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令和2年(2020年)11月30日更新

令和2年第四回都議会定例会 知事所信表明

令和2年第四回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を述べさせていただきます。

11月12日、名誉都民である小柴昌俊さんが逝去されました。改めて、ここに謹んで哀悼の意を表し、心よりご冥福をお祈りをいたします。

1 都民と共に進める新型コロナウイルス感染症対策

まずは、まさに正念場を迎えております新型コロナウイルス感染症対策についてであります。

何よりも大切な、都民の命を守り抜く

都内では今、感染が急速に拡大をいたしております。特に、重症化リスクの高い高齢の新規陽性者数が増加し、重症者数も高い水準で推移するなど、予断を許さない状況であります。都民の皆様の命を守るため、そして、感染症対策の最前線で働く医療従事者の方々の負担を抑えるため、これ以上の感染拡大は何としても阻止しなくてはなりません。
都は現在、1日当たり最大約6.8万件の検査体制を整え、重症者用300床の確保を視野に入れた患者受入体制の強化や、宿泊療養施設のさらなる活用を図っておりまして、来月16日には、旧都立府中療育センターを活用した新たな専用医療施設を開設いたします。陽性者を早期に特定し、速やかに入院・宿泊療養へと繋げることで、感染の広がりや重症化を抑えてまいります。
「何よりも大切な、都民の命を守り抜く」。これまで一貫して申し上げてきた、都知事として最も重要な使命を果たすべく、「死亡者を出さない」「重症者を出さない」「医療提供体制の崩壊を防ぐ」。この3つの柱を軸として、引き続き為すべきことに邁進してまいります。

都民・事業者と共に、正念場を早期に乗り越える

併せて、都民・事業者の皆様のご協力こそ、一人ひとりの命を守るための生命線であります。都民の皆様には、マスク着用やこまめな手洗い・換気・消毒など、東京iCDCの専門家ボードから示された基本的な対策を、改めて徹底いただくようお願いをいたします。また、一昨日から来月17日までの20日間、区部及び多摩地域において、酒類を提供する飲食店及びカラオケ店の皆様に、営業時間の短縮を要請しております。大きなご負担をおかけしておりますが、今ここで、感染の広がりを食い止めなくてはなりません。何卒ご理解をいただきたく存じます。全面的にご協力をいただいた中小事業者の方々には、協力金をお支払いすることといたしておりまして、先般、そのための補正予算について専決処分を行ったところであります。
加えて、この期間、都民の皆様には不要不急の外出をお控えいただき、外出する場合は感染の予防と対策に万全を期すようお願いをいたします。都民・事業者の皆様と共に、この正念場を早期に乗り越える。そのために、「感染対策短期集中」の覚悟で、あらゆる対策を講じてまいります。

年末年始を含めた万全の対策のための補正予算案

そして、本定例会には、医療提供体制及びセーフティネットの強化・充実を柱とした、総額2308億円の補正予算案を提案いたしました。引き続き、医療従事者への慰労金の支給や、休業等の影響を受けた世帯への生活福祉資金の貸付け等を進めます。加えて、都議会の皆様のご要望も踏まえ、年末年始における対策として、診療・検査体制の確保、中小企業の資金需要への対応、住まいを失った方々への一時住居の提供など、きめ細かな取組を展開し、区市町村とも連携しながら、都民の皆様の安心を確保してまいります。

「新しい日常」における働き方の定着に向けて

また、感染症対策としても有効なスムーズビズを、さらに促進してまいります。経済団体、労働団体と共にテレワークの一層の普及を目指す「東京ルール」につきましては、来週より「実践企業宣言制度」を開始をいたします。自らルールを策定し、テレワーク推進を宣言した企業に対して、新たな融資制度等により支援を行うことで、都内企業におけるテレワークの定着を強力に進めます。また、明日からは、昨年度に続きまして「冬のスムーズビズ実践期間」を開始するなど、改めて、「新しい日常」における働き方としてテレワーク・時差出勤の浸透を図ってまいります。都民・企業等の皆様のご協力、よろしくお願い申し上げます。

かけがえのない命を守るために

「都民の命を守り抜く」。そのためには、ウイルスから命を守ることはもとより、コロナ禍で仕事を失われた方、生活に困窮されている方、将来に不安を抱いている方、こうした方々の命を守ることも決して忘れてはなりません。引き続き、様々な境遇にある皆様に寄り添いながら、セーフティネットの構築に向けた取組を一層強化することで、一人ひとりのかけがえのない命をしっかりと守ってまいります。

2 「人」と「デジタル」の力を組み合わせ、東京の可能性を解き放つ

大胆な構造改革で「東京が変わる。都政を変える」

新型コロナウイルス感染症との闘いに力を尽くしてきた2020年。今もなお、世界中で対策の暗中模索が続く、人類にとって試練の一年であります。戦後75年、この間、日本は幾度かの大きな困難に見舞われながらも、そのたびに力強く立ち上がり、社会そのものも進化を遂げてまいりました。オイルショックを教訓とした省エネルギー技術の進展や、阪神・淡路大震災後の耐震化の加速などは、その代表例と言えましょう。また、今般、都の感染症対策サイトの構築にも活用した、ITの力で市民が社会的課題を解決する「シビックテック」の取組も、東日本大震災を契機に少しずつ広がりを見せたものであります。
今、戦後最大と言われる危機を迎えている私たちは、都民の命と東京の経済を守ることを最優先としながら、その先の未来へと羽ばたくべく、コロナ禍で浮き彫りとなった課題を克服する構造改革を、大胆に進めなければなりません。これまで議論を重ねてきた「社会の構造改革」につきましては、先月末、有識者の皆様方から、前向きな変革を生み出すための多彩な提言をいただきました。デジタルトランスフォーメーションで新しい未来を実現する。最も重要な価値は安全・安心である。社会のセーフティネットを強化するとともに、多様性を圧倒的に高める。アジアで一番の経済・金融都市を目指す。東京が進むべき方向性として示されたこれらの至言を踏まえ、より良い社会を築くための具体の改革を推進してまいります。
また、「東京が変わる。そのために都政を変える。」を信念とする「都政の構造改革」につきましては、現在、最優先で進めるべきコア・プロジェクトに邁進しております。都庁の生産性を飛躍的に向上させるため、最先端のデジタル業務環境を整える。都が保有するデータをオープンデータとして徹底的に公開し、官民の叡智を持ち寄って東京の課題解決を図っていく。都民の期待を上回る価値を提供するためのこれらの取組について、先日、進捗状況を公表いたしました。今後、各局におけるリーディング・プロジェクトを展開し、国・区市町村・民間とも連携しながら、全庁一丸で改革のスピードアップを図ってまいります。
「社会の構造改革」と「都政の構造改革」。この両輪を、「サステナブル・リカバリー」の観点を取り入れながら、力強く前へと進めていく。その先に、都民の「QOL」、クオリティ・オブ・ライフと、都政の「QOS」、クオリティ・オブ・サービスを共に高めることで、誰もが幸せを実感できる都市を実現していきたいと思います。

「リアルとバーチャルのハイブリッド」で、世界から選ばれる都市へ

新たな体制でデジタルトランスフォーメーションを加速する

こうした構造改革の肝となるのは、「バーチャル」の世界を効果的に活用していくデジタルトランスフォーメーション、DXであります。コロナ禍からの経済回復の速度は、デジタル競争力にも左右されると言われる中、東京は今こそ、DXを一気に加速していかなければなりません。都はその牽引役となるべく、都政のDXに向けた機能や体制を備えた新たな局を立ち上げることといたしました。ICT人材を豊富に活用し、先端技術による全庁的な業務改革を先導するとともに、全職員のデジタル能力の底上げを図るなど、DXを力強く推し進める核となる組織であります。来年の第一回定例会に条例案を提案し、現在の戦略政策情報推進本部を改組する形での設置を目指してまいります。

東京が誇るべき「人」の力をもっと輝かせる

加えて、私は、「リアル」の世界で活躍する「人」の力を、もっと輝かせたいと思います。人と人が繋がり、知恵や技術を結集して付加価値を生み出すことで、東京はこれまで、世界有数の大都市として発展を続けてまいりました。今後とも、東京が誇るべき人の力を最大限に引き出すとともに、大いなる可能性を秘めるデジタルの力を徹底的に活用する。このデジタルの力はまた、人の力を一層高めることにも繋がります。そして、この「リアルとバーチャルのハイブリッド」によって新たな価値を創造し続けることこそ、東京が、激化する世界の都市間競争に打ち勝つとともに、誰もが心豊かに暮らせる都市へとさらに進化するための要諦なのであります。
デジタル化で「新しい成長」を遂げる東京。「人」が輝く東京。この実現に向けた「東京大改革2.0」は、まさにその進化のための取組であり、これを果敢に推し進め、「成長」と「成熟」が両立した、世界に輝く都市・東京を創り上げてまいります。

誰もが安心できるオリンピック・パラリンピックを目指して

都民・国民の皆様のご理解とご協力の下に開催を目指す東京2020大会については、新型コロナウイルス感染症対策を徹底するべく、国、組織委員会等と共に精力的な検討を行っております。年内には中間整理を取りまとめ、アスリート、観客、ボランティア等、誰もが安心できる大会運営のための準備を着実に講じてまいります。
現時点で約300億円の経費削減効果を見込む、大会の簡素化に向けた見直しにつきましては、国際競技連盟や各国オリンピック委員会など、関係者とさらなる努力を重ねるとともに、延期に伴う追加経費の負担のあり方を含め、IOC、国、組織委員会と協議を進めてまいります。
先月には、延期していた東京アクアティクスセンターの完成披露式典を実施いたしました。これを含め、都が整備した6つの新規恒久施設は、現在、競技団体や都民をはじめ、広くご利用いただいております。今月からは、大会への希望の道を照らす聖火が日本各地で展示され、その火を繋ぐリレートーチも、都内の全区市町村を巡る展示を開始いたしました。こうした取組を通じて、都民・国民の皆様に改めて大会を身近に感じていただき、気運を盛り上げていきたいと存じます。
「努力を続ければ、トンネルの出口を聖火が照らしてくれるであろう」。先日、東京2020大会に向けた連携を直接確認したIOC・バッハ会長の言葉を胸に、引き続きオリンピック・パラリンピック成功への道のりを、一歩一歩着実に歩んでまいります。

3 東京の経済を「新しい成長」へと導く

感染拡大の封じ込めとともに、今、為すべきは、疲弊した経済を立て直し、明るい未来へと力強く歩むための活力と希望を取り戻すことであります。感染拡大防止を大前提としながら、東京がさらなる進化を遂げるための「新しい成長」を実現するべく、取組を推進してまいります。

世界から選ばれる国際金融都市の実現

国際金融都市として、アジアナンバーワンの地位を不動のものとする。これは、我が国の成長の牽引役であり、金融エコシステムが圧倒的に集積している東京の使命であります。都市間競争が熾烈さを増す中、東京が世界から選ばれる都市としてプレゼンスを発揮するには、今がラストチャンスと言っても過言ではありません。この機を捉え、アジアからの金融系企業の誘致を加速するべく、先月、海外初となる「ビジネスコンシェルジュ東京」を香港に設置したほか、東京進出を窺う外国企業に都内オフィスの一時提供を行うなど、積極的に施策を展開しております。
今月からは、新たな有識者会議を立ち上げまして、「国際金融都市・東京」構想の改訂に着手をいたしました。SDGsやデジタル技術等、新しい視点からの議論を進めており、国際情勢や時代の変化を踏まえた実効性ある取組を練り上げ、手を緩めることなく推進してまいります。

スタートアップと共に「新しい成長」へ

喫緊の課題でありますデジタルトランスフォーメーションを加速する上で、5Gによるイノベーションを生み出すスタートアップの成長は欠かせません。今般、都は、地方自治体で初めてローカル5G基地局の免許を取得し、都立産業技術研究センターに5G環境を備えた「DX推進センター」を開設いたしました。デジタル技術を用いた付加価値の高い製品の実証の場として、中小企業やスタートアップに大いに活用していただき、東京の「新しい成長」に向けた産業力強化を図ってまいります。
また、画期的な製品やサービスを創り出すスタートアップと協働いたしまして、都政の課題解決に繋げる拠点を、年明け、西新宿に開設いたします。行政、民間、スタートアップの交流を通じまして、従来の枠に囚われない斬新なアイデアを掘り起こし、新たな官民連携モデルを確立してまいります。

「リアル」と「バーチャル」の両面から中小企業を支える

販路開拓や受発注の拡大など、中小企業のビジネスチャンスのフィールドを提供してきた「産業交流展」は、この冬、その舞台を丸ごと「バーチャル」の世界に移し、国内最大級のオンライン展示会として開催いたします。「ウィズ・コロナ」時代における展示会の新しい形として成功に導き、各企業の持続可能な成長へと繋げてまいります。
一方で、「リアル」の世界における中小企業の人材確保も、重要な課題であります。特に、語学力はもとより、専門的技能を磨いた外国人材の活用が進めば、海外への販路拡大など新たなビジネスチャンスが広がり、都内産業の成長を底上げすることにも繋がります。今週末には「外国人材採用ナビセンター」を新たに開設し、採用から定着まで、中小企業の多様な人材確保をきめ細かく支援をいたします。まさしく「リアル」と「バーチャル」の両面から、東京の経済と雇用を支える中小企業の発展を力強く支えてまいります。

東京農業の「稼ぐ力」を高める

先端技術を活用した「東京型スマート農業」を実現し、農業の「稼ぐ力」も高めてまいります。先般、その推進基盤として、民間や研究機関、生産者など多様な主体で構成する「研究開発プラットフォーム」を開設いたしました。年明けには、ローカル5Gを活用した遠隔指導など、新しい農業技術の実装を目指した取組を開始いたします。産官学の知恵、そして技術を結集し、東京農業の発展を促すイノベーション創出を目指してまいります。

都立工業高校におけるIT人材の育成強化

デジタル化の波に乗り遅れた我が国は、世界との競争から取り残されつつあります。こうした強い危機感から、世界にも通用するIT人材を早期に育て上げるべく、来年4月より、民間等と連携した新たな教育プログラム「Tokyo P-TECH」を開始いたします。全国で初となる、工業高校から専門学校まで一貫した5年間のカリキュラムについて、最先端技術を持つIT企業の全面的なバックアップを受け、専門的・実践的な学びを提供いたします。都立町田工業高校で先行して実施をし、将来的にはさらなる拡大を図ることで、技術の力で新たな価値を創造する人材の育成を加速していきたいと思います。

新しい観光の形を創り上げる

人々の移動や社会経済活動が制約を受ける中、東京の経済の一角を担う観光産業をいかに支えていくか。今こそ、この間の環境変化を踏まえた今後の観光振興の方向性について、明確なビジョンを持たなければなりません。先日、「ウィズ・コロナ」時代における観光施策の基本的な考え方につきまして、有識者会議の意見がまとまりました。誰もが安全・安心に旅行できる環境の整備をはじめ、多摩・島しょ地域の魅力活用、長期滞在向けのコンテンツの充実など、未来を見据えた貴重な提言の下、感染症対策を的確に講じながら、新しい観光の形を創り上げてまいります。

4 魅力と強さを兼ね備えたまちづくり

次に、東京の社会経済活動を強固に支え、安全・安心や「新しい成長」の礎となる、魅力と強さを兼ね備えたまちづくりについて申し上げます。

「地域防災計画」風水害編の修正

まずは、命を守る強靭な都市を創るための災害対策についてであります。先月、三宅村及び御蔵島村におきまして、大雨特別警報が発表されました。都は地元自治体と連携して対応に当たり、幸い大きな被害は生じませんでしたが、私たちは、7年前に大島町で発生した大規模な土砂災害を忘れてはなりません。さらに、昨年は台風が立て続けに猛威を振るうなど、風水害がまさに激甚化・頻発化する中、都はこれまで、防災事業の緊急総点検や大規模風水害検証会議の設置によりまして、全庁を挙げて対策のグレードアップを図ってまいりました。今般、それらの検証結果や、感染症との複合災害に備える視点等を反映させた、「地域防災計画」風水害編の修正素案を取りまとめたところであります。引き続き、都民の皆様のご意見や都議会での議論を踏まえまして、検討を深めてまいります。

防災事業の進化に向けたまちづくり

防災事業の進化に向けて検討を進めております、8つの河川の新たな調節池につきましては、今月、武蔵野市及び西東京市にまたがる「石神井川上流第一調節池(仮称)」の基本設計に着手いたしました。総容量約30万立方メートルに及ぶこの調節池は、完成すれば多摩地域で最大規模となります。引き続き事業を着実に推進するとともに、他の河川におきましても候補地や構造形式の選定を進めて、早期の事業化を図ってまいります。
昨年の台風15号では、千葉県を中心に都内も含め約2千本の電柱が損壊し、停電が長期化した地域も見られました。今後、台風が益々強大化することも考えられる中、無電柱化の大義は増すばかりであります。このさらなるスピードアップを図るべく、年明け以降、新たな「無電柱化加速化戦略」を策定いたします。技術面・財政面での区市町村支援の拡充や、コスト縮減に向けた技術開発の促進などを通じまして、その面的な展開を推し進めてまいります。

「サステナブル・リカバリー」の視点を踏まえた新しい都市づくり

2040年代の東京を描いた「都市づくりのグランドデザイン」の実現に向けましては、改定の検討を進めてきた「都市計画区域マスタープラン」について、先週、有識者の意見を踏まえました新たな提案を取りまとめました。「サステナブル・リカバリー」の視点を踏まえ、包摂的社会の形成や、多様な住まい方・働き方・憩い方の実現にも繋がる、これからの都市づくりの基本的な考え方を盛り込んでおります。今後、都市計画審議会への付議を経まして、「成長」と「成熟」を支える都市づくりに向けた具体の取組を推進してまいります。

人を惹きつける「美しい東京」を築き上げる

蘇る日本橋の景観

皇居外濠や河川、運河など、過去から連綿と受け継がれてきた水辺の空間を活かし、美しい東京を築き上げる。そうした取組の象徴とも言える首都高日本橋区間の地下化は、今月、第一歩となる地下埋設物の移設工事が始まりました。かつての堂々たる景観が蘇り、水と緑に親しむ人々が盛んに行き交う東京の顔・日本橋を実現するべく、事業の着実な推進を図ってまいります。

人中心の歩いて楽しめる空間へ

併せて、自動車の専用道路としての役割を終えることとなる東京高速道路、いわゆるKK線につきましては、先般、有識者等からなる検討会より、歩行者中心の緑豊かな公共的空間として再生すべきとの提言をいただきました。車中心から、人中心の歩いて楽しめる空間へ。このコンセプトを踏まえ、地域全体としての価値や魅力を最大限に引き出すための取組方針を、年度内に公表してまいります。

魅力ある都市環境の実現

世界最高水準の大気環境を目指す

魅力溢れるまちづくりには、快適な都市環境の実現も欠かせません。先般、都は、大気中のPМ2.5につきまして、都内80か所全ての測定局にて国が定めた環境基準を達成いたしました。引き続き大気環境のさらなる改善を図るべく、2030年度までに、WHOによる世界で最も厳しい指標の達成を目指してまいります。今後、自動車環境対策やVOC削減等の施策をさらに加速・深化させ、世界最高水準の大気環境を実現することで、環境面からも世界から選ばれる都市へと飛躍したいと思います。

「ゼロエミッション東京」への取組

昨年末、「ゼロエミッション東京戦略」を策定し、気候危機に正面から立ち向かう行動宣言をしてから約1年。東京は実効性ある取組を加速し、「行動」で世界をリードしてまいります。
テレワークの浸透などにより在宅時間が増加傾向にある中、「ゼロエミッション東京」の実現に向けましては、家庭における省エネルギー対策が一層重要となります。こうした観点から、省エネ性能の高い家電への買替えを促す、いわゆる「東京ゼロエミポイント」事業について、来年度も継続して実施したいと考えております。CO2排出量の削減、省エネ投資による経済の活性化、電気代節減による家計支援の3つの側面を持ち、まさに大義と共感を備えたこの施策を通じまして、家庭におけるゼロエミッション行動を促進してまいります。
また、本定例会には、「火災予防条例」の一部改正を提案いたしました。都が働きかけた省令改正に基づいて、高出力の急速充電設備につきまして規制を緩和し、設置しやすくすることで、電気自動車の普及をさらに後押しするものであります。
世界に目を転じれば、例えば中国は、2035年までに新車販売の全てを環境対応車とすることを検討しており、イギリスに至っては、これまでの計画を5年前倒しして、2030年までにガソリン車及びディーゼル車の販売を禁止することを表明しました。ここ数か月、世界の動きは極めて速く、都はこの潮流に後れることなく、むしろ牽引していけるよう、都内を走る全ての自動車のゼロエミッション化を早期に実現していかなければなりません。こうした目指すべき姿に向け、国や自動車メーカー等と連携して、充電器などインフラの整備拡大や車両の開発促進、利用機会の拡大による気運醸成等を通じまして、ゼロエミッションビークルの普及をさらに本格化してまいります。
先のアメリカ大統領選挙では、民主党のジョー・バイデン前副大統領が勝利宣言を行い、アメリカはもとより、世界の環境政策も大きく変容することが見込まれます。この機を捉え、私自身、副議長を務めるC40など国際的なネットワークも活用しながら、気候変動に対する東京発の世界的ムーブメントを起こしていきたいと思います。

5 「人」が輝く東京の実現

東京が誇る「人」の力をさらに高めるため、そして何よりも、都民一人ひとりが夢や生きがいを持って幸せに暮らせる社会を築くため、「人」が輝く東京に向けた取組をさらに推進してまいります。

人生100年時代を安心・元気に暮らせる東京

生涯現役を合言葉に、シニアの方々が学びと交流を深める都立大学の「プレミアム・カレッジ」は、来年度、開設3年目を迎えます。これまで、1年目の本科、2年目の専攻科と学びを進めてきた受講生の強い意欲に応えるべく、さらに最大2年間学べる研究生コースを新設いたします。シニアの方々の熱意溢れるキャンパスは、「Chōju」の都市・東京の一つの象徴であり、引き続き充実した学生生活を後押ししてまいります。
超高齢社会の到来や「新しい日常」への対応など、私たちの生活を取り巻く状況が大きく変わろうとする中、地域生活を支える公共交通もまた、その時代にふさわしい役割を果たしていかなければなりません。2040年代における地域公共交通の目指す姿を描くべく、先般、新たな検討会を立ち上げました。精力的な議論を重ね、高齢者や障がい者をはじめ誰もが移動しやすく利便性の高い、まさに「人」が輝く都市を実現するための基本方針を取りまとめてまいります。
また、交通不便地域の解消のため、利用者の希望に応じまして柔軟に運行するデマンド交通の普及に向けましては、東久留米市による取組を支援するなど、区市町村の導入を後押しいたします。さらに年明けには、民間と共に、デジタルの力で交通利便性を向上させるMaaSの実証実験を開始するなど、多彩な施策を展開して、円滑な移動が豊かな暮らしを支える、活力ある東京を創り上げてまいります。

誰もがいきいきと活躍できる都市に向けて

就労に困難を抱える方々が社会の担い手として働き、活躍する場となるソーシャルファームの普及は、「人」が輝く東京を実現する要の一つであります。その創設を目指す、高い志を持った事業者を力強く後押しするべく、先月、雇用ノウハウの提供や経営相談など、きめ細かなサポートを行う拠点を開設いたしました。事業者の挑戦をしっかりと支えながら、モデルとなるソーシャルファームを、今年度中にここ東京に誕生させてまいります。
加えて、コロナ禍において、解雇や雇止めにより離職を余儀なくされた方々を対象に、労働者派遣制度を活用し安定就労に繋げる新たなプログラムを展開するほか、早期の再就職に向けたマッチング機会の拡大などを図ります。また、先月には、出産・子育て等により離職した女性の再就職支援窓口「女性しごと応援テラス」について、多摩地域の方々の身近な窓口となる「多摩ブランチ」を開設いたしました。厳しい雇用情勢にある中、マザーズハローワークとも連携しながら、切れ目のない支援を行ってまいります。
同じく先月、多摩地域におけるひとり親家庭支援の拠点として「はあと多摩」を設置いたしました。生活の様々な場面で困難に直面するひとり親家庭をきめ細かく支えるため、こうした相談体制の整備に加えまして、就業支援、子育て・生活支援、経済的支援、この4つの観点から施策を展開し、誰もが安心して活躍できる社会を実現してまいります。

「第4期犯罪被害者等支援計画」の策定

犯罪に遭われた方やそのご家族を社会全体で支えるべく、新たに制定した「犯罪被害者等支援条例」の下、見舞金の給付や転居費用の助成など多彩な施策を展開しております。今後とも被害者に寄り添った取組を推進するため、今般、第4期となる「支援計画」の素案を公表いたしました。途切れることなく支援を届けるための関係機関との連携強化、オンラインカウンセリングの実施等、支援・相談体制をさらに充実させる施策を盛り込んでおります。引き続き丁寧な議論を重ねた上で、2月を目途にこの新たな計画を策定してまいります。

6 おわりに

今月8日、国立代々木競技場におきまして、体操の国際大会が開催されました。コロナ禍におきまして、オリンピック競技として初めて国内で開かれた国際大会は、4か国のトップアスリートによる力と技の競演に会場が一体となって、スポーツが紡ぐ絆を改めて感じるものとなりました。同時に、日本企業が開発したAIによる自動採点システムが初めて採用され、我が国が誇る技術を世界に発信する場ともなったところであります。連日のPCR検査や行動制限、マスク着用など、選手一人ひとりの協力を得ながら、安全・安心な大会運営に尽力された関係者の皆様に、心からの敬意を表します。まさしく「友情と絆」の名にふさわしい大会の成功は、オリンピック・パラリンピック開催への大きな後押しともなるものでありました。
このほか、パラスポーツにおきましても、自転車、車いすマラソン、馬術等におきまして全国大会が開催されるなど、大規模なスポーツ大会は着実に復活しつつあります。こうした経験を積み重ねながら、スポーツを心置きなく楽しめる環境を確立し、安全・安心な東京2020大会の実現へと繋げていきたいと思います。
1918年から世界で流行したスペイン風邪は、世界人口が約19億人の時代に患者数は6億人に上り、5千万人とも1億人とも言われる方々が亡くなりました。1920年のオリンピック・アントワープ大会は、このスペイン風邪が終息に向かう中、また、第一次世界大戦で焦土と化したヨーロッパが復興しつつある中、開催された大会であります。史上初めて、オリンピック旗の掲揚や選手宣誓が行われるなど、まさしく「危機の後の連帯と復興」の象徴でありました。それから100年プラス1の2021年、東京2020大会も、人類が新型コロナウイルス感染症に打ち勝った証として、そしてまた、原点である復興オリンピック・パラリンピックとして、成功へと導いてまいります。
大会までの貴重な「プラス1」の日々。引き続き、組織委員会、国、IOC、IPCをはじめとする関係者の方々、そして都議会の皆様、都民の皆様と、まさに一体、一つとなって、「サステナブル・リカバリー」を目指すオリンピック・パラリンピックの新たなモデルを示すべく、力を尽くしてまいります。

なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含めまして、予算案1件、条例案13件など、合わせて59件の議案を提案しております。よろしくご審議をお願いいたします。

最後に、改めて申し上げます。
「何よりも大切な、都民の命を守り抜く」。
そのために、「感染対策短期集中」で、この正念場を早期に乗り越えていく決意であります。都議会の皆様、都民の皆様方のご理解とご協力をお願いをいたします。
以上をもちまして、私の所信表明を終わります。
ご清聴、誠にありがとうございました。

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