令和7年第四回都議会定例会 知事所信表明
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令和7年第四回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を述べさせていただきます。
10月27日、名誉都民である宇井理生さんが逝去されました。また、11月8日、同じく名誉都民である仲代達矢さんが逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りをいたします。
今般、交通局が公正取引委員会の行政調査を受けたことは、知事として重く受け止めております。都職員が受注調整に関与した可能性が指摘されておりまして、もしこれが事実であるとすれば、都政に対する都民の信頼を損ないかねない重大な事態だと認識をいたしております。公正取引委員会の調査に支障がないよう留意しつつ、外部の専門家にもご協力をいただきながら、二人の副知事をトップとして関係局により編成いたしました「調査特別チーム」において早急に事実関係と原因を明らかにし、再発防止策を検討いたしてまいります。
1 はじめに
さて、時代の激動を象徴するかのように、我が国で初となる女性総理が誕生しました。約30年にわたり経済の停滞が続いた日本。その流れを変えてくれることを大いに期待をいたしております。今日、テクノロジーは日進月歩で、AIや半導体、量子技術や核融合など、新たな産業分野を巡る世界の動きは加速するばかりであります。今、この国の成長の足枷となっている課題を解決し、強い経済の創出によって持続可能な発展に繋げられるかどうか、我が国の正念場であります。
安全・安心を守り、産業を伸ばし、何より「人」を輝かせる。そうした、いわば未来のための投資によって、地に足のついた真の成長力を育てるべきであります。世界有数の大都市東京の持つ強みは大きなポテンシャルであります。国としっかりと連携をし、日本を牽引する成長のエンジンとしての覚悟と使命感を胸に、東京のため、都民のための政策を推し進めてまいります。
2 いきいきと暮らす「人」の力が持続可能な成長の源泉となる
持続可能な成長の源泉は、いきいきと暮らす「人」の力であります。まず、一人ひとりの自己実現を応援する取組について申し上げます。
デフリンピックの経験を活かしインクルーシブの理念を根付かせる
12日間にわたり開催されました東京2025デフリンピックが幕を閉じました。熱戦を繰り広げる聞こえない・聞こえにくい選手たち。その活躍を応援しようと集まった大勢の観客。桜の花が咲くように両手をひらひらさせる拍手や、目で見る応援「サインエール」が、障がいのあるなしといった違いを飛び越える架け橋となり、会場はこれまで経験したことのないような一体感に包まれました。その瞬間、その空間、それはまさに東京2020大会や世界陸上を通じて実現を目指してきた共生社会の一つの姿であったと思います。大会開催に当たりましては、空港や鉄道会社、ホテル等と連携いたしましてユニバーサルコミュニケーション技術を活用するムーブメントも展開し、全ての人に情報が届くアクセシブルな未来へ歩みを進めることができました。会場等を訪れた方々は約33万人。そのうち、子供たちに会場での観戦や大会運営の機会を提供するプログラムには、ろう学校の生徒たちをはじめ約5万人が参画し、次世代にしっかりとバトンを繋ぐことができたと思います。デフリンピックの開催を機に高まった社会の気運を一過性に終わらせてはなりません。今後も、障がいの有無に関わらず楽しく交流できるような取組を展開し、全ての「人」を輝かせるインクルーシブの理念を、大会のレガシーとして東京に根付かせてまいります。
条例を起爆剤に女性も男性も共に活躍できる社会を創る
人口の半分を占める女性がもっともっと輝いてこそ、未来は活力に溢れたものとなります。それは同時に、男性の力を活かすことにも繋がると繰り返し申し上げてまいりました。この間、様々ご意見をいただきながら検討してきた「東京都雇用・就業分野における女性の活躍を推進する条例(案)」を本定例会に提案しております。条例では、事業者による主体的な取組を促すことで、生活の大きなウエイトを占める働く場において女性がその個性と能力を発揮できる環境の創出を目指しております。加えて、職場や社会に根強く残る「性別による無意識の思い込み」の解消に社会全体で取り組むことも掲げました。これらは、働く女性の自己実現はもとより、事業者にとりましても新たな価値の創造や、変化に強い持続可能な組織の構築に寄与するものであります。全国初となる女性活躍条例の制定によって、女性も男性も共に活躍できる社会づくりを東京がリードし、一気に加速させたいと考えております。よろしくご審議をお願いいたします。
多様で柔軟な働き方の選択肢を増やす
そして、家庭と仕事の両立を可能とする多様で柔軟な働き方の選択肢は、もはや社会に不可欠なインフラと言っても過言ではありません。
隗より始めよ。都庁では、これまでも、職員が子育てと仕事を両立できるような柔軟な働き方を可能とする環境整備に力を入れてまいりました。一方で介護も、ライフステージで直面する大きな悩みであり、一人で抱え込むことなく、都庁全体で支えていけるようにしたいと思っています。介護が長期にわたる場合でも安心して働ける支援制度の充実や、必要な情報を得やすい仕組みづくり、上司や同僚に気兼ねすることなく安心して休暇を取得できる環境整備を、来年度に向けて進めていきます。
子供たちの近くで成長を支える教員たちがいきいきと働く環境づくりも重要であります。約50年ぶりとなる教職調整額の引き上げに向けました条例案を提案いたしております。また、放課後や土日も実施する部活動の今後のあり方につきまして、教育委員会が新たに設置した有識者会議で検討が進められています。そこでの議論を踏まえ、年度末を目途に、教員の働き方改革と子供たちの豊かで幅広い活動機会を両立する方策を取りまとめます。
ライフステージに応じた切れ目のない支援こそ未来への投資だ
都内では昨年、出生数の先行指標とも言われる婚姻数が大幅に増加いたしました。さらに、今年の上半期における東京の出生数は0.3%の増。プラスに転じるのは10年ぶりであり、下げ止まりの兆しが見えてまいりました。
AIマッチングシステム「TOKYO縁結び」による成婚数は100組を超え、10月に開催したシニア向けのイベントも参加者から大変好評を得たところであります。高まりつつある出会いや結婚への気運を、今後も力強く後押ししてまいります。
チルドレンファーストの政策ももっと前に進めます。「とうきょう すくわくプログラム」を実践する各園の学び合いのネットワークを生み出し、活動の質を一層高められるようにするとともに、体調不良の子供を安心して預けられる環境を整えるため、ベビーシッターを利用した病児保育の効果や課題を検証する事業も今月から開始いたします。
今回、子育て世帯等が手頃な家賃で住みやすいアフォーダブルな住宅を供給する国内初の官民連携ファンドにつきまして、運営事業者の候補として4つのコンソーシアムを選定いたしました。ファンド規模は200億円以上、供給戸数は合計300戸程度を見込んでおります。これに加えて、東京都住宅供給公社と連携しましてアフォーダブルな住宅を供給するなど、民間活力や既存ストックを活用し、子育て世帯等も住みやすい都市づくりを推進いたします。
「未来への投資」である教育という点では、AIがもたらす社会のドラスティックな変化など、激動する時代の先をも見据えて都立高校を大胆に進化させていくことが大切であります。教育委員会では有識者による懇談会を設置し検討が進められています。そこで出された意見も踏まえ、教育委員会と連携しながらスピード感を持って取り組み、子供たちの無限の可能性を花開かせる場として都立高校を一層磨き上げてまいります。
高齢者が元気に自立した生活を送れる長寿社会の未来は明るい
年を取っても元気に自立した生活を送れる社会の未来は、誰にとっても明るいものとなります。スポーツや文化を通じた交流によって活力ある長寿社会の実現を目指す全国大会「ねんりんピック」が、初めて東京で開催されます。先般、大会開催に向けました基本構想の素案を公表いたしました。世界陸上とデフリンピックという二つの国際スポーツ大会の経験やレガシーに加えまして、先端技術や芸術文化という東京の強みも活かし、成功に導いていきます。
民間の創意工夫を活用し高齢者に適した住宅供給を促進するため、その先導事業として、地域住民等との交流を促すような工夫を凝らした住宅整備の取組を選定いたしました。そこで得られるノウハウを都独自の「高齢者いきいき住宅(仮称)」認定制度の構築に活かします。
一方で、介護基盤の充実には、人材の確保・定着に向けた人事や給与の仕組みづくりが鍵を握ります。介護事業者への実態調査で明らかとなった現状や有識者会議の意見を踏まえまして、先日、物価高騰等を速やかに反映する基本報酬単価の設定等につきまして国への緊急提言を行いました。今後、介護事業者におけます適切な人事給与制度のあり方を示すとともに、経営力強化といった課題への対応策も検討していきます。
3 東京の強みを活かし新たな経済成長の波を起こす
次に、新たな経済成長の波を起こすための取組であります。日本の原動力とも言える東京のポテンシャルを最大限に活かしてまいります。
国際金融の舞台で東京の存在感を格段に高めていく
持続可能な発展を目指す中東は、今、石油に依存する経済からの脱却に挑み、国際金融の舞台として急速に存在感を高めています。勢いを増す地でプレゼンスを高めることは、グローバルな資金を東京に呼び込む近道であります。先日の海外出張では、世界各国の投資家やグローバル企業が一堂に会し「砂漠のダボス会議」とも呼ばれる国際会議「未来投資イニシアティブ(FII)」に出席してまいりました。東京のイノベーションや金融戦略に関する取組を発信するほか、「キャプテン翼」で国際的にも有名な漫画家、高橋陽一さんと共に、現地で大変な人気を誇る日本の魅力的な漫画・アニメと、そのコンテンツ産業としての可能性を強力にPRしてまいりました。さらに、優れたGX技術を有する東京の中小企業・スタートアップと現地企業とのマッチングを、トップセールスで後押しをいたしました。これまで積み重ねてきた実務的な協力関係を土台にして、ドバイ首長国との間でMOU締結を行うなど、今回の出張で生み出した数々の接点を、東京のさらなる発展に繋げていきます。折しも、東京に対する海外投資家の関心の高まりを物語るように、世界有数の大企業や政策立案者等が集う国際的なプラットフォーム「FII PRIORITY Asia 2025」が、昨日、初めてここ東京で開催されました。今後も金融系国際会議の開催をはじめプロモーションの機会を一層拡充し、国際金融都市としての存在感を格段に高めてまいります。
東京への高い期待で観光産業を牽引する
先月、世界で最も卓越した都市などの観光地を表彰する「TOURISE AWARDS 2025」におきまして、1000を超える観光地の中から、「食と料理部門」「エンターテインメント部門」の二つで東京が1位となり、総合でも1位、最優秀賞に輝きました。アメリカの大手旅行雑誌による「世界で最も魅力的な大都市」のランキングも2年連続で1位を獲得するなど、東京への高い期待が観光産業を牽引しているのは疑うべくもありません。この勢いを一層押し上げるには、都市の魅力にさらなる彩りを加えることが必要不可欠であります。都内の各エリアが主体的に進めるナイトタイムの充実に向けた動きを力強く後押しするなどして、東京の夜をさらに魅力的にする道筋をつけてまいります。同時に、ウェブサイトやSNSを活用しながら日本のマナーや習慣につきまして外国人旅行者に正確な理解を促し、経済を牽引する観光産業と地域生活の両立にも力を入れてまいります。
制度の創設から20年以上が経過いたしました宿泊税につきましては、税を取り巻く環境変化のほか、ごみ問題や混雑など観光を巡る新たな行政ニーズ等も念頭に、使い道や課税のあり方について見直しの素案を公表いたしました。今後、都民の皆様の意見も踏まえながら条例の改正案を取りまとめます。
伝統と革新の力で東京にさらなる活力を生み出す
江戸から続く伝統と現代の感性が共存する東京ならではの魅力に光を当てまして、世界を惹きつける新たな価値を生み出してまいります。
約4年の休館を経て、いよいよ3月31日に江戸東京博物館がリニューアルオープンいたします。映像や大型模型で江戸を体感できる工夫を随所に凝らすほか、JR両国駅から博物館までのアプローチでは、訪れる人を江戸時代へといざなうような映像の演出を施すなど、全面的な刷新を行いました。どこよりも江戸東京の歴史と文化に囲まれた空間を多くの方に楽しんでいただきたいと思います。
そして、東京に集積するテクノロジーやアイデアで様々なイノベーションを引き起こし、「グローバル」と「スケールアップ」をキーワードに、社会課題の解決と新たなビジネス創出の動きを加速させます。
イノベーションを生むプラットフォームとしてゼロから創り上げてきたTIBは、開設2周年で31万人を超える方々が来場し、名実ともに国内外の挑戦者が繋がり合う場へと成長いたしました。今後は、交流の中身や活動の領域をエンタメや音楽等にも広げて、未来を担う子供たちなどこれまで以上に多様な挑戦者を応援していきます。また、TIBと並ぶもう一つのプラットフォームが、グローバルカンファレンス SusHi Tech Tokyoです。将来的には、東京全体、さらには世界各地のエコシステムも巻き込みながら、誰もが行きたくなるような唯一無二のカンファレンスへと進化させていきたいと思います。先週発表したスタートアップ戦略2.0には、こうした想いが凝縮されており、「みんなで創る、みんなで進める」という揺るぎなき考えの下、国とも連携しながら我が国のイノベーションを牽引していきます。
空飛ぶクルマを活用した移動サービスの実現を目指すプロジェクトについては、事業者として二つのコンソーシアムを選定し、商用運航へ大きな一歩を踏み出しました。遅くとも2027年度には、臨海エリアや、空港アクセス実現に向けました多摩川での飛行を実現できますよう、官民連携で取組を本格化させます。
4 荒ぶる世界の中でレジリエンスはあらゆる都市活動の土台だ
続いて、経済活動や「人」の活躍の土台となる、都市のレジリエンスを高めていく取組であります。
豪雨・台風被害へきめ細かな支援を展開し将来への備えも加速する
地球温暖化により自然災害の様相、明らかに変わりつつあります。9月の異常な豪雨では、東京においても一部の地域で浸水被害が発生しました。また、立て続けに襲い掛かった台風22号と23号により八丈島・青ヶ島では土砂災害や断水、停電などの被害が発生しました。被災された皆様に心よりお見舞いを申し上げます。
都は風水害への備えを計画的に強化しています。気候変動を踏まえて改定した豪雨対策基本方針の下で取組を一層レベルアップさせており、優先的に対策強化すべき流域の河川につきまして、河川整備計画を順次改定し、新たな調節池等の整備に向けた取組を進めます。
そして今回、レジリエントな都市づくりをさらに加速する補正予算案を編成いたしました。まずは来年夏の集中豪雨に備えた応急的な浸水対策として止水板を設置する区市町村を支援するとともに、一部完成している施設を活用し雨水の暫定貯留を行うための取水工事や、下水の流れを切り替えるバイパス管の工事等を行います。
補正予算案には、八丈町や青ヶ島村の早期の復旧・復興に向けました取組も盛り込みました。被災者の住宅補修費用の負担を軽減するほか、建物や設備が被災した中小企業者等の事業再建を支援いたします。従業員の方々が島を離れるような状況を防ぐためにも、事業の早期かつ安定的な立ち上がりも後押しします。道路・港湾等のインフラ復旧や観光キャンペーンなど、ハード・ソフト両面からきめ細かな支援を展開いたします。
都市強靭化を推進し国家の中枢たる首都を守る
これまでの不断の取組によりまして、首都直下地震等の被害想定は10年間で大幅に改善いたしました。しかし、まだ手を緩めることはできません。国や関係機関の施設が集積し、大規模災害時に政府のバックアップ機能を担うことが想定されます立川広域防災基地。その中にある都の防災センターについて、代替施設となる新たな防災拠点を整備する基本計画を来月策定いたします。また、住宅や緊急輸送道路沿道建築物等の取組強化に向けまして、年明けに耐震改修促進計画の改定案を示します。都市計画道路につきましても、都市強靭化に重点を置き選定した優先整備路線等を盛り込む方針案を今月中に公表し、新たな整備方針を取りまとめていきます。先般の台風被害を受け、改めて無電柱化の必要性も痛感いたしました。電柱倒壊のリスクは島に限ったものではありません。島しょ地域をはじめ都内の無電柱化を加速するべく、今後も力を入れてまいります。
災害時の保健・医療体制も強化します。都保健所へのモバイル衛星通信機器の配備を完了したほか、医療のひっ迫を見据え、未就業の看護師有資格者等につきまして、有事の際に地元の避難所等で支援活動していただく登録制度を昨日開始いたしました。命と健康をしっかりと守り抜いてまいります。
昨今、大企業へのサイバー攻撃が相次ぎ、社会に与える影響の大きさが改めて明らかとなりました。都民の皆様の重要な情報やインフラを守るため、GovTech東京と連携し、全庁横断的な対策を推進する都庁のサイバーセキュリティセンターをいよいよ今月立ち上げます。まずは、攻撃の予兆を捉え、迅速に対処することから始め、機能を強化しながらオール東京で高度なサイバーセキュリティ対策を実現していきます。
世界のモデルとなる持続可能な環境先進都市へ
知事就任以来、力を入れてまいりました気候変動対策は、他の自治体にも波及するほか、何より都民の皆様の意識や行動により着実に前に進みつつあります。特に、太陽光発電設備や蓄電池の設置、省エネ性能の高い家電製品への買い替え等は、災害への備え、すなわちレジリエントな都民生活にも直結します。予想される来年夏の酷暑も見据えまして、補正予算案には、こうした取組を推し進めるために必要な経費も計上いたしました。都民の皆様への強力な支援を通じて、ゼロエミッション東京を実現してまいります。
EVバイクの普及もゼロエミッションに資するものであります。国内メーカーと協力し、来月開催される箱根駅伝におきまして、新たな国産大型EVバイクを先行車両として走行させることとなりました。これを象徴的な取組として、EVバイクの認知度の向上を図ります。
また、脱炭素とエネルギーの安定確保を両立するため官民連携で水素を使うアクションを加速させる「TOKYO H2プロジェクト」を一層推進いたします。10月から稼働を始めた大田区京浜島の水素製造拠点で作りました東京産グリーン水素について、都有施設での利用に加え、トライアルで取り組んでいる市場形式の取引スキームを活用して都内に広く行き渡らせるなど、地産地消の新たな流れを生み出してまいります。
都市の持続可能性を考えますと、循環経済への移行も欠かせません。年度末を目途に、東京都資源循環・廃棄物処理計画や食品ロス削減推進計画の改定を行います。限りある資源・エネルギーや食料を最大限活用し廃棄物の発生を抑える都の取組を、一段も二段も引き上げてまいります。
物価高騰から都民・事業者を守り暮らしのレジリエンスを高める
これまで申し上げたもののほか、長引く物価高騰を踏まえた対策を盛り込む補正予算案も編成いたしました。国の交付金も活用し、福祉施設など価格転嫁が難しい中小事業者を下支えする取組を継続・拡充するほか、東京アプリを使って都民の生活応援を強化するとともに、出産後の家庭の負担軽減に資する取組を展開いたします。また、賃金引上げ計画を策定する中小企業に対しまして高性能な機器や設備の導入等を後押しする支援の規模を拡充し、賃上げと生産性向上に繋げてまいります。
本定例会に提案している補正予算案の規模は、総額1726億円。都民の皆様が安心して暮らせる環境を整えるだけでなく、東京の持続的な発展をも加速させてまいります。よろしくご審議をお願いいたします。
5 おわりに
さて、人類の発展の陰には、常に新たな発見や発明がありました。近年のAIや半導体といったデジタル分野の進化も、暮らしを劇的に変えるゲームチェンジャーとして期待が高まっています。また、今年のノーベル賞を受賞した、東京ゆかりの坂口志文氏と北川進氏の研究は、がん治療や地球温暖化対策などへの応用が大いに期待されるところであります。
今この瞬間も、世の中の至る所でイノベーションが進んでいます。かつて、徹底した現状分析と大胆な未来予測で注目を集めたアメリカのアルビン・トフラー氏。その著書の中で、農業革命、産業革命を経て、情報化社会へと世界を突き動かす「文明の波」についても明らかにしています。また、まさに、彼が論じたような大波の真っ只中、文明と文明の過渡期に私たちは生きていると言っても良いでしょう。
その先に明るい未来を築けるかどうかは、知恵、そして発想次第であります。社会課題を解決する「人」の営みこそが、激動の渦を新たな成長のうねりへと変え、暮らしを豊かにしていけるのだと思います。国としっかりと連携しながら、一人ひとりが自己実現を追求できる環境をしっかりと整え、都民が幸せを実感できる世界で一番の都市を創り上げてまいります。
なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含めまして、予算案3件、条例案17件など、合わせて72件の議案を提案いたしております。よろしくご審議をお願い申し上げます。
以上をもちまして、私の所信表明を終わります。