉

その肝となるのは、東京の地位を再びアジアナンバーワンの国際金融都市へと高めることであります。国との共同事務局を梃子にして、特区制度等をフル活用することをはじめとして、政府とも連携しつつ聖域なき構造改革や規制緩和を実現することで、内外の資産運用業者やフィンテック企業、そこで働く高度な人材を東京に集積させる。それによって東京・日本の国際競争力を高め、政府の成長戦略にも貢献してまいりたいと考えます。先月には、金融活性化に向けた本質的な課題に取り組むべく、内外の金融の専門家や企業経営者等からなる懇談会と、実務担当者等からなる検討会を新たに立ち上げました。それらの会議体の提言を参考にしつつ、国や民間とも連携しまして、時代遅れの業界慣行、規制、税制等の見直しによって、企業誘致や外国人の生活環境改善等を実現すべく、都として鋭意検討を進めてまいります。

〈環境先進都市として世界をリード〉

環境分野においても、世界と切磋琢磨してまいりたいと考えております。
先日、私は、世界の80以上の都市が連携をしまして気候変動対策に取り組むC40において、その意思決定機関となる運営委員会の委員に選出されました。大規模なオフィスビル等にCO2の削減を義務付ける、5年間で約1400万トンの削減を達成した都市型キャップアンドトレード制度など、都がこれまで培ってきたノウハウを活かして、世界の気候変動対策をリードしてまいります。
先週には、新たな試みとして、都有施設のLED化など都の環境事業への投資の受け皿となります「東京環境サポーター債」の売出を開始したところ、初日に完売をいたしました。来年度には、このノウハウを、日本が国際的に遅れていると言われるグリーンボンドの発行に繋げて、環境投資の面でも世界に伍していきたいと考えております。そして、都民が投資を通じて都の環境政策に参加する気運を醸成して、再生可能エネルギーやLED照明の普及、ヒートアイランド対策、食品ロスの削減等、世界に冠たる環境先進都市に向けました政策を大きく前へ進めていくための呼び水としていきたいと考えております。

〈中小企業のチャレンジを後押し〉

中小企業の海外展開も積極的に後押しをしていきたいと考えております。都はこれまでも、海外販路の開拓支援や、ASEAN地域におけます現地情報の提供、経営・技術の相談等を行ってまいりました。一方で、スマートフォンを巡るグローバル企業同士の特許侵害訴訟の事例が示しますように、海外展開に当たりましては、特許・商標の取得、模倣対策等、知的財産に関する戦略の重要性は益々高まっております。そこで、ニーズに合った新たな支援も検討しながら、海外へのビジネス拡大を狙う中小企業のチャレンジを強力にサポートしてまいります。

〈東京発・イノベーションを生み出す〉

IoT、AI、これらに代表される新たな技術が持つ可能性を引き出し、さらなる成長へと繋げていくことも必要であります。
医療機器産業の分野では、日本橋に開設した「東京都医工連携イノベーションセンター」を拠点に、ものづくり中小企業と臨床機関・医療機器メーカー等との連携を進めております。先般視察いたしました「産業交流展」では、中小企業の優れた技術を、世界に見据えた独創的かつ革新的なビジネスに結びつける土壌が着実に整いつつあると感じたところであります。競技用の車椅子にも試乗いたしましたが、こうした分野で世界に誇る製品を開発していくことは、2020年に向けたパラスポーツ発展の後押しとなり、かつ、その後の超高齢社会におけます成長戦略の一つとなることでありましょう。
また、既存の枠組みやルールに囚われない発想で、新たな価値を提案する起業家を数多く輩出することも大切であります。来月には、創業希望者が気軽に利用でき、ワンストップでの支援を受けられる拠点を丸の内に開設をいたします。国際金融センターを目指します大手町から兜町の地区、ライフサイエンスの拠点化が進みます日本橋、そして、中小企業のオンリーワンの技術力。こうした強みに起業家の発想力をプラスをしながら、東京からイノベーションを次々と生み出して、日本全体の成長を牽引してまいりたいと考えております。

〈東京ブランドを磨き上げ、インバウンドを増やす〉

もう一つ、成長戦略の重要なキーワードが、東京のブランディングでございます。東京のブランドを国内外に効果的にPRするには、じゃあどうすればいいのか。これまでの取組を検証しまして、そのあり方について議論を始めております。また、伝統的な産品や匠の技を護りながら、これらを新しい切り口で活性化をしていく。東京ブランドとして育てて発信していく。そのために、今月、フランスのコルベール委員会を参考といたしました新たな会議を立ち上げます。各界の有識者と共に、東京の魅力を発信する方策を検討してまいります。
多摩・島しょ地域にも、東京ブランドの種がたくさんございます。先月、フラッグツアーのイベントに合わせて訪問いたしました三宅村、御蔵島村では、バイクレースやイルカウォッチングといった際立つ特徴が、観光地として大きな魅力となっておりました。10月に訪れた小笠原村、奥多摩町、檜原村も同様です。それぞれが持つ個性こそが強みであり、ブランドとなり得る魅力なのであります。今後も精力的に多摩・島しょ地域を訪れまして、さながら宝探しのように各地の「個性」を見出して、磨き上げていきたいと考えております。
インバウンドの増加に向けては、国際会議などMICEの誘致も効果的であります。国際的な誘致競争が激化する中で、海外プロモーションを強化するとともに、特別感を演出できるレセプション会場である、いわゆる「ユニークベニュー」として都立の美術館や庭園等を活用していくなど、都内でのMICE開催の増加を図ってまいります。
そして、これらの取組を観光振興にしっかりと繋げるため、有識者の優れた提言もいただきながら、新たな施策を体系的に盛り込む「東京都観光産業振興実行プラン2017(仮称)」の策定を進めているところであります。近々、中間のまとめを明らかにいたしまして、都民の皆様のご意見等も反映させた上で、年度内に公表していく運びとなっております。

4 おわりに

さて、「現状維持は衰退である」という言葉、多くの方々に語られています。我が国は、長きにわたって「現状維持」に安住し続けてきたのではないでしょうか。「現状維持」はその時には快適ではあります。しかし、それは社会、経済、そして政治の後退をもたらすのみであります。
多くの都民の皆様方から「改革を進めよ」との声をいただきますのは、「現状維持」では立ち行かなくなる、「このまま」では衰退や後退でしかないと肌で感じておられるからでありましょう。
議会におかれましても、様々な改革へのご議論が始まろうとしていると私は聞いております。2020年とその先の明るい東京の未来に向かって、改革を進める意欲溢れる皆様と共に歩んでまいりたいと思います。

なお、本定例会、これまで申し上げたものを含めまして、条例案10件、契約案14件など、合わせまして33件の議案を提案をいたしております。どうぞよろしくご審議のほど、お願いを申し上げます。

「東京大改革」。改めまして、その決意を申し上げまして、私の所信表明を終わります。
ご清聴、誠にありがとうございました。

 

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