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令和7年第三回都議会定例会 知事所信表明

更新日

令和7年第三回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を述べさせていただきます。

1 はじめに

世界で加速する分断、各地で強まる排他的な流れ、明らかにこれまでと様相が異なる気候変動による自然災害。片やAIをはじめとするテクノロジーは、ドラスティックな変化を糧とするかのように、予想を超えるスピードで進化の道を突き進んでいます。極めて不確実で不安定な時代でございます。課題解決をリードすべき国家が互いに角突き合わせ、なかなか身動きが取れない中、ピンチをチャンスへと転じるゲームチェンジャーとして都市の役割は高まりつつあります。
期待と不安、その両方に耳を澄まし、為すべき改革を牽引するリーダーシップが求められております。世界有数の大都市東京のポテンシャルや強みを最大限に活かし、また、海外諸都市が持つ英知を大きな力に変えることも大切であります。明るい未来を切り拓き、国をもリードしていくという強い想いを胸に、多彩な政策を前へと進めてまいります。

2 互いの違いを認め尊重し合い、誰もが自己実現を追求できる東京へ

多様性に溢れ調和のとれた真の共生社会を実現する

先日、東京では34年ぶりとなる世界陸上が成功裏に幕を閉じました。無観客だった4年前とは打って変わり、大会期間を通じまして約62万人もの方々にスタジアムに足を運んでいただけたことを心から嬉しく思っております。満員の国立競技場。沿道を埋め尽くす観衆。地響きのような大歓声の中、トップアスリートたちが繰り広げる真剣勝負に世界中の人々が感動し、勇気づけられたことと思います。会場を訪れた子供たちの弾ける笑顔も忘れられません。大会を通じまして、多くの子供たちにスポーツを身近に感じてもらい、夢を届けることができたのではないでしょうか。「スポーツの力」というバトンを約50日後に迫るデフリンピックにも確実に引き継ぎ、東京の未来に確かなレガシーを残してまいります。デフリンピックでは、ろう学校の子供たちが選手の間近で大会に参画できるようにするとともに、「スポーツFUN PARK」を開催するなど都民の皆様とパラアスリートが繋がる機会も創出いたします。会話をリアルタイムで字幕にして投影するディスプレイなどユニバーサルコミュニケーション技術の活用も進め、さらなる成熟都市へと進化させる起爆剤にしてまいります。また、近年、大変多くの外国人が日本で暮らすようになっております。それに伴いまして、文化や習慣の違いはもとより、社会の変化に追いついていない我が国の制度的な課題も顕在化してまいりました。多様性を尊重しながら互いに支え合い、一人ひとりが安心して暮らせる社会にするため、速やかに実効性ある措置を講じるよう国に要望を行っています。こうした取組を通じまして、多様性に溢れ調和のとれた、真の共生社会を実現してまいります。

Women in Actionでゲームチェンジを起こす

そして、世界陸上は、改めて都市における「人」の力に想いを巡らせる機会ともなりました。特に、なかなか突破口を見出せない我が国の女性活躍を力強く前に進めることは、女性も男性も輝く持続可能な社会の実現に不可欠であります。知事就任以来、女性首長のネットワークの立ち上げや、起業家を育成するプログラムの展開、子育て家庭のニーズに応えた子供の居場所づくりなど、女性が自らの可能性を最大限に発揮できる後押しをしてまいりました。こうした都の取組も踏まえまして、この度、OECDの中で都市の声を代表する国際ネットワーク、チャンピオン・メイヤーズの女性・子供分野を担当する副議長に就任をいたしました。Women in Action、女性の活躍のWAを一層広げてまいります。検討中の「女性の活躍に関する条例(仮称)」につきましては、特に、雇用分野において女性がその個性や能力を存分に発揮できますよう、企業や社会の意識や行動を変えていくための基本的な考え方を取りまとめております。男女平等参画推進総合計画の改定も控えております。これらを原動力に、東京から今までにない女性活躍の力強いうねりを起こしてまいります。

一人ひとりの自己実現を全力で応援する

この間、「結婚したい、子供を持ちたい」と望む方の想いに寄り添い、国をも先導する切れ目のない支援を講じてまいりました。都として、「一人ひとりの自己実現を全力で応援するのだ」という揺るぎなき意志を持ち、都民目線に立った施策を果断に実行することが極めて重要だと考えています。いよいよ今月から保育料無償化の対象を第一子まで拡大するとともに、来月からは無痛分娩を希望する方への支援も開始いたします。さらに、子供や保護者の多様なニーズに応える学童クラブの認証制度は、第二弾の募集を開始し、質の高い受け皿の拡充を図っていきます。悩みをSNSで気軽に相談できる「ギュッとチャット」には、適切な相談相手を紹介するAI機能や多言語対応などを追加いたします。また、不登校の子供の状況に応じた相談先や支援を見つけることができるポータルサイトも来月開設し、保護者の不安に一層寄り添ってまいります。
急増する児童虐待への対応力の向上は引き続き大きな課題であります。江東区と連携し新たな児童相談体制の構築を進めていくとともに、墨田区内に都児童相談所を令和9年度を目途に新設するよう検討を進めます。
子供や若者たちの中に眠る可能性を大きく花開かせていかなければなりません。都立高校では、世界で最も革新的な大学と言われるミネルバ大学との連携プログラムやAIの積極的な活用など、新しい教育の形の追求に力を入れてきました。近年、学びのあり方が多様化し、学校選択の幅も広がっています。生徒たちから選ばれ、国際社会で活躍できる力を育む場であり続けるよう、都立高校のさらなる魅力向上に向けまして総合教育会議で議論を進めます。
若い頃から海外で学び・交流する経験も重要です。大学生等を対象にした都独自の海外留学支援制度「東京グローバル・パスポート」、略称「グローパス」を開始し、自ら主体的に海外に挑戦しようとする学生の最初の一歩を力強く後押しいたします。また、都立大学では、博士人材が経済的不安なく研究に打ち込めるようにするプロジェクトを実施しています。政策連携団体等におきましても、博士人材活用のリーディングケースを創出することで、キャリアパスを多様化し、優秀な人材が社会で存分に活躍できるようにしていきます。
人生100年時代。これまでも、都立大学のプレミアム・カレッジや虎ノ門に開設したプラチナ・キャリアセンターを通じて、第二の人生に挑戦する方々を応援してきました。アクティブなChōju社会にしていくため、高齢者の就業を支援するイベントの開催や、設立50周年を迎える都が発祥のシルバー人材センターのPRも行い、シニア世代が経験や意欲に応じて働ける機会を創出していきます。また、今後、一人暮らしの高齢者が増えていくことが見込まれています。そこで、シニア世代同士の交流イベントを来月開催いたしまして、人生をより豊かにするパートナーとの新たな出会いも後押しいたします。こうして、誰もがいつまでも社会の一員として自己実現を追求できるようにしてまいります。

3 都民生活や企業活動を支える安心で活力ある社会環境を創出する

一方、一人ひとりの自己実現を叶えるには、都民生活や企業活動を支え、安心で活力ある社会環境を整えていかなければなりません。
長引く物価高騰の影響に対しましては、中小企業の持続的な賃上げ実現に向けた価格転嫁の円滑化につきまして、九都県市が連携して経済団体に協力を求めるとともに、価格転嫁が難しい医療機関等を下支えするため、今月末までといたしておりました緊急対策の期間延長も行いました。また、スタートアップが提供する原価管理システムの活用など、引き続き、中小企業の競争力強化と生産性向上もしっかりと支援してまいります。
複雑化・巧妙化する特殊詐欺のターゲットが若い世代へと広がっているほか、SNSをはじめ様々な手口を使った不動産・株式を巡るトラブルや詐欺も発生しています。世の中の治安を取り巻く状況が刻々と変わる中、闇バイトの求人投稿を自動で収集・分析するAIツールを先月から導入いたしました。子供や若者たちをSNS等に起因するトラブルから守るため、官民連携による気運醸成や保護者向けの啓発も強化して、ネット空間も安全・安心な東京にしていきます。
また、今後の人口動態等を踏まえ、東京全体で安定的な火葬体制を確保することは重要です。都は、火葬場を指導監督する区市町村と連携しまして、料金を含む火葬場の経営管理に対する指導が適切に行えますよう、法の見直しを国に求めていくとともに、実態を精緻に把握した上で火葬能力の強化に向けた取組を検討してまいります。

4 強くしなやかに危機を乗り越えるレジリエントな都市を築く

次に、「首都防衛」の四文字を胸に、いかなる困難も強くしなやかに乗り越える強靭な都市、レジリエントな都市を創り上げる取組であります。

激甚化する自然災害に負けない強靭な都市基盤を構築する

都内で7年ぶりに40℃超えを記録するなど、この夏も猛威を振るった災害級の暑さに対しまして、水道基本料金を無償とする特別措置や東京ゼロエミポイントの拡充によるエアコン購入支援など、命を守ることを最優先に考えた緊急的な対策を講じました。
地球温暖化の影響は極めて深刻であります。命を脅かすほどの気温上昇だけでなく、風水害の脅威も高まっています。稼働済みの29か所、総容量約268万立米の調節池に加え、来月から境川木曽東調節池で取水を開始いたします。新たに小学校のプールおよそ160杯分に相当する約5万立米の貯留を可能とすることで、さらなる浸水被害の軽減に繋げてまいります。
7月にカムチャツカ半島付近で発生した地震では、東京でも津波を観測いたしました。気候変動で将来的に海水面の上昇が想定されており、津波や高潮による被害の拡大を見込んだ対策の強化が欠かせません。東京港や島しょ部では、これまでに防潮堤や護岸、津波避難施設の整備を概ね完了いたしました。加えて、今後も防潮堤等の嵩上げに取り組むとともに、AIやドローンの活用などDXによる防災力の一層の向上を進めます。
いつ発生するかわからない災害の被害を軽減するには、備えよ常に、区市町村や関係機関等との緊密な連携や自助・共助が不可欠であります。先月、首都直下地震を想定して羽村市・日の出町と合同で総合防災訓練を実施いたしました。これに続き、11月には南海トラフ地震を想定した訓練を新島村と実施いたします。
都内全域の電柱をなくす取組も急がなければなりません。次期東京都無電柱化計画の策定に向けた検討を深めるとともに、宅地開発におきまして無電柱化を推進する全国初の条例につきまして基本的な考え方を本日公表いたします。「電柱を減らす」「電柱を増やさない」、この両面から取組を加速してまいります。

東京の強みを活かして脱炭素社会のモデル創出に挑む

テクノロジーやアイデア、さらには江戸から続く知恵もフル活用し、エネルギーの安定確保と脱炭素化を両立する都市のモデルを創出いたします。
薄く・軽く・曲がる日本生まれの次世代型太陽電池「Airソーラー」は、まさに課題解決に向けたゲームチェンジャーであります。Airソーラーを使った庭園灯を東京体育館周辺に既に設置をしているほか、既存ビルに後付け可能な内窓一体型Airソーラーの実装に向けました検証も開始するなど、活用の可能性を広げていきます。浮体式洋上風力発電につきましては、伊豆諸島周辺の5つの海域が、国が定める準備区域となったところであり、引き続き、漁業関係者をはじめ地元の方々のご理解、ご協力をいただきながら一つひとつ課題を乗り越え、早期実装を目指してまいります。
環境の負荷の少ない航空燃料であります、エス・エー・エフ、SAFは、暮らしに身近な使用済み食用油を再利用する点で、江戸のDNAを受け継ぐ循環型社会の象徴と言っても良いかもしれません。ごみの収集が日常の一部となっているように、使用済み食用油の回収も当たり前にしていきたいと思っております。世界陸上の開催に合わせて展開した回収キャンペーンを弾みに、引き続き、普及啓発に力を入れてまいります。
来月には、大田区京浜島で都内初の大規模グリーン水素製造拠点が稼働いたします。作られた水素は、FCモビリティをはじめ、化粧品の原料や森ヶ崎水再生センターで取り組むグリーンメタンのトライアル製造などに活用いたします。また、海外からの水素調達を見据え、川崎市から都内への供給ルートを念頭に、いよいよ高圧パイプライン構築に向けた具体的な調査を開始いたしました。臨海副都心では、既存の共同溝を活用し、安全性の高い新たな水素配管技術の開発も進めます。さらに、水素を使うアクションも強力に促したいと考えています。2030年度までに約600台という燃料電池タクシーの大胆な導入を一つの契機として、商用モビリティを軸に水素の積極的利用を広げる「TOKYO H2プロジェクト」を始動いたしました。こうして「つくる」「はこぶ」「つかう」取組で、需要と供給を増やし、また日本の技術力を生かしながら、水素社会への歩みを加速します。
都内中小企業やスタートアップの力でグローバルサウスのGXを促進するプロジェクトでは、従来廃棄されていた食用に向かない作物などからバイオ燃料を製造するなど、脱炭素化に貢献できる技術を持つ企業を採択いたしました。現地政府等とも連携し、スピード感を持ってビジネスを展開できるよう後押ししていきます。

多都市間主義の下、レジリエントな都市を創り上げる

一方で、気候変動によってもたらされる自然災害や生態系の変化は、私たち人間の生活に広範かつ甚大な影響を及ぼし、都市のレジリエンスが世界の共通課題となっています。今まさに目の前で脅威に晒される命と財産を守り抜く鍵は、「多都市間主義」にある、このように考えています。すなわち、最前線に立つ都市同士が互いの取組や知見を共有し、対策を強化・加速させることが極めて重要です。都が立ち上げた国際都市ネットワーク「G-NETS」を再編し、レジリエンスに着目した連携のプラットフォームとして、その機能を強化してまいります。また、気候変動対策やグリーン水素の社会実装においては、「TIME TO ACT」や「HENCA Tokyo」など国際会議の場も通じて、都市間の広がりを活かしながら取組を推し進めてまいります。

5 変化の先を見据えた取組で東京の国際競争力を強化する

続いて国際競争力の強化についてであります。不安定で不確実な時代だからこそ、変化の先を見据えた取組で都市力に磨きをかけていきます。

ハードとソフトの両面から都市活動の舞台を整える

加速する人口減少が、各業界の人手不足に拍車をかけています。安全性と正確性を誇る鉄道業界も例外ではなく、技術者不足の深刻化が見込まれております。都民生活や都市活動に欠かせないインフラとして持続可能なものとなるよう、先般設置した官民連携の検討会で、現状と課題の把握や解決策の議論を進めます。
交通基盤は、まちづくりの起爆剤ともなる存在です。多摩都市モノレールの箱根ケ崎方面への延伸を、多摩地域のブランド力を格段に高める転機にしたい、このように考えています。新しい暮らし方・働き方のモデルの実現に向けて、大胆かつ斬新な発想で具体的なまちづくりに係る実施計画の検討を進め、今年度末までに取りまとめてまいります。
住宅を巡りましては、空き家の増加やマンションの老朽化、単身高齢者世帯の増加など様々な課題が顕在化しています。子育て世帯等が住みやすいアフォーダブル住宅について、新設する官民連携ファンドの運営事業者を来月選定いたします。さらに、今後の住宅施策のあり方等について審議会に諮問を行い、新たな住宅マスタープランの策定に繋げてまいります。
憩いと潤いに溢れる都市づくりも推進いたします。農地の減少や繁華街における緑空間の不足といった都の現状も踏まえながら、「緑の広域計画」の策定に着手し、まちの至る所で緑を実感できるようにしてまいります。
また、芸術文化は、成熟した都市に欠かせない社会インフラであります。そこで、来年の秋、臨海部を舞台にした新たな国際的美術展を開催することといたしました。コーディネーターといったアートを支える人材や若手の芸術家にも光を当てて、絶えず新しい価値を生み出す東京ならではの魅力を発信します。併せて、秋から冬にかけて集中するアートを中心とした都内のイベントを結び合わせ、一つの芸術祭として一体的にプロモーションし、芸術文化都市・東京を強力に打ち出していきます。

グローバルな視野と新たな技術や知恵で東京の可能性を花開かせる

7月のアメリカ出張では、日本の若者が創業した最先端のいちごの植物工場を視察し、イノベーションによって広がる農業の大きな可能性を実感いたしました。大都市東京には広大な土地はありませんが、世界に誇る技術力があります。昨今の国際情勢や急激な気候変動を鑑みれば、テクノロジーで東京の農業や水産業を活性化させることは、食の安全保障にも直結するものであります。そこで、農業とテクノロジーを掛け合わせたアグリテックを東京農工大学と連携して推し進め、「都市型農業の新たなモデル」を東京から創り上げてまいります。また、水産業では、多摩地域でデジタル技術を活用した収益性の高い陸上養殖のビジネスモデル構築を進めるほか、島しょ地域で東京産キャビアの生産を目指したチョウザメの養殖等に挑んでまいります。
イノベーションを巡る国際競争はスピードが命であります。都におきましては、各局とスタートアップとの連携を積極的に推し進めた結果、2022年からわずか2年間で、協働プロジェクト数が28倍に増加しました。今後、グローバルな展開と成長をさらに加速するためスタートアップ戦略を進化させ、社会課題解決に繋がる新しい動きを牽引してまいります。
国際金融都市としてのプレゼンスを確立し、可能性を求める世界の資金を呼び込む流れも生み出していかなければなりません。金融市場の一大拠点であるシティ・オブ・ロンドンとのMOUを、7年ぶりにバージョンアップしました。連携をより具体化し、金融分野のイノベーションや日本・イギリス間での投資拡大に繋げていきます。さらに、資金の用途を都市の強靭化に特化した「TOKYOレジリエンスボンド」は、国際的な認証の基準をクリアし、投資家の注目も高まることが期待されます。秋の発行に向けてしっかりと準備を進めるとともに、今後、様々な機会を捉え、金融の力で持続可能かつ強靭な社会を実現する都の取組を強力にPRいたします。併せて、イノベーションを担う企業や高度外国人材、及びその家族に対しまして、生活面や手続きにおける直接的なサポートを新たに開始するなど、グローバルスタンダードな環境を整えていきます。
デジタル都市の基盤づくりも加速いたします。災害時や増加するインバウンドへの対応を念頭に、安全で利便性の高い国際規格のWi-Fiを都内全域に整備するため、先月、NTT東日本と協定を締結いたしました。電話ボックスを活用し、3年間で新たに約1500か所整備をし、誰でも、どこでも「つながる東京」にしていきます。また、先般策定した「東京都AI戦略」を基に、社会に急速に浸透するAIを、より良い政策実現を加速する中核技術といたしまして積極的な活用を図ります。AIだけではありません。金融や次世代モビリティ、ロボット技術といった分野で世界がしのぎを削っています。東京の国際競争力を高め、快適な都民サービスを提供するためには、大量の情報を保存・処理するデータセンターの存在がもはや不可欠であります。電力需要や脱炭素、まちづくり等との整合を図りながら、社会の基幹インフラとして整備促進を後押ししてまいります。

6 名誉都民の選定

このたび、名誉都民の候補者として、草笛光子さん、戸田奈津子さん、三村明夫さんの三名の方々を選定させていただきました。
草笛光子さんは、日本ミュージカル界の発展に多大な貢献をするとともに、現在も第一線で活躍する姿は人々に希望や活力を与えています。
戸田奈津子さんは、数々の映画の字幕翻訳やまた通訳として、長きにわたり日本と海外の架け橋となり、今なお精力的に活動を続けています。
三村明夫さんは、鉄鋼業界の発展のみならず、日本商工会議所や東京商工会議所の会頭として幅広く政策提言・推進に尽力されてきました。
お三方につきまして、都議会の皆様のご同意をいただき、来月、名誉都民として顕彰したいと考えております。よろしくお願いを申し上げます。

7 おわりに

さて、かつてアメリカ・ジョージタウン大学のレイ・クライン教授が「国力の方程式」という考え方を提唱しました。そこでは、国力を決定づけるのは、人口と経済と国防のみならず、戦略と国家意志が重要であるとされています。かねて申し上げているとおり、私はこれを都市に置き換えて、どうすれば都市力を伸ばすことができるかを常に考えながら、都政の羅針盤となる戦略と、「人」が輝く都市を実現するという明確な意志の下で、東京の舵取りを行ってまいりました。
ところが、我が国の現状はどうでしょうか。例えば、住民税利子割に係る議論は、地方税の原則に沿ったあるべき姿の追求に努力を尽くすべきところ、極めて少ないサンプル調査を基に拙速に進められています。また、人や企業、大学の地方分散を進めるべきといった主張も、しかし現実を見れば、企業の本社は東京から転出傾向にあり、また、学生や若者も各地域の大都市に集まっている実態があります。両者に見え隠れするのは、ファクトを蔑ろにして、東京の力をとにかく地方に切り分ければよいかのような短絡的な発想に他なりません。
時代の流れは極めて速い。国際競争も熾烈を極めています。我が国の国力をどのように高めようとしているのか。激動の只中に置かれた今こそ、内向きの発想から抜け出し、明るい未来への希望を届ける確かな「戦略と意志」が問われるのだと思います。
全国のモデルとなり、日本全体を元気にしていくという首都の使命、それは、これまで以上に重みを増しています。スピード感を持って政策実現に邁進をし、都民のため、国民のため、全ての「人」が輝き一人ひとりが幸せを実感できる世界で一番の都市を実現してまいります。

なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含め、条例案16件、契約案13件など、合わせまして46件の議案を提案いたしております。よろしくご審議のほど、お願いを申し上げます。

以上をもちまして、私の所信表明を終わります。

記事ID:000-001-20250924-043453