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平成29年(2017年)6月1日更新

平成29年第二回都議会定例会知事所信表明

平成29年第二回都議会定例会の開会に当たりまして、都政運営に対する所信の一端を述べさせていただきます。

ただいま、多年にわたり都政に貢献された2名の議員の方々、表彰をお受けになりました。都政の発展に尽くされたご功績に対して、深く敬意を表し、心からお喜びを申し上げます。

冒頭、市場の移転問題に関して、私の考えを申し述べさせていただきます。
「豊洲に移転すべき」「築地に残るべき」など、様々な意見があることは理解をいたしております。そして、「移転すべき」という意見の中では、「きちんと安全を担保して移転すべき」という都民の皆様のお声が多いことも、もちろん承知をいたしております。
私が豊洲への移転の延期を決めた最も大きな要因は、豊洲市場の安全性への懸念、2年間の地下水モニタリングの結果を見届けることにございました。結果はご存知のとおり、これまでの都知事が市場業者の皆様、都民の皆様にお約束をし、都議会が付帯決議をした「無害化」が達成できていないという状態であります。業者の皆様が「約束が違うではないか」と憤る中、専門家会議は休会の状態にあります。
しかし、「無害化」を約束したのは専門家会議ではありません。かつての都知事をはじめ、東京都であります。都議会での付帯決議も、法的拘束力を有するものではないとはいえ、尊重されるべきものでございます。
現場を担う業者の皆様には、お約束を守れなかったことを、都知事としてお詫びを申し上げます。また、860億円もの土壌汚染対策を施しながら、未だお約束を守れていないことを、都民の皆様にお詫びを申し上げます。

1 なすべきことを、なす

さて、過去20年の間に、東京は、アジアナンバーワンの金融拠点の地位をシンガポールや香港に奪われ、物流拠点は上海、ハブ空港は仁川の、それぞれ後塵を拝しつつあります。これまでの延長線をなぞるだけの都政では、躍動感溢れる東京を復活させることはできません。私が昨年8月に都知事に就任して以来進めてきた「東京大改革」は、首都東京を、将来にわたって、経済、福祉、環境などあらゆる分野で持続可能な「新しい東京」へと再構築することであります。世の中の既成概念、そして、一部の人たちの既得権益や馴れ合いで物事を決めているようでは、都民のための改革など成し得ないのであります。
今日、時代の流れはあまりに速く、「新たな段階」に入った北朝鮮の脅威や、総選挙を来週に控えたイギリスのEU離脱問題をはじめ、国際情勢も激動の最中にあります。こうした中にありまして、東京が世界の都市間競争に打ち勝ち、成長を続けていくためには、時代の流れ、環境の変化、的確に捉え、グローバルな視点を持ちながら、山積する課題に果敢に取り組まなくてはなりません。なすべきことを、なしてまいります。
そのための基礎として、都は「都民ファースト」「情報公開」「賢い支出」の3つの原則を徹底いたします。これまでの都政の体質を変えていかなければなりません。その上で、都民の皆様と共に大義と共感のある都政を進め、なすべきビジョンである「セーフシティ」「ダイバーシティ」「スマートシティ」の「3つのシティ」を実現する。この「東京大改革」を成し遂げることこそ、都知事としての私の最大の目標でございます。

2 都政改革をさらなる高みへ

情報公開を都の文化に

都の体質を変える装置として就任直後に設置した都政改革本部の下、各局は互いに切磋琢磨しながら、政策の見直し、都民サービスの向上、そして事業の効率化のための合計486件の自律改革に取り組んでまいりました。若手からベテランまで、職員に改革マインドを浸透させつつ、今後もさらに高い次元の改革を進めてまいります。
都政の一層の透明化に向けては、二つの条例案を本定例会に提案をいたしております。「情報公開条例」の改正により、公文書について、閲覧手数料を廃止し、紙による写しの交付手数料も最低限とするほか、ICTを活用して、データの無料での提供も進めてまいります。また、新設する「公文書の管理に関する条例」は、公文書の適正な管理こそ情報公開の基盤であると位置づけ、その適切な整理・保存や厳格な手続きの下での廃棄、文書による事案決定等を徹底するものであります。この二つの条例案を梃子として、「都民に開かれ、都民と共に進める都政」に向けた透明化をさらに前進させて、情報公開を都の文化としてしっかりと根付かせていきたいと考えております。

着実に変わりつつある都政

2月の施政方針表明において、これまでの組織、制度、政策の全てを包括的に見直すとした今後の都政改革では、3つの新たな改革を進めてまいります。第一は「しごと改革」。これは、個々の職員に着目し、その仕事のやり方、職場環境を広く見直して、生産性の向上とライフ・ワーク・バランスの実現を目指すものであります。第二は「見える化改革」。各局の主要事業について、コスト、人員、成果を数値によって見える化し、他の都市や民間企業との生産性の比較も行うものであります。これによりまして、今後の政策の見直しや効率化、監理団体や民間企業との役割分担の抜本的見直しを行うなど、これまで現場レベルで取り組んできた自律改革を、経営・戦略改革のレベルへと引き上げてまいります。そして、第三は「仕組み改革」。ここでは、情報公開や内部統制の取組を一層強化するとともに、監理団体・報告団体の役割のあり方や、人事制度・行政評価といった各種管理ツールの見直しなど、執行体制の強化等に取り組んでまいります。
これら3つの改革の原点は、「都民ファースト」「情報公開」「賢い支出」であります。この3つの物差しに照らし、若い職員の意見も参考にしながら、各局は自らの政策や事務等を点検し、局の未来の姿を考えてまいります。そして、都政改革本部は今後、3つの改革を有機的に連携させる司令塔と位置づけます。すでに4月から取組を始めておりまして、年度末には、向こう数年にわたって持続的な改革を進めるための「2020改革プラン(仮称)」を策定してまいります。
入札契約制度についても、都民に疑念を抱かれないための透明性の確保に向け、改革を進めております。業界団体へのヒアリング結果を踏まえ、実施方針について中小の事業者にさらに配慮した見直しを加えた上で、今月下旬から制度改革の試行に取り組んでまいります。
これらの改革を担う職員は今、「都民ファーストの視点」「視野を広げて常にチャレンジ」「ライフ・ワーク・バランスの実践」の3つをミッションとして、新たな発想で希望溢れる東京を実現すべく日々取り組んでおります。先月には、都民に信頼される都政であり続けるため、職員が遵守すべき「コンプライアンス基本方針」を制定をいたしました。これまでに3回開催した「東京未来ビジョン懇談会」におきましても、各分野の気鋭の若い皆さんが数々の幅広いアイデアを提起し、明るい未来を切り拓くための大いなる刺激を与えてくれております。都政が着実に変わりつつある中、引き続き職員の先頭に立って、誰もが輝く「新しい東京」に向けた東京大改革を力強く進めてまいります。

3 市場の移転問題

東京の明るい未来を築くために、都政は今、何をなすべきなのでありましょうか。このことを問いかける象徴的な問題が、市場問題であります。50年、100年の「鳥の目」で市場のあるべき姿を考え、真に都民のためとなる結論を導いて、未来の都民にも責任を果たしていく。そのためには、問題を「どちらが安全か・安心か」という一点で捉えるべきではありません。
もとより安全・安心は、この問題における最大の課題であります。豊洲市場につきましては、「無害化」が実現できていない中、法的・科学的根拠に基づく安全と、都民の理解・納得に基づく安心が確保できるのか、ロードマップに沿って総点検を進めております。さらに忘れてはならない視点は、市場の移転が長年議論されている間に生じた物流環境の変化、そして、都民にとっての費用と効果であります。築地市場における水産物の取扱数量は年々減少し、30年前の約半分となっております。こうした環境の変化を踏まえまして、今後の市場の経済合理性、持続可能性も検討して、的確な結論を導いていく必要がございます。
専門家会議、市場問題プロジェクトチームはそれぞれ審議を重ねており、先日は、築地市場における土壌汚染調査の結果も明らかになりました。「市場のあり方戦略本部」では、こうした多面的な分析や市場を取り巻く環境などを全て議論のテーブルに乗せ、市場業者、流通業界、生産地等の皆様の意見も伺いながら、まさにこれからの市場のあるべき姿について、集中的・戦略的に総点検をしている最中であります。その結果を踏まえまして、行政のトップとして、東京の未来に責任を持った総合的な判断を行ってまいります。

4 オリンピック・パラリンピックの成功に向けて

費用負担等のあり方について

続いて、オリンピック・パラリンピックについて申し上げます。
まず、情報公開についてでございます。ロンドン、リオの両大会で公開されていたIOCとの開催都市契約は、東京大会につきましても、IOC、JOC、組織委員会との協議が整いまして、先月公表をいたしました。
次に、大会の費用負担等のあり方でございます。都は、開催都市としての責任を真摯に受け止めて、その役割をしっかり果たしていくことを基本とし、関係者との協議や自治体との作業チームを主導してまいりました。昨日、関係自治体等連絡協議会の場で、都、組織委員会、国、競技会場が所在する自治体との間で、大会の役割分担、費用負担に関する基本的な方向について、合意に達したところでございます。
都は、会場関係では、都及び他県市が所有する施設において大会時のみ使用する仮設の整備費や賃借料等の経費を負担いたします。また、運営関係では、大会時の都民生活に与える影響を最小とするように、都内会場周辺の輸送やセキュリティに要する経費を負担することといたしました。
各関係者は、それぞれ役割と負担を受け持つ基本的な考え方に合意をして、組織委員会は1千億円の増収を見込み、国はパラリンピックやセキュリティ対策、ドーピング対策などの経費を負担いたします。加えて、1兆6千億から1兆8千億円とされた大会経費については精査を進めて、昨年12月の段階から1千億円以上を圧縮することができました。こうした状況は、経費について都民の理解を得るための大きな前進であると考えております。
今回、都は開催都市として主導的に調整を行い、関係者間の合意に至りました。引き続き、さらなる経費の縮減・効率化を図り、必要な財源を確保しながら、この合意に責任を持って対応してまいります。さらに今後は、この枠組みの下で大会準備の進行管理を進めるため、都、組織委員会、国、関係自治体が共同いたしまして、コスト管理及び予算の執行統制の強化を図る仕組みを具体化してまいります。
今回の合意によりまして、オールジャパンの体制の礎をしっかりと築くことができました。今後、大会の成功に向け、関係者一丸となって準備を加速してまいります。

都民・国民一丸となって大会成功へ突き進む

大会に向けました都民・国民の皆様との一体感も、確実に高まってきたと感じております。メダル製作のために小型電子機器を集める取組は、都庁舎での受付数が3か月で3万個を突破し、パラリンピックの魅力が詰まったイベント「NO LIMITS SPECIAL」にも、大型連休中の2日間で約5万2千人の皆様にご来場いただきました。パラスポーツのファンサイト「TEAM BEYOND」には53万人を超える方々にご参加いただいており、さらに大きなチームとしたいと考えております。パラリンピック競技応援校の取組、特別支援学校と小中学校によるボッチャ交流大会なども通じまして、オリンピックと共にパラリンピックを大いに盛り上げて、街の段差の解消、共助の社会づくりなど、成熟都市・東京の一層の進化にも繋げてまいります。
今月24日には、ラグビー日本代表のテストマッチが行われます。相手のアイルランド代表は、ラグビーワールドカップ2019の1次リーグでも対戦する屈指の強豪でありまして、世界トップレベルの力、技、スピードを目前にできるこの一戦は、2020年大会への期待も高めてくれるものと確信しております。
そして、来月の24日から9月6日までは、3年後にオリンピック・パラリンピックが開催される期間に当たります。この間、誰もが親しむラジオ体操を活用した気運醸成に重点的に取り組むなど、「オリンピック・パラリンピック期間」を日本中に強く印象づけたいと存じます。「東京文化プログラム」も、多くの都民が参加できる活動への支援を充実いたしまして、東京全体で盛り上げてまいります。さらに、1868年に江戸が東京へと改められまして150年の節目に当たる来年には、様々な事業を通じて都民と共に「東京150年」を祝う中で、東京への愛着と大会に向けた一体感を一層高めていくチャンスと考えております。世界の注目を集める大会のホストシティとして、都民・国民の皆様の期待を膨らませる取組を益々充実させて、オールジャパンで必ずや大会を成功させてまいります。

5 「新しい東京」への取組を着実に進める

東京大改革により目指す「3つのシティ」。その実現のための取組も着実に進めておりまして、引き続き、都民の皆様と共に加速してまいります。

安全・安心が希望と活力を生み出す

大震災に備える

30年以内に70%の確率で発生すると言われます首都直下地震。改めて、いつ発生してもおかしくないとの危機感を持ちながら、「倒れない・燃えない」まちづくりを推し進めてまいります。
無電柱化の推進については、都道府県では初となる条例案を本定例会に提案をいたしております。都市防災の機能強化、良好な都市景観の創出など、無電柱化の大義を明確にして、都道への電柱新設を禁止するとともに、区市町村との連携やコスト縮減に繋がる技術開発等を進めてまいります。都民の皆様の理解を深めるべく、啓発イベント、シンポジウムなども展開をいたしまして、これまでの遅々とした取組を、「都民の共感」「新たな技術」「関係機関との連携」の「心・技・体」を揃えて加速してまいります。
3月には、「防災都市づくり推進計画」整備プログラムを更新いたしました。引き続き延焼遮断帯の形成に努めるとともに、緊急車両の通行、円滑な避難・救援等を可能とする防災生活道路の整備、木造住宅密集地域の改善を集中的に行う不燃化特区の取組をさらに促進してまいります。平成32年度までに、延焼による市街地の焼失をゼロとする「燃えないまち」を実現すべく、住民の皆様の理解と協力を得るための工夫も凝らしながら取り組んでまいります。
災害発生時、被災者の方々の支えとなるのが、困難な状況にしっかりと目配りしたよりきめ細かな対策でございます。そこで、避難所における着替え、授乳への配慮など、女性視点の対策を充実させる防災ブックの作成に向け、先月、各分野で防災に取り組む女性による検討委員会を立ち上げました。併せて、女性視点の対策の旗振り役となる人材育成に向けた取組も進めております。ハード・ソフトの両面から、迫りくる脅威への備えを万全なものとしてまいります。
さて、4月には、大規模地震から1年となる熊本を訪問してまいりました。福島、宮城、岩手と同様、被災地の「今」をこの目で見るたびに、改めて、「復興を加速させる力を日本中から結集させねばならない」「だからこそ、復興五輪である」との想いを強くいたしております。今月、熊本においては、現地の食品業者と都内の百貨店等を結びつけて、熊本の食の魅力発信と販路拡大に繋げるための商談会を開催いたしますが、引き続き、被災地の皆様に安全・安心・元気に暮らしていただけるよう後押ししてまいります。

あらゆる脅威から都民を守る

先日、都民の生活を守る最前線である警視庁の現場を視察し、都知事として、都民の生命と財産を全力で守らなければならないとの決意を新たにいたしたところでございます。世界に目を転じれば、北朝鮮による度重なるミサイル発射、各地で相次ぐテロ行為、日本でも被害が見られた大規模なサイバー攻撃など、東京にとっても看過できない脅威が広がっております。2020年大会を見据え、東京を取り巻く脅威をしっかりと認識し、関係機関と緊密に連携しながら、都民の希望と活力の基盤である安全・安心を確保してまいります。
一昨日には、児童のいわゆる「自画撮り被害」の防止につきまして、青少年問題協議会から答申をいただきました。青少年を脅かすこうした深刻な課題にも、的確に対応してまいりたいと存じます。

誰もがいきいきと輝く環境で、持続的な成長を実現

4月に公表されました我が国の将来推計人口におきまして、50年後には生産年齢人口が約4割減るとされた中、明るい未来に向けた活力を高めていくために、誰もがその能力を存分に発揮できる社会を築いてまいります。

女性の活躍を引き出す待機児童対策

女性が育児か仕事かの二者択一を迫られている現状を打開すべく、待機児童対策には大胆に予算を配分をいたしました。保育士の処遇改善や、企業が従業員のために設置する企業主導型保育施設の開設費用の一部助成など、多面的な取組を進めております。
都が所有する土地・建物を活用した保育施設の整備につきましては、区市町村を介した保育事業者への貸付け、区市等へ移管した土地・建物の保育施設への柔軟な用途変更を可能とした結果、昨年9月以降、すでに9件の施設が整備されることとなり、うち1件は4月に開所したところであります。同じく4月には、国家戦略特区によります都市公園内への保育所設置の特例につきまして、全国初の認定を受けた都立汐入公園内の施設が開所しております。この特区の特例により確保する保育所の定員は、この先開所するものも含めますと約1200人に上りまして、都の取組を先駆けとし、今後、都市公園内への保育所設置は全国で解禁されることとなります。引き続き、都が全国の取組を牽引するとの気概の下、施設の整備促進に知恵を絞ってまいりたいと考えております。
保育人材を幅広く確保するため、求人情報や就労への支援策を発信して、求職者・離職者と保育施設とのマッチングに向けたサポートをウェブ上で行います「人材情報バンク(仮称)」の運用も、来年1月を目途に開始をいたします。預かり保育の大幅な拡充、小規模保育施設の卒園児受入れに積極的な私立幼稚園を「TOKYO子育て応援幼稚園」と位置づけまして、都の支援を充実することで、利用者の選択肢も広げてまいります。
このように保育サービスを拡大すれば、子供を預けて働きたいと考える女性も増えてきています。さらに今年度から、待機児童の定義が見直され、育児休業中でも復職の意向がある保護者の子供も含めることとなりました。こうした中でも、待機児童の解消に断固たる決意を持って取り組み、保育サービスを利用する児童を平成31年度末までに7万人増やすとの目標を是が非でも達成しなければなりません。その第一歩として、昨年度は、児童の受け皿となる保育施設の定員を約2万人分整備をいたしました。今後ともスピード感を持って、区市町村ともしっかり連携しながら、働く女性を応援するための果敢な取組を進めてまいります。

「時差ビズ」で東京の働き方を変える

高度経済成長期以来、東京の一つの代名詞とも言えますのが、「長時間労働」と「満員の通勤電車」であります。ライフ・ワーク・バランスを妨げ、個人がスキルアップするための時間も活力も奪うこうした状況を放置すれば、働き手が減少していく中で、経済の停滞を招きかねません。
時間や場所に囚われない働き方であるテレワークは、こうした懸念を打破する起爆剤となりましょう。来月、テレワークの体験・相談やコンサルタント派遣等の支援をワンストップで提供する「東京テレワーク推進センター」を、国と共に開設をいたします。隣には、4月に設置した「TOKYOライフ・ワーク・バランス推進窓口」が並んで、両者を相互に連携させながら、東京の働き方改革を力強く牽引をしてまいりたいと思います。
鉄道の混雑緩和に向けましては、来月11日から約2週間、「快適通勤ムーブメント」を展開をいたします。「時差ビズ」と銘打ちまして、テレワーク、フレックスタイムの活用、オフピーク通勤への特典付与など、混雑緩和のための一斉の取組を、企業や鉄道事業者等に呼びかけてまいります。ムーブメント期間中には、オリンピックの開会式の日に当たる7月24日を迎えますが、大会に訪れる世界中からのお客様に都内をスムーズに移動していただく「おもてなし」の観点からも、混雑緩和は重要であります。国もこの日を、テレワーク実施を呼びかける「テレワーク・デイ」と位置づけておりまして、2020年大会も契機といたしまして、時差ビズを、クールビズに続く東京の新たな「常識」として定着させたいと考えております。

未来を担う若者の活躍に向けて

グローバル化が益々進展する今日、特に若い世代が活躍の場を広げるためには、英語力は必須のパスポートであります。今年度から、都立高校の一部において、時事問題や身近な話題のディスカッションなど授業以外の時間にも英語を使う機会を拡大をいたしまして、実践的な英語力を高めるプロジェクトを開始をいたします。また、留学生との交流を英語力の向上や国際感覚の醸成等に繋げていくために、日本が強みといたします科学技術分野や伝統的な日本文化に触れる機会などを盛り込んだプログラムを用意して、海外の高校生の受入れを促進してまいります。
教育は、生涯にわたっていきいきと活躍するための礎となるものでございます。しかし、学校が抱える課題が複雑化・多様化して、多くの教員が授業の準備時間の不足等に悩む中にあっては、その礎も揺らぎかねません。教員の働き方を見直して、教育の質の維持向上を図るための「学校の働き方改革推進プラン(仮称)」を、今後策定してまいります。未来を担う児童・生徒一人ひとりがその可能性を存分に伸ばすことができるよう、教育現場の実情にもしっかりと目を配ってまいります。

安心して暮らせる地域社会の実現

誰もが活躍できる環境を整えるとともに、いつまでも安心して暮らせる地域社会を創り上げることこそ、「ダイバーシティ」実現の鍵であります。高齢者も障がい者も共に過ごし必要な支援を受けられる共生型サービスの推進、生活困窮者の支援体制の整備、福祉人材の確保など、分野を超えたきめ細かな対応を充実させる「地域福祉支援計画」の策定に向けまして、今月下旬には有識者等によります検討を始めてまいります。
また、より多くの子育て世帯を居住面から支援するため、都営住宅に入居できる収入基準を引き上げる特例の対象を「高校修了期までの子供のいる世帯」にまで拡大する条例案を、本定例会に提案をいたしております。将来への安心感が活力を生み出し、誰もがいきいきと毎日を送ることができる東京を実現をしてまいります。

都市間競争に打ち勝ち、世界をリードする国際都市へ

世界をリードする国際都市・東京の実現に向けて、激化する都市間競争に打ち勝つ成長戦略を展開してまいります。

魅力ある東京の姿を発信

昨年、東京を訪れた外国人旅行者は約1310万人と、過去最高を記録いたしました。世界の注目が益々高まる中、東京の魅力を海外へ分かりやすくアピールする新たなアイコン、そしてキャッチフレーズが、「Tokyo Tokyo Old meets New」であります。筆文字とゴシック体の二つの「Tokyo」を並べましたデザインは、国外からも、伝統と革新の共存を感じさせるとの意見を多くいただいております。海外の方々に人気の渋谷スクランブル交差点をイメージした落款が、東京で待つ新たな出会いへの期待を一層膨らませる。そんなデザインと共に、伝統的な食や文化から、最先端のファッション・アニメまで、見所満載の東京の魅力を余すところなく発信をしてまいります。
先月、伝統の技を受け継ぐ職人と、革新性に富むデザイナーとの協働による「東京手仕事」プロジェクトの商品発表会にも出席をいたしました。伝統と革新が融合した新たな商品の大いなる可能性を肌で感じてまいりました。東京には、江戸東京の伝統に根ざされ、そして優れた技術や産品など、私たちが気づいていない数多くの「宝物」が存在をいたしております。昨年12月に立ち上げました「江戸東京きらりプロジェクト」では、こうした宝物に「衣」「食」「住」といった視点から光を当てて、「東京ブランド」へと磨き上げる取組を進めておりまして、本日からは、そうした取組を牽引するモデルとなる事業の公募を開始をいたします。2020年には2500万人の外国人旅行者をお迎えする「PRIME 観光都市・東京」の実現に向けて、数々の宝物で世界を魅了してまいりたいと思います。

日本の成長を牽引する国際金融・経済都市に向けて

我が国のGDPに占める割合を、現状の5%からイギリス並みの10%台へと倍増させると、GDPを約30兆円押し上げるとされる金融分野。そして、IoT、AI、フィンテックなど、日本経済の中長期的な発展の鍵を握る先端分野。これらの活性化は、東京の成長戦略の中核であります。金融活性化に向けた抜本的対策を検討する「国際金融都市・東京のあり方懇談会」では、先月、議論の中間取りまとめが行われました。秋には、懇談会の最終提言を参考にして、アジアナンバーワンの国際金融都市の実現に向けた新たな構想を打ち出してまいります。また、海外の金融系企業や革新的技術を持つ企業の誘致を加速するため、金融関連手続きの支援等をワンストップで行うサービスを開始したほか、海外における窓口も開設をいたしました。現在国に提案している、外国人の新たな在留資格特例の創設も含めた「攻めの誘致」を展開し、東京における今後の成長分野の発展に繋げてまいります。
一方で、足元の経済に対する目配りも忘れてはなりません。東京の産業を支える中小企業に対しましては、経営改善やさらなる成長を目指す企業への経営診断・専門家派遣を増やすなど、支援を加速してまいります。加えて今年度からは、製品やサービスのブランディングによりまして、業界や産地の活性化を目指す中小企業団体のプロジェクトに対し、調査分析から事業化に至るまでの包括的な支援も開始してまいります。人材確保や、知的財産面からの海外展開のサポートなどを含めまして、幅広い取組によりまして、中小企業の経営力、稼ぐ力を高めていきたいと存じます。

成長戦略としての環境対策の推進

資源小国という現実に立ち向かうべく我が国が技術を磨いてきた省エネルギー化は、まさに成長戦略。今後も徹底して進めていかなければなりません。来月、家庭で使われている白熱電球2個以上をLED電球1個と交換する取組を開始をいたします。仮に白熱電球4個を全てLEDに取り換え、1日8時間使用したといたしますと、一世帯当たり年間で約1万3600円の電気料金削減が見込まれ、各家庭で省エネ効果を実感していただくことで、日本の技術の粋であるLED照明の普及を一気に進めてまいります。
世界が地球温暖化と闘う中で、CO2を排出しない水素エネルギーの実用化も、今後の成長戦略となり得ましょう。先般公表した「選手村地区エネルギー整備計画」におきましては、大会後の選手村地区に水素ステーションを整備し、燃料電池バス、そして住宅棟などで水素を活用して環境負荷の低減を図るほか、その優れた貯蔵性を活かしまして災害時の自立性を高めることなどを謳っております。近々、これらの取組を実施する事業者を公募いたしまして、この地区を将来の水素社会のモデルとしてまいりたいと考えております。

未来を見据えた都市づくり

未来を見据えた数々の成長戦略のその先に、どのような都市像を実現するのか。その基本的な方針となる「都市づくりのグランドデザイン」の素案を、先月公表いたしました。環境・社会・ガバナンス、すなわち「Environment」「Social」「Governance」の「ESG」に配慮した都市づくりを進め、「みどり」「まち」「人」を守っていく。「新たな価値感を生み続ける場として世界中から選択される都市」「あらゆる人が多様なライフスタイルを選択できる都市」を実現してまいります。そのような都市づくりの目標を掲げております。今後、広く都民の皆様の意見も聴きながら、夏には取りまとめ、持続的に発展する高度成熟都市を創り上げてまいります。

6 多摩・島しょ地域から東京を元気に

知事就任から300日。この間、精力的に多摩・島しょ地域に足を運んでまいりました。先月開催いたしました「多摩の明日を考えるワークショップ」では、多摩の将来を語る地域の皆様の議論を拝見して、さらなる飛躍に向けた現地の「熱気」を感じてまいりました。こうした実感を、夏にまとめる「多摩の振興プラン(仮称)」にも取り入れながら、地域と共に多摩の一層の振興に力を尽くしたいと存じます。
多摩・島しょ地域は、10の自然公園を有し、その総面積は東京全体の約36%を占めております。この雄大な自然を確実に守りながら、誰もがその素晴らしさを体感できる環境を整備していくため、自然公園の総合的なビジョンとしては全国初の「東京の自然公園ビジョン」を、先月策定をいたしました。民間事業者とも連携をして、内外の多くの方々にその価値や魅力を発信するなど、都民の財産であります自然公園のポテンシャルを最大限に発揮していくとともに、多摩・島しょ地域をはじめとする東京のさらなる魅力向上に繋げていきたいと存じます。
今月20日には、多摩地域で初となる「東京観光情報センター」を立川にオープンをいたします。船舶で島々を訪れる「婚活ツアー」も、夏には実施できるよう後押ししてまいります。豊かな自然や地域資源、特色ある産品など、それぞれの地域で光る「宝物」に新たな価値を付け加え、人々を惹きつける「ブランド」へと高めて、働く場所の創出にも繋げていく視点を持ちながら、多摩・島しょのさらなる活力を生み出して、東京を益々元気にしていきたいと考えております。

7 おわりに

これまで、希望溢れる東京を実現するための施策について申し述べてまいりました。産業構造しかり、技術開発しかり、比類なき速さで世界が変化していく中で、そのスピードに遅れることなく、将来を見据えた都政を力強く前へ進める所存でございます。最後に、この所信表明を、100年前に今の東京の骨格を創った後藤新平の言葉で終わりたいと存じます。
「人は日本の歴史に50ページ書いてもらうより、世界の歴史に1ページ書いてもらうことを心掛けねばならぬ」。
その意志をしっかりと受け継ぎ、世界をリードする「新しい東京」を築くため、全力で邁進してまいる所存でございます。

さて、本定例会は、都議会の皆様にとりましては、現任期最後の定例会となります。この4年間、東京の発展に力を尽くされたことに、心より感謝を申し上げます。昨年夏の都知事就任以来、東京大改革の旗を掲げ、都政がかつてないほど注目を集める中にありまして、都議会においても様々な改革への動きがあったことと認識をいたしております。さらなる改革、そして、真に都民ファーストの都政の実現に向け、同じ志を持つ皆さんと共に歩んでまいりたいと存じます。
現任期を最後にご勇退される方々、これまでのご労苦に対しまして、都民を代表いたしまして改めて深く敬意を表したく存じます。そしてまた、改選を迎えられる皆様方には、心よりご健闘をお祈りを申し上げます。

なお、本定例会には、これまで申し上げたものを含めまして、条例案23件、契約案15件など、合わせまして42件の議案を提案をいたしております。よろしくご審議の程お願いを申し上げます。

以上をもちまして、私の所信表明を終わりとさせていただきます。
ご清聴、誠にありがとうございました。

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