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平成29年(2017年)2月22日更新
平成29年第一回都議会定例会の開会に当たりまして、都政の施政方針を述べさせていただきます。
1月26日、木内良明議員が逝去されました。衆議院議員を三期、都議会議員を五期務め、国政及び都政の発展に尽くされました。また、2月2日、名誉都民である元日本サッカー協会会長、岡野俊一郎さんがご逝去されました。ここに謹んで哀悼の意を表し、お二人のご冥福を心よりお祈りを申し上げます。
世界は今、大きな変化の真っ只中にあります。国民投票によりますイギリスのEU離脱、いわゆる「ブレグジット」の決定や、「アメリカ第一」を掲げるトランプ新政権の誕生など、不透明で不安定、渦潮のような状態へと突き進んでいるように思えます。産業や経済構造の変化が生み出した格差拡大への不満を背景に、反グローバリズムのうねりが席巻し、世界中が内向き志向を強めつつあります。
こうした国際情勢を背景に、今こそ、日本の首都東京を鍛え直さなければなりません。東京の発展を支える都政のあり方や、議会との関係の整理・見直しも必要であります。徹底した情報公開は、その第一歩であります。ただし、自分たちの都合のいい情報だけを発信するのでは、情報公開とは言えません。私が「東京大改革」の名の下に、「都政の透明化」を第一に掲げているのは、都民の皆様に、都政の真実を曲げることなく届けることで、都民一人ひとりに考え、判断していただくためであります。実際、これまでにないほど、さらには全国的にも、都政への関心は高まりを見せております。
そして、まさにこの「透明化」が問われる一つの問題が、築地市場の移転問題であります。先月の地下水モニタリング調査の結果については、大変重く受け止めております。改めて、複数の機関による調査を実施し、科学的な分析を進めて、実態を正確に把握した上で、都民の皆様に情報を公開いたします。
先月、築地市場を視察いたしました。消費者である都民・国民、そして働く業者の皆様のために、市場の安全・安心を確実に守らなければならない、その想いをさらに強くいたしました。安全が科学的、法律的な根拠に基づくものである一方、安心は消費者の理解と納得によるものであります。そのためにも、都民の判断に資する情報公開を進めます。専門家会議と市場問題プロジェクトチームの議論を踏まえ、市場の持続可能性もきちんと検討して、都民の皆様のご意見も参考に、総合的に判断してまいります。
一方で、延期に伴う業者の皆様のご負担につきましては、4月からの補償開始に向けて、補正予算案を本定例会に提案いたしております。また、豊洲の用地購入の経緯も明らかにし、引き続き真摯に対応してまいります。
我が国の年間出生数は、統計開始以来、初めて100万人を割り込む見通しとなり、東京でも、2025年を境に人口が減少に転じると見込まれております。社会の持続的な成長は、「知的な創造」こそが源でありますが、それを生み出す新しい世代がこのまま減り続けることは、資源に乏しい我が国にとりまして死活問題であります。内外ともに困難な状況に直面し、未来が不確実さを増している今、従来の延長線上の発想に囚われていては、それこそ渦潮に飲み込まれてしまうことでありましょう。
しかし、見方を変えれば、国際情勢が流動的ということは、東京が世界から高度な人材や投資を呼び込み、成長を加速するチャンスでもあります。旧来の発想から抜け出し、世界の潮流を見極め、為すべきことを為す。そうすることで、都民一人ひとりの希望溢れる未来を切り拓くことができるのであります。
だからこそ、東京を今、大きく改革しなければなりません。現在、そして未来の都民への責任を果たすため、「東京大改革」を進めなければならないのです。東京大改革とは、「透明化」を根付かせ、これまでの延長線を超えた「新たな発想」を常に生み出すために自律改革を重ねて、都政の手法と体質を変えること。そして、都民と共に大義と共感のある政策を進め、誰もがいきいきと輝ける、東京の明るい未来を築くことであります。
就任以来、幅広く都政の課題を掘り起こし、都民目線で「このままでいいのか」と考えるものについては、すでに決まったとされたことでありましても、立ち止まって検証を行ってまいりました。昨年9月に設置した都政改革本部では、オリンピック・パラリンピック予算を見直し、都の施設の整備費を約400億円縮減したところであります。情報公開、内部統制、自律改革、この3つのテーマの改革にも取り組んでおります。
情報公開については、開示請求のあった文書を極力そのまま公開し、いわゆる「のり弁」状態からの脱却を目指します。公文書の閲覧手数料の無料化、ICTを活用した公文書データの無料提供、公金支出情報の公開、各種審議会やその議事録の公開なども進めてまいります。知事の公務日程の公開も始めており、予算編成のプロセスも、公開の場で都議会、区市町村、各種団体の皆様からの要請を直接伺うなど、透明化を進めてまいりました。入札制度につきましても、一者入札、最低制限価格、予定価格の事前公表などの見直しを検討中であります。
自律改革については、都政改革本部の本部員である各局長を中心に各現場で取り組んでおり、これまでに都民サービスの向上や事業の効率化など、500件近くのテーマに対応してまいりました。個々の職員からも、職員目安箱に対し約600件の提案が寄せられております。その提案をきっかけに、先日は都立高校の一つを訪問し、未来を担う生徒の皆さんにエールを送らせていただきました。自分の提案で、知事と共に東京をより良く変えていける。職員にそう思ってもらうことが、都民ファーストの都政に繋がると信じています。
実は都庁は、平成18年度を最後に、いわゆる行政改革のプランを策定しておりません。そこで4月から、「2020年に向けた実行プラン」と対をなす「2020改革プラン(仮称)」の策定作業を始め、業務の効率化、官民の適切な役割分担、監理団体の戦略的活用、時代に合った人事制度や執行体制の見直しなどに取り組む予定であります。その先駆けとして、先日、ライフ・ワーク・バランスに関するプロジェクトチームを設置いたしました。
併せて、来年度からは、各局の自律改革のレベルも上げてまいります。これまでの現場改善のレベルから、都民ファーストや賢い支出の視点に立った経営・戦略改革のレベルへと上げていく。そのため、当面は、主要事業の実態の情報公開、すなわち「見える化」を図り、適正な予算、人員、サービス水準となっているか、また、他により有効な政策がないかなど、総合的な見直しを行ってまいります。
このように、今後の都政改革では、情報公開を基軸にしつつ、都民ファースト・賢い支出の観点からこれまでの組織、制度、政策の全てを包括的に見直すことで、都庁を柔軟な発想で課題を解決する組織へと磨き上げてまいります。
なお、現在、国において文部科学省の再就職が大きな問題となっております。都は昨年度、条例を制定し、第三者委員会によるチェックなどの運用を行っているところでありますが、この際、再度、幹部職員の再就職について、監理団体のあり方と併せて検証してまいります。
手法と体質を変えた新たな都政の下で実現を目指す「新しい東京」。その具体的な道しるべとなるのが、私の知事としての最初の総合計画である「2020年に向けた実行プラン」であります。「セーフ シティ」「ダイバーシティ」「スマート シティ」。この「3つのシティ」の実現に向けた道筋を明らかにし、東京のさらなる成長のための「4つの挑戦」と「5つの戦略」を掲げております。大義ある500余りの政策目標を、それぞれ具体的な工程に従って着実に達成し、都民の皆様の共感を追い風に、「未来への航路」を突き進んでまいります。
私たちの目の前に広がる可能性は無限であります。実行プランにおきましても、「Beyond2020」として、2020年の先の明るい未来像の一端を掲げました。私は、さらに夢を膨らませ、それこそ大風呂敷を広げるかのように、まだ見ぬ東京の姿を大胆に描いていきたいと考えております。先月、未来のビジョンを語る懇談会を開催し、各分野で活躍される高校生から40代半ばまでの皆様方の豊かな発想に、大変刺激を受けました。「東京のこれから」への責任を負う政治家として、次代を担う若い世代と大いに語り合い、果敢に未来を切り拓いてまいります。
そして、実行プランのまさしく「実行力」を支えるのが、知事として初めて編成し、この議会でご審議をいただく平成29年度予算案でございます。都税収入は景気に左右されやすく、世界の経済動向も不透明でありますが、今後の社会保障やインフラの維持更新など、都は膨大な財政需要を抱えております。まさしく「ワイズ・スペンディング」、賢い支出が求められる中、「新しい東京」の実現に向けた真に必要な投資を積極的に行うため、そして無駄の排除を徹底するため、知事査定には例年の倍の日程を充ててまいりました。その結果、今回の予算案は、「格差」と「段差」、すなわち「男女や教育機会の格差」と「街の段差」を解消する施策を含め、過去最高となる382件の新規事業を盛り込むなど、大義溢れるものに仕上がりました。同時に、事業評価の徹底などによりメリハリを利かせることで、財政構造改革の一層の推進を図り、一般会計の規模は5年ぶりの減少となる6兆9540億円としております。まさに、「改革を強力に推し進め、明るい未来への確かな道筋を紡ぐ予算」と言えましょう。
この予算案には、将来の東京への私の想いや、私がかねてより温めてきた政策が詰まっております。ご審議をいただく中で、議会の皆様と、未来を拓く議論を重ねていきたいと存じます。そして、都民の皆様に、都民ファーストの都政が導く明日への希望を実感していただけるよう、全力を尽くしてまいります。
これより、主要な政策について申し述べてまいります。
あと3年と迫りました2020年のオリンピック・パラリンピックにつきましては、都民・国民のワクワク感を高め、誰もがやって良かったと思える大会へと導くため、開催都市として主体的に準備を加速してまいります。
昨年末、経費を削減し、大会後の有効活用やライフサイクルコストを考慮した上で新設を決めた3つの会場は、具体的な整備が始まっております。都民に長く愛されるレガシーとすべく、例えば、バレーボール・車椅子バスケットボールの会場となります有明アリーナの周辺については、民間の創意工夫も取り入れながら、スポーツと文化の新たな拠点としてまいります。
準備に万全を期すため、費用負担のあり方や輸送、治安対策等につきましても、組織委員会、国、関係自治体との連携を密にしっかりと対応してまいります。昨年末、私が提案して設置されました関係自治体との作業チームでは、仮設施設に加え、輸送、警備などで膨大な業務があることが明らかになりつつあります。都は、開催都市としての責任を重く受け止め、真摯に協議を続けてまいります。その際、組織委員会が負担することになっている仮設整備につきまして、他の自治体が所有する施設を含め、都も負担することを排除せず、検討するよう事務方に指示をいたしました。
一方で、都民・国民の皆様との一体感も高めたいと存じます。家庭に眠るいわゆる「都市鉱山」からメダルを作る。公式商品をPRする。大会を支えるボランティアのやりがいや楽しさを発信する。「TEAM BEYOND」への登録や「チャレスポ!TOKYO」などのイベントへの参加を呼びかけ、パラスポーツを一緒に盛り上げる。多くの皆様に大会を身近に感じていただけるよう、多彩な取組を進めてまいります。フラッグツアーも、福島、宮城、岩手に続き、熊本をはじめ全国各地を巡るなど、オールジャパンの気運も着実に高めてまいります。そして、世界中に興奮と感動を呼び、「記録」と「記憶」が人々の心にいつまでも残る大会を、都民・国民の皆様と共に実現をしてまいります。
成熟都市として迎える東京大会は、大規模な都市開発で戦後の復興を印象づけた1964年の前回大会とは異なります。一人ひとりの暮らしを見つめる細やかな目を持ち、誰もが「優しさ」を感じられる社会を実現する契機としなければなりません。
その象徴ともなるのが、皆様の足元にある「段差」の解消であります。道路のバリアフリー化については、競技会場や観光施設周辺の都道において重点的に進めるとともに、区市道への支援も新たに開始し、面的に広げてまいります。加えて、隅々にまで目を凝らし、きめ細やかに東京の「バリア」を解消していくことも必要であります。都営バスへの新たなフルフラットバスの導入、鉄道駅におけるエレベーターやホームドアの設置、そしてトイレの洋式化など、パラリンピックも見据えて、幅広い取組を進めてまいります。
東京の安全・安心なくして、大会の成功は成し得ません。ハード、ソフトの両面からしっかりと対策を打ってまいります。
「新しい東京」を創り上げる上で、その基盤となるのは、「セーフ シティ」の確立であります。昨年末に新潟県糸魚川市で発生した大規模火災は、木造住宅密集地域を抱える東京も他人事ではありません。災害に強い都市に向け、市街地の不燃化や延焼遮断帯の形成、緊急輸送道路沿道の建築物の耐震化など、「燃えない・倒れないまちづくり」に加え、近年頻発する集中豪雨への対策などにも着実に取り組んでまいります。
震災時に迅速な避難・救助活動を行う上で、電柱倒壊による道路閉鎖は大きな妨げとなります。無電柱化の推進に向け、この先の財政需要に備える新たな基金を設置をいたします。今後、都道への電柱新設の禁止、コスト縮減に繋がる技術開発の推進等を定めた条例案を早期に策定するほか、区市町村への支援も充実し、無電柱化を加速してまいります。
ソフトの対策としては、町会・自治会等による防災活動を後押しするため、コンサルタントの派遣やサポートガイドの作成を行います。消防団の装備充実や入団促進も図るなど、地域の防災力を向上させてまいります。女性の力も、もっと活かすべきでありましょう。女性の防災リーダー育成や、女性の発想を詰め込んだ防災ブックの作成など通じまして、地域の活動に女性の視点が反映されるように取り組んでまいります。さらに、国や関係団体と連携し、乳児用液体ミルクの国内製造に向けた検討も進めており、誰もが安心できるきめ細かな災害対策を実現してまいります。
テロ対策にも万全を期してまいります。東京の玄関口である羽田空港の警備強化や、官民連携の基盤づくりを着実に進めます。IoTやAIといった技術進歩に伴い増加が見込まれるサイバー空間の脅威については、捜査体制のさらなる強化に加え、中小企業に対する普及啓発の充実やセキュリティ対策費用の支援などにも取り組んでまいります。加えて、地域における防犯カメラ設置への支援も充実するなど、都民生活の安全・安心を確実に確保してまいります。
世界の注目を集める東京大会を機に、東京の魅力と品格を高め、より洗練された都市を創り上げていきたいと存じます。
大手町・丸の内・有楽町地区、六本木・虎ノ門地区、渋谷駅周辺などでは、国際ビジネスや先進的な生活文化など多様で魅力ある拠点づくりが進んでおります。今後、新宿や品川におきましても、世界の人々を惹きつける国際交流拠点の形成に向けたまちづくりに取り組んでまいります。
都心での拠点整備に加え、都内全体、さらには東京圏全体を俯瞰し、各地の拠点が担うべき機能を明らかにすることも必要であります。広域的かつ中長期的な視点から、目指すべき都市像とその実現に向けた具体的な施策を示す「都市づくりのグランドデザイン(仮称)」の検討を進めております。各拠点の交流を促進する三環状道路の整備も着実に推進しながら、ヒトやモノが活発に往来をし、持続的に発展する魅力溢れる都市を創り上げてまいります。
昨年のリオデジャネイロ大会を契機に、東京・日本の伝統文化や最先端の現代アートは、益々世界の注目を集めております。東京大会に向け、いよいよ「東京文化プログラム」は本格的に展開をしてまいります。来年度は新たに、都民が主役となる大規模な文化活動への支援や、アーティストも鑑賞者も、誰もがワクワクする企画を公募するプロジェクトを開始をいたします。都民と共に大いに盛り上げ、集大成として2020年に開催する文化フェスティバルへと繋げてまいります。
また、都民がもっと文化に親しむことができるよう、アール・ブリュットの拠点など、心を揺さぶるような芸術を東京に根付かせる基盤の整備を進め、世界オンリーワンの文化都市を創り上げてまいります。
受動喫煙防止対策につきましては、都民の健康増進のため、そして、オリンピック・パラリンピックのホストシティとしての責任を果たしていくため、しっかり取り組まねばなりません。そのあり方につきましては、様々な議論がなされておりますが、国の法制化の動きを注視しつつ、都民の意識や、飲食店・宿泊施設の実態等について調査を行うなど、対策に向けた準備を加速してまいります。
動物愛護の取組につきましては、平成31年度までに殺処分ゼロを達成するため、子供が命の大切さを学ぶ機会の充実や、動物譲渡に関する情報発信サイトの開設などに取り組んでまいります。老朽化した動物愛護相談センター本所については、移転改築し、都民が来所・見学しやすい環境や譲渡会等のイベントを開催するスペースを整えるなど、「新しい飼い主への架け橋となる施設」にしたいと思っております。
「新しい東京」への扉を開くのは、都民一人ひとりの力であります。その力を存分に引き出すため、「格差」の解消を進めてまいります。
その一つが、世界144か国中111位というランキングが根深さを物語る、「男女の格差」の解消であります。
女性活躍を阻む待機児童問題に対し、来年度は大胆に予算を配分をいたしました。平成31年度末までに待機児童ゼロとするために、かつてないほど抜本的な取組を展開してまいります。
まずは、保育人材の確保・定着であります。保育士の処遇改善策として、現行のキャリアアップ補助を拡充し、モデルケースで保育士一人当たり月額2万1千円の給与改善に繋げてまいります。加えて、産休・育休明けの保育士へのベビーシッター代補助や、業務負担軽減に向けた保育所のICT化支援も開始をいたします。きめ細やかな施策で、多くの方々が保育というやりがいある仕事に就き、長く働ける環境を整えてまいります。
また、民有地を活用した保育所等の整備を推進するため、23区内で保育所用地を有償で貸し付ける場合に固定資産税・都市計画税を10割減免する新たな税制支援を導入いたします。企業が従業員のために設置し、その働き方に応じた柔軟な保育サービスを提供する「企業主導型保育施設」についても、設置・運営に関する相談窓口や、開設費用の一部を独自に支援する助成制度を設け、整備を促してまいります。さらに、預かり保育の拡充や小規模保育施設の卒園児受入れに積極的な私立幼稚園への支援を充実し、保育施設以外の選択肢も増やすことで、仕事と育児の両立をしっかりと後押しをしてまいります。
待機児童対策は、決してこれで一段落ということではございません。引き続き、効果的な施策を強力に推し進めてまいります。
女性の起業も増やしていきたいと思います。先月、丸の内に開設した「TOKYO創業ステーション」において、女性起業家向けのセミナー開催や相談員配置などのサポートを行うほか、新たなビジネスを支援する民間のインキュベーション施設の整備を促進いたします。世界市場を目指す女性に対しては、短期集中型の支援プログラムや海外派遣の機会の提供など、その志の実現を力強く応援してまいります。
先月、東京の教育の根本方針となる教育施策大綱を策定をいたしました。重要事項の冒頭には、「全ての子供が学び成長し続けられる教育の実現」と謳っております。子供たちの希望ある未来のため、東京の最大のエネルギーである豊かな人材の育成のため、給付型奨学金を創設・拡充し、家庭の経済状況による「教育機会の格差」を解消してまいります。OECD加盟国においては、多くの国々で教育に対する手厚い支援が行われておりますが、教育への投資はまさに「未来への投資」であります。
そこで、都立高校生については、勉強合宿の費用や資格試験の受験料など、学校における学習活動経費を新たに支援してまいります。また、東京においては、高校生の約6割が在学する私立高校が、それぞれ特色ある教育を行い、多様な人材を育成する上で極めて重要な役割を果たしております。そのため、私立高校生につきましても、年収約760万円未満の世帯を対象にさらなる授業料負担の軽減を図るとともに、無利子の入学支度金貸付額を引き上げてまいります。東京の未来を担う「人」に焦点を当てた支援を拡充し、誰もが個性と能力に応じて希望する教育を受けられる環境を整えてまいります。
子供の基礎学力の定着も徹底をいたします。学力向上に力を入れる小・中学校への教員の追加配置や、高校生の学び直しを支援するプログラムの実施など、新たな取組を展開してまいります。加えて、都立高校において、文系理系の境を越えた総合的な価値創造力を育成する。あるいは、いわゆる「JETプログラム」により学校へ配置する外国人を増員し、授業以外でも「生きた英語」を学ぶ機会を増やす。こうした、子供たちの強みを伸ばす教育にも力を入れてまいります。
一方、子供たちの学びを支える教師力・学校力を強化していく上で、教育管理職の不足は深刻な問題であります。そこで、来月、教育管理職の確保をテーマとして総合教育会議を開催することといたしました。教育委員会と協議しながら、学校現場の課題にもしっかりと向き合ってまいります。そして、グローバル化の進展や情報技術の発展といった社会の変化に対応し、輝く未来を創造する人材を数多く育ててまいります。
ようやく日本でも、働き方の見直しに本腰を入れて取り組む気運が生まれつつあります。個人のライフスタイルに見合った働き方こそ、一人ひとりの100%の力を引き出し、社会全体の生産性を高める鍵であります。引き続き4000社を目標に、民間企業の働き方の見直しを支援してまいります。一方、都としても、新たに設置したプロジェクトチームにおいて、職員の声を踏まえて仕事の仕方や能力開発等を幅広く検討するなど、生産性の向上、そして残業ゼロへの意識改革をさらに徹底して、首都東京における「働き方改革」を力強く牽引してまいります。
私は、時間や場所に囚われずに仕事ができるテレワークの推進を、働き方改革の起爆剤にしたいと考えております。今回の予算編成に当たり、知事査定は初めてタブレット端末で実施をいたしました。ペーパーレスで仕事を進めることはテレワークへの第一歩であり、今後、この動きを全庁的に展開したいと思います。民間企業におけるテレワーク導入に向けては、国と連携して、情報収集や体験・相談がワンストップで行えるセンターを開設をいたします。将来的には、テレワークを導入している企業と求職者とのマッチングも行う考えであります。また、「在宅勤務」「モバイルワーク」「サテライトオフィス」といった働き方は、住まいに近接した場所での仕事を可能とし、仕事と育児の両立にも役立ちます。このような施策の相乗効果も勘案しながら、様々な形態に応じたモデル事業の実施や、実際に導入する企業への費用助成など、一貫した取組でテレワークを強力に推進してまいります。
満員電車の混雑緩和も、社会の生産性向上のための重要な課題であります。国や民間企業等と共に「快適通勤プロモーション協議会」を立ち上げ、時差出勤の導入や混雑の見える化など、鉄道利用の分散に向けたムーブメントを展開をいたします。小田急線の一部区間では、来年度、都の連続立体交差事業と一体となった複々線化の完成が見込まれ、輸送力の強化が図られます。今後とも、鉄道の利用者・事業者双方に働きかけ、快適通勤の実現に向けて幅広く取り組んでまいりたいと存じます。
誰もがいきいきと生活できる環境は、人々を明るくし、東京全体を元気にします。高齢者や障がい者の暮らしをしっかりと支えてまいります。
不足する特別養護老人ホームの整備に当たり、最大のネックは土地の確保であります。そこで、区部と比べまして土地確保が比較的容易な市町村に対し、地域のニーズを超えた特養整備へのインセンティブを設けることで、広く都民が利用できる施設を都内全体で増やしていきたいと思います。
介護保険サービスと保険外サービスの一体的な提供を可能とし、利用者の利便性向上や職員の処遇改善が期待できる介護のあり方が注目されております。利用者のサービス選択を重視する、いわば「選択的介護」の実現に向けて、豊島区と連携をいたしまして、先日、国家戦略特区の区域会議に提案をいたしたところであります。特区の認定に向けて、モデル事業の準備を進めてまいります。
介護人材の確保・定着も大きな課題であります。キャリアパスを導入する事業者の支援を強化し、職責に応じた処遇の実現に繋げていきたいと思います。一方で、福祉現場への就労支援のためのシステムを新たに構築し、求職者や離職者の目線に立った情報を提供するなど、介護に馴染みのない方々も含めた人材の掘り起こしにも取り組んでまいります。
医療技術の進歩を背景に、障がいのある新生児の救命率が向上し、日常生活において医療的ケアを必要とする子供たちが増えております。適切な支援の実施に向け、障がい児の通所支援施設や特別支援学校、保育所等への看護師配置などを推進してまいります。
障がいのある方々の雇用や社会参加の推進にもしっかりと取り組まなければなりません。新たな就労支援の概念である「ソーシャルファーム」の仕組みづくりを支援するため、障がい者団体と企業のCSR活動のマッチングを促進するなど、能力や適性に応じた働く場の創出を進めてまいります。
東京は、日本経済のエンジンであります。積極果敢な成長戦略により、激化する都市間競争に勝ち抜き、日本の持続的な経済成長をリードして、アベノミクスにもプラスの効果を生み出してまいります。
昨年、日本を訪れた外国人旅行者は約2404万人と、初めて年間2000万人を突破いたしました。東京におきましても、2020年までに2500万人という目標を確実に達成するため、先月公表いたしました「観光産業振興実行プラン2017」に基づいて戦略的に施策を展開し、世界最高の「PRIME 観光都市」を実現してまいります。
観光の活性化を考える上で、マーケティング目線は極めて重要であります。海外による東京・日本の評価をしっかりと把握しなければなりません。先日、元駐日米国大使夫人であるスーザン・H・ルース氏から、東京の観光振興について貴重な提言もいただきました。世界中に魅力をいかにして理解してもらうかという観点から、東京を世界に向けてPRする、分かりやすい新たなアイコンとキャッチフレーズの作成も進めております。海外の視点を十分に踏まえながら、東京の観光振興やブランディングのあり方について、有識者の方々と検討を重ねてまいります。
東京らしい印象的な景観を増やすため、「光の演出」をさらに展開をいたします。水辺や庭園などで見られるライトアップを活用し、何気ない地域の桜や紅葉も付加価値を高めてまいります。プロジェクションマッピングの活用も含め、日常と異なる都市の表情を大いに引き出してまいりましょう。
MICE誘致も重要な課題であります。特別感を演出できるレセプション等の会場であるユニークベニューの増加に向け、8つの都立施設をモデルとして活用いたします。利用にふさわしい場としての整備や、積極的なPRを進め、ユニークベニューを充実することで、MICEの増加に繋げてまいります。
世界からヒト・モノ・カネ・情報が集まり続ける、アジアナンバーワンの国際金融・経済都市へ。激動の国際情勢にしっかりと目を向けながら、世界から選ばれる最先端都市への道を歩んでまいります。
国際金融都市にふさわしい金融産業、とりわけ資産運用や、フィンテックをはじめとする新しい分野の企業と人材を東京に集積させるためには、ニーズを踏まえた支援が必要であります。無償コンサルティング、金融ワンストップ支援サービス等の提供に加えて、就任早々に特区の区域会議へ提案いたしました外国人材による家事支援サービスにつきましても、早速、開始できる体制が整いました。ビジネスの検討から生活面まで、海外からの東京進出をきめ細かくサポートしてまいります。さらに、世界の都市間競争が激化する中で、海外から東京への流れを確実なものとするためには、これまでの既成概念や既得権益に囚われることなく、本質的な課題にも切り込んでいかなければなりません。規制、税制、業界慣行にまで踏み込み、教育の充実や、顧客に対する金融機関の「受託者責任」の徹底なども含めて、国内外の専門家を交えた懇談会で対応を検討しております。その答申を参考にしつつ、秋には「東京版金融ビッグバン」とも言うべき新たな構想を取りまとめてまいります。東京都が先兵として自ら可能な限りの対応を行いつつ、国家戦略として政府にも必要な協力を求めて、東京を世界に売り込んでまいります。
経済の活力と成長をもたらすイノベーションを絶えず生み出す鍵は、都内企業の99%を占め、高い技術力を有する中小企業にあります。成長産業への参入や新たな価値の創出に向け、設備投資から技術支援、IoT化による生産性の向上まで、中小企業を多面的に支援するとともに、福祉・環境など都の政策課題に対応した技術の開発も促進してまいります。また、グローバルな活躍を目指す起業家やベンチャー企業の挑戦を後押しし、次代のイノベーションの担い手として育てることも重要であります。開業手続きを一元的に支援する「東京開業ワンストップセンター」のサテライトセンターを、4月に渋谷に、その後、丸の内にも設置いたします。TOKYO創業ステーションとのネットワークを強化して、創業準備から開業手続き、事業化まで、「切れ目のない」総合支援体制を構築してまいります。さらには、「国際金融都市・東京」構想とも連携し、国内外の大企業や投資家とのネットワーク形成の支援、ベンチャーファンド創設による投資の呼び込みなども進めてまいります。
先端技術の一つの象徴である自動運転については、レベル4の完全自動走行を見据えた実証実験を行うため、官民一体となった「自動走行サンドボックス分科会」の設置を特区の区域会議に提案し、了承されたところであります。羽田空港周辺地域等における最先端の実験に向けて、安全性を確保しつつ、事前の手続きを抜本的に簡素化する全国初の「サンドボックス」特区を積極的に活用してまいります。
本定例会には、イノベーション創出に向けた基金を新設する条例案も提案いたしております。新たな技術が、東京の成長を持続的に牽引する。そのための確固たる基盤を築いていきたいと思います。
環境の分野におきましても、先進的な取組を展開してまいります。
照明のLED化は、スマートエネルギー都市の必須要件であります。まずは都有施設において率先して導入を進め、民間ビルについても、省エネルギー化のメリットをオーナーとテナントが分け合う「グリーンリース」の普及により、LED導入に繋げたいと思っています。そして、家庭への普及を進める起爆剤として、白熱電球2個とLED電球1個を無償交換する公正な取組を開始いたします。仮に家庭の白熱電球200万個がLED電球に置き換えられれば、年間で1億8000万キロワット時の削減が可能で、これは都庁舎の電力消費量の約5年分に相当いたします。一人ひとりの取組による大きな効果を実感していただくことで、都民の共感と意識改革に繋げ、改めて、東京に省エネのムーブメントを巻き起こしてまいります。
住宅そのものを省エネ型に転換する取組も進めます。高断熱窓の導入を支援し、都が推奨するエコハウスの水準を普及させるなど、家庭におけるエネルギー消費量の削減に繋げてまいります。
利用段階でCO2を排出しない水素エネルギーについても、都営バスへの燃料電池車の一部導入や、羽田空港における燃料電池フォークリフトの実証事業等を通じて、本格普及を目指してまいります。
そして、都の環境施策を都民・国民の投資を通じた後押しによって強力に進めるため、来年度、200億円規模の「東京グリーンボンド」を発行いたします。昨年12月にトライアルとして発行した「東京環境サポーター債」は売出し初日に完売をし、環境に対する都民・国民の関心は非常に高いことを実感をいたしました。そうした気運をさらに高め、幅広い共感を力に、環境先進都市・東京をさらに磨き上げてまいります。
緑の創出・保全にも力を入れてまいります。東京の「みどり率」は、長期的に低下傾向が続いております。ヒートアイランドの緩和や良好な景観の形成など、都市の緑が持つ多面的な機能を次世代に確実に継承していくため、都民に身近な花による緑化や、都立公園の緑の確保等に取り組んでまいります。江戸東京野菜の生産や多摩産材の活用、新たな担い手の確保など、東京の農林水産業を活性化しながら、農地や森林を守らなければなりません。多摩川上流域における民有林の購入やボランティアによる森林保全を通じて水源を育むなど、都内全体で貴重な緑を守る気運を高めてまいります。
日本の美徳である「もったいない」の心を呼び醒まし、生活様式にも持続可能の概念を浸透させてまいります。例えば、日本国内で年間に発生する食品ロスの量は、1300万都民の全員が1年間に食べる量に匹敵をいたします。賞味期限の迫った防災備蓄食品の配布等の機会も活用し、こうした実態を広く知っていただくことで、「食べずに捨てるなんてもったいない」という消費者の共感を呼び起こし、関連企業の方々との対話も通じまして、食品廃棄を前提としない加工・流通等の新たなビジネスモデルの構築に繋げてまいります。
世界の事例に学ぶべき点もあります。レジ袋を提げて家路を急ぐ人々の姿は、日本ではまだまだお馴染みでありますが、フランスではすでに、使い捨てレジ袋の配布が禁止されております。都におきましても、まずは無償での配布ゼロに向け、小売店・消費者双方への働きかけを進めてまいります。
東京の多面的な魅力を発揮していくためには、多摩・島しょ地域の発展も欠かせません。
多摩地域には、大学や研究開発型の企業が集積しております。その強みをさらなる創業へと繋げていくため、セミナーの実施やインキュベーション施設の整備を支援するなど、多摩の「ものづくり創業」を活性化いたします。また、南北方向に加え東西の道路整備を推進し、広域的な道路ネットワークも形成するなど、多摩地域の一層の発展に向けました基盤を整えてまいります。
東京の島々の魅力も、もっと多くの方々に知っていただきたい。ブランディングやマーケティング等の専門家からなる「東京宝島推進委員会」を立ち上げ、隠れた魅力を掘り起こすとともに、付加価値をつけて広く発信してまいります。観光客に選ばれる島を目指して各島が魅力を競い合う取組を進め、島々を船舶で周遊する「婚活ツアー」なども後押しして、島しょ全域の観光振興に結びつけてまいります。なお、先月訪問した大島町では、特定外来生物であるキョンによる食害等に悩まされており、対策の強化を検討してまいります。
一口に多摩・島しょ地域と言っても、市町村ごとに地理的条件も産業構造もそれぞれであります。そこで、先日より、39の市町村全ての長の皆様から直接、各自治体が抱える課題や要望についてお伺いをしてまいりました。貴重なご意見は、今後の振興や課題解決にしっかりと活かさなければなりません。多摩地域の振興に向けては、2020年の先を見据え、目指すべき姿を明らかにする「多摩の振興プラン(仮称)」を、地域の方々との意見交換も行いながら策定をしてまいります。
来月には、八丈町、青ヶ島村を訪れる予定といたしております。今後も、積極的に多摩・島しょ地域に足を運び、市町村と緊密に連携を図って、各地域の課題解決を力強く進めてまいります。
「不一致があれば、調和をもたらしたい。
誤りがあれば、真実をもたらしたい。
疑いがあれば、信頼をもたらしたい。
そして、絶望があれば、希望をもたらしたい。」
このように、英国のマーガレット・サッチャー元首相は語りました。
私が目指す都政とは、都民の皆様一人ひとりが、希望を持てる東京を実現することに他なりません。
「今日よりも明日がいい。明日よりも明後日がもっといい。」と、誰もが希望を持って、毎日をいきいきと過ごせる東京を実現する。五十年、百年先も世界をリードするため、歴史の転換点となるような取組を推し進める。同じ志を持つ皆様と共に、東京大改革に邁進してまいりたいと存じます。
なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含めまして、予算案31件、条例案34件など、合わせて89件の議案を提案しております。よろしくご審議のほどお願いを申し上げます。
以上をもちまして、私の施政方針表明を終わります。
ご清聴、誠にありがとうございました。
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