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平成30年(2018年)6月12日更新

平成30年第二回都議会定例会知事所信表明

平成30年第二回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対しましての所信の一端を述べさせていただきます。

1 はじめに

東京を進化させた先人たちのレガシー

本年は江戸が東京へと変わり、ちょうど150年。その歴史の中で、東京が都市として進化する大きな契機となったのは、東京市第7代市長も務めた後藤新平による、関東大震災後の帝都復興事業であります。当時の国家予算の2倍以上となる30億円の規模で構想されたこの事業は、最終的に大幅に縮小されたものの、昭和通り、靖国通りといった主要幹線道路や、近代的な橋梁など、今日の東京の骨格を形づくりました。我が国初の本格的なリバーサイドパークと呼ばれる隅田公園など、都民の憩いの場であり、災害時には避難場所や活動拠点となる公園も、この事業により数多く新設されました。
戦後復興の象徴とされた1964年のオリンピック・パラリンピックも同じく、東京の進化を牽引いたしました。この機に建設された東海道新幹線や首都高速道路は、高度経済成長を加速させ、今なお、首都の活力を支える交通・物流ネットワークとして重要な役割を果たしております。また、ハードのインフラ整備に加え、言葉の壁を越えて誰もが理解でき、街の至るところで案内サインとして使われているピクトグラムの誕生、廃棄物収集の改善・効率化等による街の美化、選手村への食材提供手段となった冷凍食品の技術開発の進展など、1964年の大会は、今日の成熟社会の礎を築くものでありました。

新たな進化に向けた戦略的な取組

東京はこれまで、先人たちが築いたこうした貴重なレガシーの下、明るい未来に向かって「人」が躍動することで、世界有数の先進都市へと発展してまいりました。引き続き東京が飛躍し、全国との共存共栄も果たしていくためには、成熟都市として新たな進化を遂げ、人口減少の中にあっても成長を生み続ける社会を実現しなければなりません。
その鍵は、東京2020大会を推進力として、多様な生き方が尊重され、東京に暮らす誰もがいきいきと輝ける環境を築くことであります。例えば、「人生100年時代」を迎えようとする中、高齢の方々がそれぞれの希望や意欲に応じて、就労や学びなどの社会参加を続ける支援を行う。あるいは、道路や公共交通といったハード面はもとより、相互理解の促進や情報バリアの解消等、ソフト面においてもバリアフリー化を推し進め、あらゆる都民の活力を引き出していく。こうした取組が、2020年以降の東京の成長を生み出していくことに繋がります。
また、益々激化する都市間競争を勝ち抜く強みを伸ばすことも、さらなる発展のための重要な要素であります。アジア・ナンバーワンの国際金融都市の実現や、特区制度の活用による革新的事業の後押しなど、成長分野に果敢に挑戦していかねばなりません。
そうした政策を迅速かつ着実に推し進めるため、今般、これらを含む全庁的な8つのテーマを戦略的政策課題と位置づけ、局横断的な連携の下、スピード感を持って取り組む体制を構築をいたしました。その先頭に立つ私自身も、「セーフ シティ」「ダイバーシティ」「スマート シティ」を目指す取組を一層推進すべく、自らの目で積極的に現場を把握し、より多くの都民の声に耳を傾けてまいります。都政の最前線における肌感覚を重視しながら、「2020年に向けた実行プラン」に掲げる施策を加速し、3つのシティを実現する成果を確実に上げることで、東京のさらなる進化へと繋げていきたいと思います。

2 受動喫煙から「人」を守る

そして同じく、東京の新たな進化のための重要な課題が、本定例会に条例案を提案した受動喫煙防止対策であります。屋内での受動喫煙による健康影響を防止することを目的に、法案との整合を図りつつ取りまとめた「受動喫煙防止条例」には、自ら受動喫煙を防ぐことが難しい従業員や、健康影響を受けやすい子供を守るため、「人」に着目した都独自のルールを盛り込みました。まさに、「健康ファースト」の政策であります。
具体的には、従業員を使用する飲食店については、来店客はもとより従業員も等しく守る観点から、店舗面積にかかわらず原則屋内禁煙とし、喫煙は専用室内でのみ可能といたします。また、子供を守るため、幼稚園や保育所、小・中・高等学校につきましては敷地内を禁煙とするとともに、他の施設においても、喫煙室への子供の立入りを禁止をいたします。こうした取組により、規制対象となる飲食店は8割を超えるなど、都民の健康を守るための実効性がより高まるものと考えております。一方で、飲食店の喫煙専用室や、公衆喫煙所の整備に対する支援を充実させ、喫煙者の嗜好や事業者等の負担軽減にも配慮してまいります。
条例の施行は段階的に進め、東京2020大会前には、罰則も含めて全面的に施行いたします。「人」を守るとの強い信念の下、区市町村と連携をいたしまして、関係団体等のご理解とご協力をいただきながら、オリンピック・パラリンピックのホストシティとしてふさわしい対策を進めてまいります。そして、たばこを吸う人も吸わない人も、誰もが快適に過ごすことのできる社会を、東京がさらなる進化を遂げた一つの姿として、未来へと受け渡していきたいと存じます。

3 「東京を標的とした税制度の見直し」を許さない

人口減少期におきましても我が国の成長を目指し、そのエンジンとして東京が果敢に取組を進めようとする中、国は地方間の税収格差を是正すべきと主張し、東京の財源をさらに奪うための検討を始めております。しかし、国が主張する「税収格差」は、地方交付税によってすでに調整をされており、国が検討を進める「地方法人課税の偏在是正」も、過去の税制改正において決着済みであります。国はこれまでも、幾度となく「東京を標的とした税制度の見直し」を繰り返し、都から累計6兆円もの財源を不合理に収奪してきましたが、このたびの国の動きもまた、全く根拠を欠くものと言わざるを得ません。
何度も申し上げておりますとおり、日本全体の発展のために真に目指すべきは、地方分権の理念の下、地方の役割に見合った税財源の拡充を図ることであります。そうした本質論から目を背け、目先の対応に終始する国の姿勢は、断じて容認できません。今必要なことは、これまで繰り返されてきた対症療法的な動きではなく、「真の地方分権を見据えた地方税財源のあり方」について、大局観を持って臨むことであります。このたび新たに立ち上げる検討会では、都議会の皆様や区市町村、有識者の方々と、本質的な議論を深めてまいりたいと思います。
併せて、東京都税制調査会に対しても、「真の地方自治を確立する税制全体のあり方」などについて、先月、諮問をいたしました。東京と日本の成長に向けた議論を踏まえ、都民の皆様や他の道府県にも理解を広げながら、不合理な税制度の見直しに強く反論してまいります。

4 豊洲市場の開場と築地のまちづくり

次に、市場の豊洲移転について申し上げます。今後、長きにわたり都民の台所を担う豊洲市場の安全性につきましては、万全を期すための追加対策工事を着実に進めております。来月には工事が完了する予定でありまして、その後の専門家会議による確認や大臣への認可申請など、都民の皆様、市場業者の皆様に安心を実感していただくべく、ステップを重ねてまいります。
豊洲市場の賑わいを創り出す千客万来施設につきましては、事業者との真摯な協議を尽くしまして、「東京2020大会後の速やかな着工」との提案をいただきました。今後、地元・江東区の理解も頂戴した上で、事業者との最終的な合意を図りたいと存じます。併せて、都として取り組む賑わい創出につきましては、新たな豊洲ブランドの確立や、人々を惹きつける魅力発信等に繋げていく観点から、関係局の連携の下で知恵を絞って取り組んでまいります。
築地再開発に向けては、先月、有識者によります「築地再開発検討会議」において、まちづくりの大きな視点を取りまとめていただきました。貴重な提言を踏まえて、立地に恵まれた都民の財産である築地の価値を最大に高めていくことは、都の使命であります。今般、庁内の検討会を立ち上げまして、全庁に横串を刺すとともに、学識経験者の知見もいただきながら、行政としてのまちづくりの方針を検討をしてまいります。
市場移転から約2か月後に開通予定としていた環状第2号線の暫定迂回道路につきましては、市場業者や地元区の声を踏まえまして工期短縮を検討し、業者の皆様のご協力もいただくことで、移転後1か月以内に開通できる見通しとなりました。その後、2019年度末に地上部道路、2022年度に本線トンネルを開通させて、臨海部と都心部を結ぶ新たな道路ネットワークを形成するとともに、円滑な地域交通を確保してまいります。

5 手を緩めることなく改革へ邁進

「2020改革」の自律性と実効性を高める

続いて、都政改革についてであります。昨年度末、「2020改革プラン」がまとまり、改革は本格的な実践段階へと入りました。これを機に、各副知事をトップとして、各局の改革の進捗管理を行う推進部会を設置するなど、職員がこれまで培った改革マインドを活かし、自律的な取組を不断に進める体制を整備したところでございます。推進部会や都政改革本部において改革の状況を検証し、各局がさらなる取組を進めるPDCAサイクルの下、「2020改革」の実効性を確実に高めてまいります。
このサイクルを着実に運用するには、幅広い観点から意見や助言を取り入れることも効果的であります。そこでこのたび、働き方改革等に実績のある経営者や、行政改革、法律等の各分野の専門家による「都政改革アドバイザリー会議」を新たに設置をいたしまして、客観的な助言を求めることといたしました。改革のバージョンアップなど全般的な課題から、柔軟な働き方の推進といった個別の取組まで、幅広く意見をいただきながら、手を緩めることなく都政改革に邁進する決意でございます。
なお、昨年度、「見える化改革」におきまして客観的な分析を行いました工業用水道事業につきましては、料金収入が減少する中で、今後も需要増加は見込めず、老朽施設の更新にも多大な費用を要することから、そのあり方を検討してまいりました。先週、有識者委員会から廃止の提言がなされたことも踏まえまして、長年の懸案とされてきた本事業については、廃止に向けた動きを進めることといたします。利用者の皆様に対しましては、その声を十分に聴きながらきめ細かく対応をしてまいります。これまで先送りとされてきました様々な課題に挑戦することこそ、東京大改革の本旨でございます。

監理団体のあるべき経営に向けて

都庁グループの一員として、経営基盤強化のための改革に取り組む監理団体につきましては、昨日、全33団体の「経営改革プラン」を公表いたしました。各団体が、2020年に向けた自らの経営課題を明確にし、外部の視点も反映して、その解決のための戦略と経営目標を設定したものであります。都と共に政策実現を担う団体にふさわしい内容となるよう、プラン公表前には私自らも、全ての団体のトップと現状や課題を議論をいたしました。今後、プランに基づく取組について、都が毎年度、外部有識者の意見も踏まえて評価を行うなど、各団体の自律的な経営改革や、経営情報のさらなる見える化を促進してまいります。

入札契約制度改革の本格実施

昨年6月より試行を進めてきました入札契約制度改革でございますが、応札者数の増加など、入札の競争性・透明性を高める上での成果が現れました。今般、その成果を活かしつつ、中小企業への配慮等の観点から制度を一部改善し、改革を本格実施をいたします。今後とも、制度を取り巻く状況を常に見極めながら、競争性の確保と、公正かつ透明な運用を徹底してまいります。

6 ラグビーワールドカップ・東京2020大会の成功に万全を期す

歴史的な舞台であるラグビーワールドカップ2019

さて、明後日、平昌大会に続く世界的なスポーツイベント、サッカーワールドカップ・ロシア大会が開幕いたします。世界の強豪に挑む日本代表の健闘を、大いに期待をしたいと存じます。
そしてサッカーの次は、いよいよラグビーであります。先月の大型連休中に開催した、ラグビーワールドカップ2019の大会500日前イベントにおきましては、開幕までのデイカウンターを披露し、刻一刻と大会が近づいていることを改めて実感をいたしました。公認チームキャンプ地が内定し、今月には日本代表のテストマッチが3試合行われるなど、アジアで初となる歴史的な舞台に向け、選手の準備も本格化いたします。全国11の開催都市とも十分に連携し、大会を成功へと導いてまいります。

都民・国民と共に東京2020大会の準備に邁進

続く東京2020大会につきましては、先月、IOC理事会において、オリンピックのサッカー会場が全国7か所に決まり、全ての競技会場が決定をいたしました。組織委員会、国、被災地を含む会場所在地の自治体と力を合わせ、オールジャパンの大会を必ずや成功させてまいります。
その大前提となる安全・安心の確保に向けては、3月、大会運営を脅かす事案への「対処要領」を策定をいたしました。治安対策、サイバーセキュリティ、災害対策、感染症対策の4つの視点から、取組の充実・強化と新たな展開を図りまして、その検証と見直しを継続的に行ってまいります。サイバーセキュリティにつきましては、4月に警視庁の関連部署を集約し、対応力の強化を図りました。民間との連携も深化させながら、総力を結集し、見えない脅威にも的確に対処してまいります。
昨日、組織委員会と共に、大会ボランティア・都市ボランティアの募集要項を公表いたしました。この夏には、実施期間を拡大する時差ビズの展開や、テレワークの普及促進などと一体的に、交通需要の抑制に向けた企業の協力を呼びかけます。都民・国民の皆様と心を一つにして、世界が称賛する大会の実現を目指し、準備に邁進してまいります。
復興オリンピック・パラリンピックに向けては、新たな取組として、9月に海外メディアを対象とした被災地への取材ツアーを実施をいたしまして、被災地の今について、世界への発信を強化してまいります。大会に向けて被災地への関心を一層高め、復興をさらに後押しをしてまいりたいと思います。

大会に向けた一体感をさらに高める

今年もまた、オリンピックの開会日である7月24日が迫ってまいりました。この日から9月6日までの大会期間を、都民・国民の皆様に心に刻んでいただくとともに、スポーツ実施率の向上と健康増進に繋げるため、昨年に引き続き、この期間を通じて「みんなでラジオ体操プロジェクト」を重点的に展開をいたします。先日、都庁舎における小型家電の回収実績が10万個を突破した「みんなのメダルプロジェクト」と併せまして、大会をより身近に感じていただけるよう取り組んでまいります。
聖火リレーもまた、日本中に大会開催を鮮烈に印象づける重要なイベントであります。4月にはそのコンセプトが決まり、都内を巡る日数も15日間と設定されました。大会への一体感をさらに高めるリレールートの選定に向け、区市町村及び関係機関と検討を進めてまいります。
大会成功のため、より焦点を当てるべきパラリンピックに向けましては、大型連休中、全22競技を体験できる「NO LIMITS SPECIAL」を東京駅前にて開催をし、大変な盛況となりました。今後は若者をターゲットととし、パラスポーツを間近で応援する魅力を映像で伝えていくなど、選手と満員の観客が一体となり、最高のパフォーマンスが生まれるパラリンピックとなるように、気運を高め続けてまいります。

7 多様な生き方が尊重され、誰もが輝く東京へ

一人ひとりが自分らしく輝くことのできる東京を実現するため、引き続き「人」に着目した施策を推し進めてまいります。

誰もが尊重され、互いに認め合う社会を築く

都民や事業者が障がい者への理解を深め、障がいを理由に分け隔てられることのない共生社会を実現すべく、本定例会に「障害者への理解促進及び差別解消の推進に関する条例」を提案をいたしました。事業者に対して合理的配慮の提供を義務付けるなど、法よりも一歩踏み込んだ内容としております。併せて、筆談、点字、読み上げなど多様な情報提供の推進や、言語としての手話の普及等に努めまして、障がいのある方々がより暮らしやすい社会を都民と共に築いていきたいと思います。
加えて、誰もが認め合う社会を実現する観点からは、LGBT等の性的マイノリティを理由とする差別や、いわゆるヘイトスピーチなど、新たな人権課題への対応も重要であります。オリンピック憲章には、いかなる差別もあってはならないとする人権尊重の理念が謳われており、都としてこの実現を目指す条例案について、このたび概要をお示しをいたしました。性自認・性的指向等による差別や、本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けまして、必要な取組を定めるものであり、第三回都議会定例会への提案を目指して、都民の意見も踏まえて内容を精査してまいります。
なお、本日、史上初となる米朝首脳会談が開催をされております。核・ミサイルの脅威の払拭など、アジア太平洋地域の平和と安定に繋がる会談となることを期待をするとともに、我が国にとって重大な人権侵害であります北朝鮮による日本人拉致問題につきましては、政府と一体となり、都としてしっかりと声を上げていきたいと思います。

子供を産み育てる喜びを感じられる社会へ

育児に仕事に、女性も男性も輝く社会を築くための待機児童対策につきましては、これまでの取組が着実に実を結びつつあります。例えば、就任直後の緊急対策におきましては、区市町村を介して、保育事業者への都有地を貸し付ける制度を開始いたしましたが、この4月、第一号の案件でありました台東区の施設など4か所が開所いたしました。開設時の備品購入経費を助成している企業主導型の保育施設も、急速な広がりを見せております。
こうした保育施設の整備促進に加え、人材の確保・定着、利用者支援の充実等の対策を積み重ねてきた結果、本年4月1日時点の都内の待機児童数は、昨年に比べまして約3100人減少し、5500人を下回る見込みとなりました。昨年度、都内の認可保育所は約250増加しております。区市町村との十分な連携がこうした成果に繋がったと考えております。引き続き積極的に取組を進めるとともに、働く方々が子供を持ちたいと願う気持ちをよりきめ細かく支えるため、都民からの提案を予算化した事業であります、不妊治療と仕事の両立支援も開始をいたします。仕事をする喜びと、子供を産み育てる喜びを、共に感じられる社会を実現すべく、幅広く施策を展開してまいります。
一方で、先般、両親からの虐待により幼い命が奪われるという事件が発生をいたしました。大変痛ましい事件であり、亡くなられたお子さんのご冥福を心よりお祈りを申し上げます。今回の事件を踏まえまして、児童相談所につきましては、体制の充実や、警視庁との情報共有範囲の拡大等を図ることといたします。私も、明日にでも児童相談所を訪れまして、改めて現場の状況をしっかりと把握をしながら、全庁一丸となって、スピード感を持って、児童相談体制の強化を進めてまいります。

人生を輝かせる子供たちの力を育む

子供たちがグローバル社会の中で自らの可能性を大きく広げ、人生を輝かせる。そうした力を育むため、学校における国際交流を加速してまいります。都内の公立学校がそれぞれ、東京2020大会に参加予定の国や地域について幅広く学ぶ「世界ともだちプロジェクト」におきましては、各国の大使館と連携した取組も始まっております。先日、その一環として、目黒区内の小学校の運動会に、ウィリアム・F・ハガティ駐日米国大使と共に参加をし、児童との交流を深めてまいりました。今後、多彩な活動を通じまして、児童・生徒が世界を身近に感じ、学びを深められるよう取り組んでまいります。
また、先月には、海外との交流に意欲的に取り組む都立学校15校を、新たに「国際交流リーディング校」として認定をいたしました。今後、各リーディング校の取組を広く発信するとともに、学校での交流推進をワンストップで支援する「国際交流コンシェルジュ」を設置するなど、2020年までに、東京の全ての公立学校において多様な国際交流が実現できるように努めてまいります。
都立の農業系高校におきましては、農産物の安全の証であるGAP認証の取得を進めてまいります。高校生が食の安全や環境保全等を学ぶことで、より良い都市農業を担う人材を育成するとともに、認証取得により、各校で生産した農産物を東京2020大会の食材として提供することも目指してまいります。
なお、GAP認証につきましては、4月より、都市農業の特徴を加味した都独自の認証制度の運用も開始いたしました。都内の多くの農業者がこの認証を取得できますよう、きめ細かな支援を行って、安全・安心かつ環境に配慮した、持続可能な東京農業を推進してまいります。

(誰もが輝く基盤となる安全・安心の確保)

地域防災計画(震災編)の修正

都民が輝く社会を築く上で不可欠な安全・安心の確保も、着実に進めてまいります。災害の予防及び応急・復旧対策を定める「地域防災計画」の震災編につきましては、近年、東日本大震災の教訓や、南海トラフ地震等の被害想定を反映させるための修正を行ってまいりました。今般、熊本地震発生などの状況変化や最新の知見等を踏まえまして、対策の実効性を高めるべく、さらなる修正を実施をいたします。誰もが安心して暮らし、活力溢れる東京の実現に向けて、万全の体制を不断に整えてまいります。

安全かつ快適なまちづくりに向けて

都市の防災機能の強化や、安全な歩行空間の確保等を目指す無電柱化につきましては、条例に基づいて、今後10年間の方針や目標を定めた「無電柱化計画」を策定いたしました。都道の重点整備地域を環状第7号線の内側まで拡大するほか、技術開発により整備コストを3分の1削減するなど、無電柱化を加速する取組を盛り込んでおります。今後、都道のみならず、区市町村道における具体の整備箇所を選定するなど、都内全域での取組を促進してまいります。
また、木造住宅密集地域につきましては、引き続き延焼遮断帯の形成等を進めるほか、民間の柔軟なアイデアによります魅力的な移転先の整備によって、不燃化を一層推進をいたします。さらに、災害時などに地域へ深刻な影響を与えかねない空き家の除却等に取り組むほか、老朽化マンションについても、管理組合の機能を強化して適正管理を進めるために、条例化も視野に施策を講じるなど、幅広い観点から安全かつ快適なまちづくりを推し進めてまいります。

乳児用液体ミルクの普及促進

かねて、災害対策におけます有用性を訴えてまいりました乳児用液体ミルクにつきましては、3月、国において規格基準設定のための手続きが始まり、国内流通に向けた大きな一歩が踏み出されました。私も先日、加藤厚生労働大臣と面会をいたしまして、早期普及のための取組を強く要請したところでございます。また、このたび、災害時における海外からの緊急かつ円滑な調達につきましては、民間事業者と協定を締結することに合意をいたしました。常温での保存が可能であり、育児の負担軽減にも繋がる液体ミルクが、都民のさらなる安心に繋がりますよう、今後とも国、関係機関との連携を深めてまいります。

8 都市間競争を勝ち抜く東京の強みを伸ばす

誰もが輝く社会の活力を原動力に、先進的な環境施策の展開や国際金融都市の実現など、激化する都市間競争を勝ち抜く東京の強みを伸ばしてまいります。

(快適で持続可能な都市環境を支える取組)

環境国際会議の成果と今後の環境施策

先月、世界の22都市が一堂に会する中で開催をいたしました環境国際会議では、廃棄物処理、資源循環及び大気汚染対策につきまして各都市と政策や知見を共有しまして、今後のビジョンと取組を「東京宣言」として世界に発信をいたしました。益々高まった東京のプレゼンスを最大限に発揮しながら、東京こそが、環境分野で世界をリードする役割を担っていきたいと存じます。
会議のキーワードとした「Clean City」の実現の鍵は、一人ひとりの行動の積み重ねと広がりであります。今後、ボランティアや企業等と「チームもったいない」を創設し、食品ロス削減やリサイクルの徹底など、個人の環境配慮行動を広く働きかけてまいります。
もう一つのキーワードであります「Clear Sky」に向けましては、都内での乗用車の新車販売について、2030年までに、電気自動車や燃料電池自動車等の割合を5割とすることを宣言をいたしました。これに先立って、日本自動車工業会会長と面会をして、電動バイクを含むゼロエミッション・ビークルについて、技術開発や販売促進等の協力を要望をいたしたところでございます。夏には、八丈島と新島において、メーカーの協力を得て電気自動車の魅力を発信する「東京アイランドモーターショー」を開催するなど、ゼロエミッション・ビークルの一層の普及を目指して、官民連携をさらに強化してまいります。
また、東京の貴重な緑を守る気運を、11月に東京で開催する全国育樹祭を契機に、さらに高めたいと思います。その一環として、都民の暮らしを支える多摩・島しょの森林につきまして、50年、100年先のあるべき姿を取りまとめて、育樹祭にて発信するなど、「森を育て木を活かす」持続可能な東京を、都民と共に次世代へと継承をしてまいります。

国際水協会(IWA)世界会議・展示会の開催

9月には、水分野における世界最大規模の国際会議であり、日本で初となる国際水協会・IWAの世界会議・展示会が東京にて開催されます。東京が誇る強靭で持続可能な上下水道システムと、それを支える優れた技術やノウハウを、産学官一体となって発信をして、世界の水問題の解決に貢献するとともに、会議の成果を今後の上下水道の事業運営に活かしてまいります。

東京の持続的な成長の基盤を築く

国際金融都市の実現と中小企業の活性化

国際金融都市の実現に向けましては、今年度、新興の資産運用業者に対します資金面・体制面での支援や、金融プロモーション組織設立のための実務的な検討など、意欲的な取組を展開いたします。世界に冠たる国際金融都市を実現するとともに、金融の活性化が、都民や中小企業のメリットにも繋がりますよう、引き続き新たな施策にも挑んでまいります。
東京の経済や雇用を支える中小企業の振興につきましては、時代時代のニーズに応じた施策を、効果的かつ継続的に展開をする中長期的なビジョンの策定に向けまして、有識者会議において精力的に議論をいただいておるところであります。併せまして、会議での議論も踏まえつつ、中小企業振興の揺るぎなき理念や方向性を明確にする条例の制定を目指しまして、検討を進めてまいります。
ものづくりの技術にスポットを当てることも、中小企業の活性化へと繋がります。日本中の若い職人がものづくり技能を競う「技能五輪全国大会」と、障がい者が日頃磨いた技能を競う「全国アビリンピック」について、このたび、2021年の開催地として名乗りを上げました。多彩な技能の祭典を東京に誘致をし、ものづくり産業の一層の振興と、障がいのある方々のさらなる活躍を後押しをしてまいりたいと思います。

成長戦略としての観光振興

観光都市として国際的な評価を高める東京にとりまして、観光振興は、都市間競争を勝ち抜くための重要な戦略であります。今般、世界中から人々が集うサッカーワールドカップの機会を活用して、モスクワの空港や高速鉄道等におきまして、東京のPRを集中的に実施をいたします。また、美術館や庭園といった都内のユニークベニューの活用を促し、国際会議などMICEのさらなる誘致へと繋げるべく、先月開設いたしました総合支援窓口において、効果的なマッチングや施設情報の提供等を行ってまいります。
東京の貴重な観光資源である島々への観光客誘致に向けましては、昨年度に引き続き、島での宿泊や買い物などに利用できる特典付きの商品券、「しまぽ通貨」を販売いたしております。各島はそれぞれ、訪れる人々を惹きつけてやまない魅力を誇って、今月、返還50周年を迎えます小笠原諸島におきましては、月末に私も出席する式典をはじめ、様々な記念イベントも用意をされております。個性ある宝物が光る東京の島々へ、より多くの方々に足を運んでいただきたいと存じます。

東京の成長を支える交通・物流ネットワーク

東京の成長戦略を、まさに基盤として支える交通・物流ネットワークにつきましては、今月、外環道におきまして、一部都内を含む千葉区間が開通をいたしました。都内の関越道・東名高速間につきましても、一日も早い開通を国に求めるとともに、都といたしましても、用地取得など積極的に整備を支援をしてまいります。残る東名高速・湾岸道路間は、首都圏三環状道路のいわば総仕上げの区間であり、計画の早期具体化に向けまして、国や関係機関と共に取り組んでまいります。
鉄道につきましては、先の定例会において、新線建設等の財源となります基金の創設を可決していただきました。今年度は、地下鉄8号線や多摩都市モノレールなど6路線につきまして、事業化に向けた検討の深度化を図ってまいります。持続的な成長や都民の活力向上に繋がる鉄道網の一層の充実のため、国や地元自治体、鉄道事業者等との協議・調整を進めてまいります。

9 おわりに

「社会活動の中心たる重要物は三つあり、一に曰く人、二に曰く人、三に曰く人」と述べたのは、冒頭で触れました後藤新平であります。「人間無くして何事をか為し得んや」、すなわち「人間無くしては何事も為すことはできない」と説きました後藤は、震災復興におきましても幅員の広い近代的な街路、大小の公園、不燃構造の小学校等の整備を進めました。まさに「人」を守り、「人」の力を引き出す都市計画を実現することで、未来にわたる東京の発展を目指したのだと思います。
私もまた、「人」に焦点を当てた都政運営により、「人」の活力を大いに引き出すことで、東京の新たな進化を図っていきたいと思います。都民一人ひとりに着目をして、誰もが明日に夢を持って活躍できる東京を築き上げる。このことが、成熟社会においてなお、持続的な成長を生み出す都市を実現することに繋がってまいります。そうした確信の下、都議会の皆様のご理解、そしてご協力をいただきながら、都民の誰もがいきいきと輝くための施策を推し進めてまいりたいと存じます。

なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含めまして、条例案17件、契約案11件など、合わせまして47件の議案を提案をいたしております。どうぞよろしくご審議のほど、お願いを申し上げます。

以上をもちまして、私の所信表明を終わります。
ご清聴、誠にありがとうございました。

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